ザナドゥ〜ELOの音楽と伝説のスターが救ったオリビア・ニュートン=ジョン主演作
『ザナドゥ』(Xanadu/1980)
1970年代半ばから80年代前半にかけて、オリビア・ニュートン=ジョンの人気は凄まじかった。
ヒットチャートを見てもそれは一目瞭然。4曲のNo.1ヒットと11曲のトップ10ヒットを放っている。可憐なルックスと透明感のある声もあって、日本でも当時ファンだった人は多い。
映画『ザナドゥ』(Xanadu/1980年)は、そんなオリビアが人気絶頂の頃に主演したミュージカル・ファンタジー。
ギリシャ神話のミューズ(音楽と踊りの女神)として、様々なコスプレと脚線美でセクシーなダンスやタップを踊ったり、ローラースケートを履いて、たまらない笑顔で微笑んでくれたりする。
早い話、映画としての作品性やクオリティは低い(失礼)。でも、オリビアのファンならそんなことはどうでも良かった。彼女が放つ美しさはそれくらいの威力があった。
ではこの映画を今観るなら、その程度の気持ちで見るべきか?
いや、それは違う。少し視点を変えると感慨深いものがある。ミュージカル映画の全盛期を支えた伝説のスター、ジーン・ケリーがタップを踏んだ最後の作品でもあるからだ。
ジーンは初老の実業家役で登場するが、実はスイング・ジャズやビッグバンドが奏でる遠い昔の想い出の中に生きながら、いまだに音楽への情熱を断ち切れないでいるという切ない設定。
撮影前の契約時、68歳のジーンは「絶対に踊らない」と言っていたそう。しかし、出演者たちのリハーサルが始まると、足が自然に動き出したという。
タップダンスは自転車に乗るのと同じで、一度見につけたら決して忘れない技術なので、100歳になっても踊ることができるそうだ。
映画では、オリビアとのダンスシーンで華麗なステップを披露。思わず見入ってしまう。これぞエンターテインメントの真髄。その辺のスターとは重みが違う。ジーンの存在なくしてこの映画は成立しない。
そして、ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の音楽。
ジェフ・リンの楽曲は、何度でも聴きたくなる魔法のようなものがある。ELOもオリビア同様、1970年代半ばから80年代前半にかけて数多くのヒット曲を放ち続けた。
映画はヒットしなかったが、サントラ盤は売れた。中でも、アニメーションのシーンで流れるバラード「Don't Walk Away」は名曲。
主題歌である「Xanadu」は、ELOサウンドとオリビアの声がピッタリとはまり、両者の代表曲の一つになった。ちなみにLP時代はB面がELOナンバー、A面はオリビアのブレーンとも言えるジョン・ファーラーの曲が並んでいた。
ストーリーは、ハリウッドのレコード会社の雇われ画家ソニー(マイケル・ベック)が、志半ばで破いた絵が空に撒かれるところから始まる。
その切れっ端が壁画に描かれた9人の女神のもとに舞い降りると、その中の一人キーラ(オリビア・ニュートン=ジョン)が現実に現れる。ソニーは彼女に心奪われていく。
海岸でクラリネットを吹きながら、孤独を味わうダニー(ジーン・ケリー)は、グレン・ミラー楽団にいた頃の音楽の夢が忘れられず、みんながハッピーになれる音楽の殿堂を作ることを夢見ている。
ダニーはソニーと出逢ったことから、「ザナドゥ」という名のナイトクラブのオープンへ向けて動きだす(チューブスも登場)。そこにはもちろんキーラもいるが、彼女は元の世界に戻らなければならなかった……。
映画『ザナドゥ』は、2007年にはブロードウェイ・ミュージカルに進出。オリビア・ニュートン=ジョンは何度も来日しながら音楽活動を続けていたが、2022年8月8日に73歳で亡くなった。
文/中野充浩
参考/『ザナドゥ』パンフレット
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