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恋人たちの予感〜大晦日のカウントダウンで結ばれる男と女の物語
『恋人たちの予感』(WHEN HARRY MET SALLY/1989年)
男と女に友情は成立するか? セックスは友情の妨げになるのか?──これは昔から恋愛コラムなどで定期的に取り上げられてきたお題だが、答えはYESでありNOだ。
どちらかが恋愛感情を抑えているだけの場合もあるし、お互いに恋愛発展などどう転んでも考えられないケースだってある。
『恋人たちの予感』(WHEN HARRY MET SALLY/1989年)は、そんな男女間における永遠の未解決テーマを描いた、大晦日にぴったりの映画。
監督はロブ・ライナー。彼自身が10年間の結婚生活が破綻して再び独身生活を送っていた頃、このテーマを取り入れた映画を撮ろうと思いついたという。
女性脚本家のノーラ・エフロンに相談して話し合っているうちに、お互いの会話や考え方の違いが面白くなって、それがそのまま脚本作りに活かされていった。
この作品がロマンチック・コメディの傑作となることは明らかだった。1970年代にウディ・アレンが築き上げたマンハッタンの恋愛美学が全編に渡って漂いつつ、ロケーションやファッションや音楽がたまらなく洗練されていて、観る者を温かく優しい気持ちにしてくれる。
そして、主演したメグ・ライアンのチャーミングな魅力も大きく、彼女はこの作品でスターになった。
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物語は、シカゴ大学を卒業したサリー(メグ・ライアン)が、親友の彼氏ハリー(ビリー・クリスタル)をニューヨークまで車で送って行くところから始まる。
二人は例のテーマについて話し合うが、ハリーはセックスが邪魔をする、一方のサリーはそんなことないと、あまりウマが合わずに、おまけにサリーはハリーが自分を口説いていると、妄想したまま別れる。
5年後。空港。サリーが彼氏と熱い抱擁を交わしているところに、偶然ハリーが通り掛る。サリーは記者、ハリーはコンサルタントになっていた。飛行機で隣同士の席になるものの、やはり話は合わない。
さらに5年後。彼と別れたばかりのサリーは31歳になっている。ハリーは離婚が決まって落ち込んでいる。本屋でまたも再会する二人。今度はお互いの近況を話し合ううちに友達になった。
以来、マンハッタンのシングルライフの中で、友情関係を深める二人。レストランで食事したり、公園を歩いたり、休日を美術館で過ごしたり、クリスマスにはツリーの木を一緒に運んだり。大晦日のパーティでチークダンスをしていると思わず意識せずにはいられないが、笑ってごまかす二人だった。
その後、お互いの友達を紹介し合ったりするものの、結局はその友達同士が結ばれる始末。ハリーは別れた妻と再会して激しく動揺もする。
ある夜、泣きながらハリーに電話をするサリー。元カレから結婚報告されたことが原因らしい。そして慰めているうちに、二人はベッドを共にする。
だが翌日、二人は何かの間違いだったと自分に言い聞かせた。しかし、ハリーはサリーのことが気になって仕方がなかった。
クライマックスは大晦日。独りで夜の街をさまようハリー。そんな頃、サリーは独りでパーティに出向いている。見知らぬ男と話すもまったく面白くない。もう帰ろう。するとハリーが駆けつけてきた。
「やっと分かったんだ。君を愛してる。1日の最後におしゃべりをしたいのは君だ。残る一生を誰かと一緒に過ごしたいと思ったら早い方がいいだろ?」
「もう、あなたって人はいつも憎めないことを言うんだから。あなたなんか大嫌い」
ハリーとサリーは、カウントダウン後の新年に結ばれる。出逢ってから12年。二人は3ヶ月後に結婚した。
ハリーがパーティ会場へ走り出す時に流れているのが、“君こそ僕が求める女。彼女の言葉で僕は笑う。彼女の言葉で僕は泣く”と歌われるスタンダードナンバー「It Had to be You」。
フランク・シナトラの歌声がたまらない。映画ではルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドなどのヴォーカルも聴ける。そしてハリー・コニック・ジュニアがサウンドトラックを担当し、こちらもスターになった。
観終わった後に分かることがある。自分の思うままに生きていた男と女が、お互いの楽観的・悲観的、長所・短所を見つめながら“時”を共有する。
『恋人たちの予感』の一番のテーマは、実は男と女が歩み寄っていくための成長を描くことにあったのだろう。
(映画に出てくるマンハッタンの名所)
○メトロポリタン美術館
○ザ・ボートハウス
○シェイクスピア・ブックストア
○ワシントン・スクエア
○カッツ・デリカテッセン
文/中野充浩
*参考/『恋人たちの予感』DVD特典映像
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