アピアランスケアで作業療法士ができること
ここ数年、一般社団法人日本臨床化粧療法士協会の理事として、アピアランスケアに関わっているので、そこから得られた知見や気をつけていることなど。
コロナの影響もあって、病院や施設への外部協力者の出入りが制限される状況が長く続いています。
そんな状況下で、外部協力者が今まで担ってきた美容整容に関する部分を自分たちでどうにかしたい、そういう想いで協会の資格研修を受講する同業者が増えた印象があります。
だからこそ、すべてを伝えることはできなくても、少しでもヒントになればいいかなと思って珍しく真面目なnote
アピアランスケアってなに?
そもそもここを伝えるのが難しいんだよね。
アピアランス(見た目の)ケア。
ひとことで言えばそれだけなんだけど、単なる美容整容のケアだよ、とひとくくりにできるものではないと思う。
皮膚生理学の知識に始まって、スキンケアのこと、体毛のこと(脱毛ってひとくちに言っても髪の毛以外の悩みもあるんだよ)、ウィッグのこと、メイクのこと…
パッと思いつくだけでもこんなにある。
理事として関わるようになって約2年。
臨床化粧療法という思想に触れて、その実践の場のアピラボ(アピアランスラボ/化粧外来)を側で見続けて、対話を重ねて、ようやくこういうことなのかな、がわかるようになってきた。
アピラボとは、美容整容にまつわるカウンセリングにおいて
①商品販売を第一目的とせず、
②美容整容ケアに必要な商品情報ではなく
③セルフケア(やりかた)を教える
JCTA(一般社団法人 日本臨床化粧療法士協会)では、臨床化粧に関する思想を伝えることで啓蒙啓発に取り組んでいる。
だから、売らない。
そして、こちらがメイクする、のではなく、セルフケアを伝える。
それがアピラボだよ、ってようやくスッキリした言葉にできるようになってきた。
対象の背景に寄り添う
ゆりかごから墓場まで、顔は他人のためのもの。
思うようにならないからこそ、印象管理は誰しも気になる。
気にしてないフリして気にしているもの、だと思う。
だから、アピアランスケアで伝えたいことは、それぞれの「イマココ」に左右される。
病院で、デイサービスで、老人ホームで。
医療依存度が高くなるほど、見た目を気にしていられなくなる。
だけど、無関心ではいられないからこそ、どこに焦点を当てて、どう気持ちに寄り添うか、からがスタート。
でもスタート地点を見誤ると、ゴールがぶれちゃうから、背景からスタート地点を探ることがとても大切。
アセスメントもヒアリングも、「あなた」を押し付けるために使うのではないよね。
相手にとっての「こうだったらいいのに」を探すところから。
だから、「わたしが」したいことと、「相手が」望むことの目線合わせはとってもたいせつ。
あなたのこれまでを振り返って、今困っていること、叶えたいことは何なのか見つめなおして、これからのことを考えてみる。
「あなたは、どうしたいの?どう在りたいの?」の問いかけからスタートする作業療法と、アピアランスケアにおけるアプローチは、そういう意味でとても親和性が高い。
印象管理と社会参加
身だしなみは、食事やスポーツと違って、社会交流に直接影響を与えるものだと思う。
食事はひとりでもできる。スポーツも。
だけど、どんな交流も、身だしなみを抜きにはいられない。
「ユニクロに服を買いに行く服がない」
時折ネットで見かけるこの言葉ってつまり、身だしなみが不十分だと、私たちは自然と社会参加を忌避するようになるって解釈もできると思う。
だから、相手に寄り添ってアプローチを考える時に、その目的の先にあるコミュニティのことも考える必要が出てくる。
アピアランスケアの段階を踏んでいくと、参加コミュニティでの印象管理につながってくる。
あなたは普段、どんなコミュニティに身を置いていますか?
これって、難しくて、でも大切な問いだと思う。
だって一緒にいると、似てくるもんね。
それは、見た目の印象も含めて、そうだと思う。
だから、私たち作業療法士が集団作業療法におけるアプローチとして習ってきたことが、ここですごく活きてくる。
美容整容は、「動作」じゃなくて、「社会参加活動」
そう捉えると、見え方が変わってくるんじゃないかな。
あとは、いつものように作業療法的にアプローチしてみる
とりあえずマズローで当てはめてみたけど、別にマズローじゃなくっていい。
好きな尺度を好きな指標で落とし込んでいけばいいと思う。
だけど、美容・整容を単なる機能面だけで見ていると、それが本来的に人間にとってどういう意味をもつ作業なのか、は見えてこない。
意味ある作業
作業療法士が繰り返し叩き込まれる、理解するのに、体感するのに、実感を伴った言葉にするまでにめちゃめちゃ時間のかかる概念(笑)
これの解説しだすとキリないから割愛。
ともあれ、
1)美容整容はそもそも社会参加に直接影響を与えるんだよ
2)美容整容は印象管理という側面で見ることができるよ
3)印象管理のために、アピアランスケアっていう概念を知ることは必要だよ
ってところかな。
病院医療で、在宅医療で、あるいは福祉領域で。
向かい合っている誰か、の雰囲気に、印象に、身だしなみに、なんとなく葛藤を抱え始めて、そしてそれを良しとしてしまっている環境にもどかしさを感じ始めた同業者たちの、ひとつの道しるべにになるといいなと思う。
真面目に勉強したくなったら受講して。