命のスープ~25章~
私の手元にロンの描いた絵画が1点残っている。
人気のイルカの絵。
彼の最期の作品である。
イルカや風景画を描いた。
特にイルカが人気だが、ロンは実はそこまでイルカが好きではない。『客寄せパンダ』と呼んでいた。
インタビューでは、
「泳げない自分がイルカと泳いでいるところを想像して描きました。」
と応える。
…歯が浮く。
難病、筋ジストロフィー、車いす…
これらも彼にとっては客寄せの1つだった。
自分ではそれをなんとも思ってないんだから。
いつかのハロウィン。
仕事終わりに私自身も一応仮装をして、ロンとハロウィンパーティーに行った。
…4つ。
ロンの仮装はゾンビ。
おでこを銃で撃ち抜かれたような特殊メイクをし、点滴をぶらさげている。
口から生ハムを垂らす。
私のバイオハザードのアリスの仮装誰にも気付いてもらえなかった。
明け方4時まで飲み歩いた。
帰るや否や彼は寝始めた。
ちなみにロンは寝るとき目が開いているため、すごい光景だ。
眠い目を擦りながら、拭き取るタイプのメイク落としで丁寧に拭き取る。
これをみた訪問看護師さんが腰を抜かしてしまう。
…思い出すとイライラする。
気持ち良さそうに寝やがって。
軽のスロープ付きの車を借りて、あちこち運転してまわったが、ついに私はリフト付きのセレナを購入した。
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