パルプ・フィクション〜世界のポップカルチャーの記号になったタランティーノ
『パルプ・フィクション』(Pulp Fiction/1994年)
デビュー作『レザボア・ドッグス』(1992)や脚本作品『トゥルー・ロマンス』(1993)で、「新しい才能の登場」として騒がれていたクエンティン・タランティーノ。
世界的に脚光を浴びることになったのが、カンヌ映画祭を制した『パルプ・フィクション』(Pulp Fiction/1994年)だった。
映画・音楽・コミックなど膨大なポップカルチャーを吸収分析する“オタク/コレクター気質”と、それを消化して自己表現へと変えていく“作家性”を併せ持つタランティーノ。
そんな彼が次に目をつけたのが、安価で質の低い紙に印刷された三文小説が並ぶ雑誌の総称「パルプ・フィクション」。密かに大作家への登竜門としても機能した、B級メディアへのオマージュだ。
ジョン・トラボルタ、ブルース・ウィリス、ユマ・サーマン、サミュエル・L・ジャクソン、ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、エリック・ストルツ、ロザンナ・アークエット、クリストファー・ウォーケンなど、映画好きならたまらない“癖”のある俳優たちがキャスティング。
こうした面々が一つの作品でいったいどう絡み合うのか。観る前から思わずワクワクしてしまうのも、タランティーノの“計算済み”だろう。
好き嫌いがはっきりと分かれることでも知られるタランティーノ作品だが、小道具や台詞への“拘り”を心地よくとらえられるかどうかが、その境界線のようにも思える。
本作にもハンバーガーやコーヒーの件をはじめ、オールディーズが鳴り響く1950年代風レストラン、発砲前の朗読儀式、ドラッグ過剰摂取の対処マニュアル、日本刀での復讐劇、トイレでのパルプマガジン読書、レトロなツイストダンス、形見の時計のエピソード、サーフ・ミュージックといったあたりが強い印象を残す。
それらを楽しめ人には、『パルプ・フィクション』は飽きないオモチャのような魅力を放つ。
物語は、ギャングのボスの若くて美しい妻(ユマ・サーマン)の食事相手をしなければならなくなった、手下のビンセント(ジョン・トラボルタ)と相棒のジュールス(サミュエル・L.ジャクソン)、同様にギャングのボスから、八百長試合を強いられたボクサーのブッチ(ブルース・ウィリス)を軸に進んでいく。
そして、癖のある面々があらゆる場面で関わってくる。コメントにもあるように観る者はゆっくりとゆっくりと引き込まれていく。
この役をきっかけに、低迷期を抜け出して第一線に復帰したジョン・トラボルタは言う。
なお、サウンドトラックも“癖”が満載だが、中でもリンク・レイの1958年のヒット「Rumble」が印象的。ギターによるインストナンバーにも関わらず、その過激な音とタイトルのせいか、犯罪を誘発するという理由で、放送禁止になったR&R時代屈指の名曲だ。
文/中野充浩
参考/『パルプ・フィクション』パンフレット
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