this week in 読書
満州国演義
冒険小説の雄・船戸与一の遺作。満州国というよくわからない地域について4兄弟を軸に史実に基づいたフィクションストーリーが繰り広げられる。三国志演義ぐらい面白い。満州の横山光輝と言ったところ。
関東軍に振り回される外務省領事館勤務の太郎・現代で言う半グレ的な大陸浪人の次郎・関東軍にて愛国心たっぷりになっていく三郎・陰謀に巻き込まれていくような無政府主義に傾倒してたはずの末っ子四郎が交互に少しづつ混じり合いながら激動の満州を駆け抜けていく。とにかくタバコ吸いまくりでハードボイルドという安い形容も似合う煙がモクモクな面白大河小説である。
まだ3巻までしか読めてないけど当時の空気感みたいのがフィクションキャラ故に無茶苦茶堪能できる。史実に沿った大きな濁流の中で歴史に絶妙に絡んでいく彼らの戯曲性がマジで面白い。特務機関のあいつが狂言回しというかトリックスター的に所々絡んでくるのでお話として連ドラを観てるような気分になれる上質なエンタメです。
孫正義秘録
みんな大好きソフトバンク孫正義伝。
大体これを読んでおけば孫さんの現在に至るまでの実績が理解できる。根っからの商売人というか半分ギャンブラーな超人さが堪らない。
SBI北尾氏の孫氏と双璧を成すようなスーパーマンっぷりも理解でき、ソフトバンクからは独立していった昨今のSBIグループの金融コングロマリットっぷりも掘り下げていきたい。凄いやつの元に凄い奴らが集結していく強者のストーリーはやっぱワクワクであり、現在進行形なのもアツい。
田中角栄 権力の源泉
色々迷う田中角栄リバイバル本の中でkindle unlimitedで読める角栄初学者には丁度いい伝記。今で言う文春砲で総理大臣を追われた後も闇将軍として自民党に所属しないまま政界で猛威を震っているのはすご過ぎる。ロッキード事件というのは色々あった後のアフターストーリーであり、ロッキードあっても最後はもう一度返り咲こうとしてた野心が面白い。結局最後は派閥の弟子達によるある意味裏切りにより追われて行く姿もこれもまた一興。
国際興業・小佐野氏の財界での暗躍っぷりとやはり間接的に絡んでくる児玉誉士夫氏の表裏一体な関係性など必修的に理解しとくと楽しいですね。政治に金が掛かるという事実は理解しとくと時代性の破茶滅茶具合も合間って、今のセコセコ雁字搦めになってる政治家は色々おもろくない職業だなあと思ってしまう。利権ズブズブ構造を作り上げていく様はやっぱ異国の御伽噺のようで魅力的。
ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス
上記で角栄ベースストーリーを理解したらやっぱり気になるロッキード事件の真相に一番近づいているであろう決定版。数多ある陰謀論や通説などを莫大な参考文献に基づき全て検証していく調査報道の鑑のようなノンフィクション。
特に米国側の資料検証が凄まじく、ロッキード事件が事件として動いていく様々な力学の作用を紐解いていくスーパー面白本。やはり児玉誉士夫氏の存在というのがここでもフォーカスされており、この人はどこまでスーパーパワーフィクサーなんだと惚れ惚れすること間違いなしです。
角栄よりもキッシンジャーが完全に主人公で、ロッキード事件が日本へ至るまでのアメリカ側の絶妙な匙加減が堪能できる。CIAとか余裕で暗躍しまくってるので、此方も歴史のダイナミズム文学として一見の価値あり。日本という国はアメリカ兄貴に睨まれながら戦後やりくりしていってるんだなあと思える。各国首脳同士の会談というのは腹の探り合いで常にバチバチなのが疲れる仕事やなあと実感。
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