「グラウンドルール」作りがおもしろい
それほど利用しているわけではないけど、スターバックスの接客はいいなと思ったことがある。カウンターでコーヒーを選ぶとき、個人対個人の会話をしてくれているように感じたのだ。別のお客さんに「旅行ですか?」と話しかけている店員さんもいた。1対1で対等に接することがポイントなのだろう。
スターバックスにはどうしてそういう店員がいるのか興味を持ったので『スターバックスの教え』という本を読んでみた。
この本の著者はスターバックスに勤め、ストアマネージャーや人事を担当していた人で、内部でどのような研修が行われ、どのような考え方がなされているかが書かれている。
スターバックスの基本ミッションは「感動体験を提供すること」だそうだ。商品だけじゃなくて接客や居心地を含めての「体験」なのだろう。
そして、ミッションは全体で共有されているが、あとは個人の自主性に任されている。そこがポイントだ。そのため、うまくいって良い雰囲気の店もあれば、雰囲気が悪くなってしまう店もある。スターバックスはどこも同じだと思っていたけど、意外に当たり外れがある。
このように自主性に任せる方法だと、うまくいくときはうまくいくけど、そうでないときはそうでないという、振れ幅の大きな結果になりがちだ。
そこで、いい方向に持っていくためにリーダーシップやコミュニケーションの工夫が必要になってくる。例えば著者の経験では、従業員と粘り強く対話しフィードバックを行うことで、悪かった雰囲気を前向きなものに変えることができた。
すべてをマニュアル化して均質化すると平均的な力は安定する一方で、組織全体のコミュニケーションの力は育たない。そういう意味で、自主性に任せるスターバックスは、コミュニケーションやリーダーシップについて深く考えざるを得ないシステムになっている。だからその分野が他から注目を浴びるほどに育ったのだろう。
この本でも、従業員同士のコミュニケーションの取り方、店長としての運営の方法、いかにマネージメントして個人の力を引き出し、よい雰囲気の場所を生み出していくかが説明されている。
とくにおもしろいなと思ったのが、研修をするとき、参加者たちがまず最初に自分たちで研修のルールを決めるところから始めることだ。参加者が自主的に発言する研修にするため、どのようなルールにすればいいかという「グラウンドルール」を先にみんなで決めるのだという。仕組みから考えていくのはおもしろいし、たしかに自分で決めたことなら主体的になれると思う。
スターバックス自体もこういった仕組みがうまくデザインされている会社なのだろう。スターバックスのバイトというか、研修を経験してみたいと思う本だった。
『スターバックスの教え』
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