映画館の思い出たち④
今日も映画館の思い出話の続きを。
せっかくなので、私が映写で働いていたときの当時の現場の様子をもうちょっと語って行ければと思う。
なんせ私が働いていたのはかれこれ20年も前になる。
デジタル化なんて全くされていないし、映写機に人はずっと張り付いて映像チェックしないと行けなかったので、結構1日中映写室でも忙しくしていた。
劇場のオープン準備では、大体オープンの1時間前くらいから入って映写機を立ち上げていく。色んな機械や照明の電源を入れて、ブーンと立ち上がって行く様子は何回やっても結構楽しかった。
映写機は全部で7台あったので順番に立ち上げていく。
全部の映写機が立ち上がったら、きちんと朝イチの上映のフィルムがセットされてるか1台ずつ映写機をチェック。
私の劇場では、前日夜のスタッフがフィルムをセットするところまで行ってくれるため、朝スタッフは最終チェックをするだけで大丈夫だった。
全部チェックが終わったら、いよいよ劇場オープン。上映時間に合わせてスタートボタンを押していけばフィルムが回りだす。
あとは順番にすべての映写機のスタートボタンを押して行き、20分ごとに映写窓からスクリーンを覗いてきちんと上映できているかチェックする。
基本はこの繰り返しである。
7台の映写機を20分ごとにチェックするので、7台目のチェックが終わるとまたすぐ1台目に行く。という形だった。
映画館のスケジュールは1週間ごとに組まれるため、基本1週間は同じローテーションになる。
だから映像チェックする場所もおのずと同じシーンになるため、ちょっと飽きてくる。
だからわざと早めに映像チェックに回って前後のシーンを確認したり、ちょっと長めにチェックしたりと、なんやかんや飽きがこないように工夫しながら観てた。
映写室は2人体制でいる時もあったので、そんな時は映像チェックを交代しつつ、片方はフィルムの編集作業をしたりする。
映画のフィルムは元々ひと繋がりの状態では送られてこない。大体20分1巻くらいに分かれて6~7巻くらいに分かれて納品される。
これを1つの映画として繋げる作業を映写室では行うのだ。
割とデカいフィルム編集機にフィルムをセットして、1巻と2巻のちょうど間となるフィルムの両端を、専用の機械でバチン!とくっ付ける作業をする。これを最後の巻まで繰り返す。
(ちなみに返却する時は再度フィルムを切断してバラバラの状態に戻す。)
繋いだフィルムを1つの大きな輪っかにしたら完成。映写機のターンテーブルの上に平置きで乗せて上映を待つという形になる。
この繋いだフィルムは直径1.5mほどあるから、一人では抱えられない。必ず2人1組で持ち運ぶルールがあり、フィルムを傷つけないように慎重にセットしていく。
もう時効だと思うけど、これをいけるだろうと思って1人で持ったパートさんが見事に床に落としてしまい、フィルムがぐちゃぐちゃになった事があった。80分くらいの短尺の映画だから持てると思ったのだろう。
これには頭を抱えてしまい、修復するには上映時間とほぼ同じ尺数で巻き取り直しをする必要があるため、その回の上映は中止にせざるを得なかった。
私はこれを2回くらい経験したが、なかなか胆の冷える体験であった。
他にもここではちょっと書けないようなびっくりトラブルもあったけど、今はデジタル化が進化しているので、こんなトラブル起こりえないんだろうなぁと最新技術を見て感動している。
長く上映しても映像にホコリとか飛んでないし、綺麗な映像のまま上映できて凄いななんて思いながら観てる。
映写機にフィルムをセットする瞬間が好きで、最初の内は忘れないように帰ってからも、寝る前に何度も何度もイメトレして練習してた。
あそこを通して、次はこっちを通して、、、とかブツブツ言いながらやってたな。
ピシッと綺麗にセットできた時はとても嬉しくて、「うん!うまくできてるね!」なんて先輩に言われると心の中でめっちゃ飛び跳ねてた。
今は無人化も進んでいて、事前にシステム設定しておけば上映できちゃう時代なんだろうけど、また映写機にフィルムをセットしたいな。なんてたまに思ってしまいます。