人間関係に風穴をあける役割
つまりは人間関係なのではないかと思うことがよくある。
仕事でも人間関係がよくないと、コミュニケーションを億劫に感じてしまって、いいアイデアを思いついても、それを言わずにおく方を選んでしまったりする。ちょっとしたトラブルがあって一言謝ればよかったところを、それを怠ったために硬直した関係が続いてしまうこともある。
でも、というか、だからこそ、あるきっかけで人間関係に風穴が開くと、清々しい気分になる。大げさかもしれないけど、新しい世界が開けたように感じられることもある。
こうした固まった人間関係に風穴を開けること、それが『コミュニティデザインの時代 』の著者の山崎さんが実践している「コミュニティデザイン」という仕事の役割のひとつじゃないだろうか。
山崎さんは、例えば地方の町から仕事を依頼されたとき、まず自ら町を歩いていろいろなタイプの人を集め、ワークショップを開くそうだ。すると、今までとくに仲の良くなかった人同士も言葉をかわすようになる。そうやって、外からやってきた山崎さんが風穴を開けることで、今までになかったコミュニケーションが生まれる。
もちろん、ただ人間関係を改善するだけではない。個人が持っている意見や、話し合いから生まれてくる意見をまとめて、進むべき方向に導いていく。そして、目に見えるものとして形にする。その結果が町づくりの政策に生かされたり、建築物のコンセプトになったりする。コミュニティデザインとはそういう仕事なのだ、と上記の本を読んで理解した。
ところで、自分の感覚でいうと、コミュニティとかコミュニケーションってちょっと気恥ずかしい感じがする。それはどうしてだろう? 外来語だから? でも「スマートフォン」とかは別に恥ずかしくない。たぶんハードではなく、ソフトの話だというところに、気恥ずかしさの原因があるのだろう。
この「ソフトは気恥ずかしい」というイメージを、山崎さんもかつては持っていたようだ。
山崎さんが大学卒業後に入った建築事務所は、建築に先立って住民の意見を聞くワークショップを開くなど、「ソフト」にも取り組んでいる事務所だったが、山崎さんは当初は「ハード」こそが建築だと思っており、ソフトの部分は重視していなかったという。しかし、仕事を重ねていくうちに、建築物が作られた後にそれを活かすのはソフトの力だと知るようになり、やがてソフトの領域の仕事を専門的に手がけるようになる。それがコミュニティデザインという仕事の始まりだった。
ソフトの話は抽象的で何をやっているのかよくわからない、というのが、気恥ずかしさの元にあるイメージだろう。この本には、そんな「ソフトの仕事」のイメージを変える具体的な実践例が書かれている。コミュニティとかコミュニケーションという言葉を眉唾だと思ったことのある人は、読んで損はない本だ。
自分もワークショップの手法に興味を引かれて、「ワールドカフェ」とか、思わず読んだ後に検索して調べてしまったのだった。
コミュニティデザインの時代
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