テプラの裏には愛すべき世界が広がっている

 大学のときの授業で、唯一興味を持ったのがユーザインタフェースの科目だった。おもしろいと思ってレポートを自分なりに書いたら落第して、何かの間違いじゃないのかと講師に訴えたところ、普通にできが悪いからだと言われ、へこんでそれきりになってしまったが、その興味を育てていたらどうなっただろうかと思うことがある。そんな気持ちが刺激されて『失敗から学ぶユーザインタフェース』という本を手に取ってみた。

 世の中のバッドインタフェース、つまり、使いづらいドアや、シャワーのハンドル、わかりにくい標識などを集めて、何でこうなったのかとツッコミを入れるような内容だ。そこから、わかりやすいユーザインタフェースを設計するために必要な要素を逆算する構成になっている。

 おもしろかったのはテプラの話。

 例えば、エレベーターの操作盤など、間違えやすいインタフェースがあったときに、テプラを貼って補足することがある。インターネットで検索してみると、最近ではセブンイレブンのコーヒーマシンのデザインがわかりづらく、テプラを貼られまくっていると話題になっていた。

 「テプラを貼られたらデザインは負け」だとして、デザインの失敗の象徴だと捉える向きもあるようだけれど、この本によると、「テプラはインタフェースの絆創膏」と呼んで評価する人もいて、おもしろいテプラを集めたサイトもあるらしい。

 それらを見ていると、たしかに味わい深く思えてくる。そこには相手を思いやる気持ちがあって、ときに空回りしていたりもするのだけど、そんな人間味が憎めない。テプラの裏に人間の愛すべき世界が広がっているように感じる。

 今度どこかでテプラを見かけたら注目してみたい。


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