"The LEPLI" ARCHIVE 94/ 『続いて、円空展から眼差しは民芸館へ、 そして、ラグジュアリーの根幹を読む。』
文責/平川武治:
初稿/2013年2月25日:
補稿/2023年8月:
写真/© Alexander Liberman.jpg:
また、久し振りに駒場の民芸館を訪れました。
“塗り物”展が開催されていました。
久し振りに訪れたので僕のこゝろの有り様も
成長はせずに老いただけなのでしょう、
いろいろなものへの眼差しが
以前と違って見えるものが多くありました。
自分の時間で観る。
これは案外、基本的な事ですね。
”円空”を見せて頂き、もう一度民芸館を訪れた事で気付いた事でした。
他者のこゝろの有り様をどれだけ満足させられるかの
覚悟ある“GIFT"を持っているか?
では、その前に、自心のこゝろの有り様ですね、
ここが根幹。
アート、工芸、デザインに於ける関係性は
作り出す人の自心のこゝろの有り様次第。
どれだけの覚悟在る自我を出したものを作るか、
どれだけ覚悟よりもサービスが出来る迄のモノを考えるか?
ここに不純があればそれだけ世界が狭くなるだけですね。
『作る喜び、作れるよろこびそして、観て頂くよろこび。』
ここが根幹。
そこにどのような作り手の世界観が溢れているか?
その為にどのような生き方、時間の使い方によって
自分の世界観を構築して行くか?
そのためにはどの様な環境と人の交わりが必要か?
個人の自我を観て頂くのがアートの世界であるとすれば、
その個人の自我に自分しか出来ない覚悟を持って
どれだけ狂うかが、根幹でしょう。
人と同じ、自我や覚悟ではその作品が弱くなります。
覚悟ある狂気を持つ迄の世界観によって創られるモノだけが、
存在し続ける強さと存在感を生むのです。
そして、方法論としての見せ方の拘りも
決して、根幹ではありません。
着る事や見せる事などの機能がないアートの世界では
”この作者から買った”という自尊心だけが
作品が持ち得る機能でしょう。
持っている事に満足してもらえる迄の作者の狂気が
それに充足する唯一のこゝろの有り様。
それだけの世界です。
作る前から、作っている時から、
もう、既に”媚びる”こゝろを持ってしまえば
その作品と称されるモノの力はそこで終わってしまいます。
でも、世の中はうまく出来ていて、
その媚びた部分を見る者の殆どの人たちが
所謂、セールスポイントとして市場化させてしまうのです。
日本の美術界の多くのギャラリストも
ここでの立ち居場所でしかありません。
この様な立ち居場所でモノを作る事への継続と
その作品への認知度の継続化のために、
つぎなる、”スーベニール”なるものの構造が必要になる。
メディアとの関係性もより、重要になる。
既に、ファッションビジネスの構造の中に
この構造が出来上がってしまっています。
これがメゾン継続化の一番のパワーであり、根幹と知り始めた
メゾンビジネスが生まれて来ている。
そのビジネスの根幹が”ブランドエクイティ”である。
彼らは、自らを”ラグジュアリーブランド”と自負している。
しかし、ここには、その作り手の才能と
それを表現出来るパワー力と
その時間がどのような状況の
バランスを持っているかによるでしょう。
ハイ•モードのおける、”ブランドエクイティ”は、
ブランドメゾンが持っているポリテカルパワーも必要な世界です。
「企業力+政治力+イメージング+資金力」=”ブランドエクイティ”
でしょうか。
「豊穣なる創造」は、一番自分の創造性が創作へ向けられる
その量と時間量の調和ですね。
それが質を生むものですから。
作家過程の若い時の作品と
その後の作品には従って自ずから”差異”が生まれます。
しかし、その”差異”を一つのクオリティにしてしまうのも
作り手の“覚悟と狂気”です。
“覚悟と狂気“亡き作品は
ただのアートごっこの結果生まれた媚びたもの。
作者の死後、どれだけその作品が独り歩き出来るかで解るでしょう。
冒頭の、僕が老いて初めて知った、
「自分の時間で観る。」と対峙関係でしょう。
例えば、モードの最前線の話ですが、
"メゾン ドゥ A.アライア"の今後にも
このバランスが考えられての結果のビジネス戦略でしょう、最後は。
それが、このモードの世界では、
”巴里ショップ+香水+免税店”世界の構築化です。
持ち得た自分の”差異”を”力”へ変換するために、
それを作品化する構造のパワーと企業力と政治力、
それをビジネスにする人たちの視点が選択した結論でしょう。
これは、巴里のラグジュアリィービジネスの定石です。
ただ、この定石が今後へ繋げられるための
”時間の読み”が最も大切なプロセスになります。
早すぎても、遅すぎても駄目という世界です。
人間が生み出す作品とは”鮮生食品”と同じです。
最近は”レトルト食品”全盛ですね。
”大衆消費社会”が生み出した”消費文化”の領域において、
文責/平川武治。
初稿/2013年2月25日。
補稿/2023年8月。