自分たちとは違う次元にいると思われること
『憲法九条の軍事戦略』という本を読んだ。
タイトルの意味するところは、九条を維持したうえで、どうやって日本の軍事戦略を考えていくか、ということだ。憲法九条は原則として戦争をしないという内容だけれど、そのこと自体が軍事的な戦略として使えるんじゃないか、と、この本の著者は主張している。
なるほど、わかりやすいなと思ったのは、「平和国家としての日本のイメージを戦略的に使おう」という考え方。国連の平和維持軍でアフガニスタンなどの武装解除部長をつとめた伊勢崎氏の話が紹介されていて、それによると、難しい武装解除がうまくいったのは、平和国家としての日本のイメージによるところが大きかったそうだ。
九条がどうとかは現地の人は知らないけど、日本が平和国家として信頼されていたから、敵対する勢力は武器を捨てることができた。これは日本にしかできない役割だと伊勢崎氏は言う。
確かにこういう日本のイメージを守ることは、日本人にとっても自尊心を満たされるというか、誇りに思うような気持ちになるし、世界のほかの国にとってもいいことだろうと思う。
平和憲法というと、「きれいごと」という印象がなんとなくあるけど、対外的な戦略として重要なのだという考え方に納得させられた。そして自分の身を守るということを考えたときにも、この戦略は重要なんじゃないかと思う。
例えば、海外で日本人はカンフーや空手ができるから強いと思い込まれていることがある。武器を使わなくても強いということは尊敬されるのだ。自分たちとは違う次元にいると思われることで、まともに戦う相手だと見なされないのだろう。
そう考えると、平和国家というのも、「日本ってなんか知らないけど別の次元にいる」と思われることで機能する戦略なのかもしれない。この本を読んだ後、そんなことを考えたのだった。
『憲法九条の軍事戦略』
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