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nirasaki
奇説 今昔物語集 vol.008 -天人伝説-篇
前稿の「陸奥前司 橘 則光、人を切り殺す語、第十五」まで今昔物語集「巻二十三」の本朝世俗編の記事をモチーフに記してきたのだが、この後、怪力無双の超人の逸話が続く。美濃の狐という百人力の女盗賊が、これまた強力な尾張の女に退治される話。比叡山の実因僧都や、広沢の寛朝僧正といった怪力の坊主が盗人を撃退する話。相撲人(すまいびと)が身体に巻きついてきた大蛇と格闘して、大蛇を引きちぎってしまう話などである。だが、読んでいてそれなりに面白いのだが、書いていくといまいち面白くないので、これらは捨象して「巻二十四」に入っていきたい。
1.初代 源氏長者
今は昔、北辺(きたのべ)の左大臣という人がいた。嵯峨天皇の子で、名前は源 信(みなもとのまこと)と言う。浄土教の見地から極楽往生について書かれた『往生要集』を著した僧侶、源信(げんしん)と全くの同字なのでまぎらわしいのだが、こちらの源 信は初代の源氏長者(げんじのちょうじゃ)であり、公卿で、官位は左大臣である。
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