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頑張ることの不経済化
2009年から早稲田慶應の東京圏出身者比率は上がり続け、今では8割近くが東京圏出身で占められている。当然この傾向は大企業正社員へスライドする。「大学は田舎者の集まり」であった時代から、いつの間にか明確な棲み分けがされている。
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これはマジョリティの就職先が転換したことを意味している。就職先が変われば当然人生設計も変わってくる。
30代の私には次のような感覚がある。
キャリアの積み方は定石と期限があり、ある年齢までにチェックマークがついていないと自動的にルートが閉ざされるゲームになっている。女性の場合は出産がマイルストーンになっている恋愛・結婚・出産レースがある。
しかし、この考え方は実はすでに「エリート層」*1に局在化していて、もはや限られた人間の特権的な人生設計になっている。というか、大多数の10代から見たらもうゲームとして全然うま味がない。
キャリアやお金は最終目的ではなくそのゲームで得られた戦利品を幸福感や快適性に変換する必要がある。このルートの変換効率は商品がコモディティ化して安く高品質な製品、タダみたいな金額で映画見報だなNetflixや冷凍技術の発達で美味しくなった冷凍食品などの産業が成長するほど不経済化する。
現代の若年層は生涯未婚率が上昇する以上、高い買い物が人生で存在せず、海外旅行やラグジュアリー製品が欲しくなければ頑張る必要がない。そうして頑張って手に入れたバーキンですら、Netflixのクリストファーノーランの映画と比べて「価値がある」というのは主義や価値観の領域になっている。
昭和平成世代が努力で買っていたキャリアという商品すら、終端資産としての価値は発揮できず*2、どう変換してもバイトで稼いだ金で見るNetflixより投資効率が高いルートになり得ない。つまり
①家族や住宅などの大型の買い物はそもそも必要がなくなり
②そのための勉強や就職のコスパは社会保障費の増額とともに悪化し
③かつダラダラするためのスマホ、Netflix、冷凍食品は格安になっている
という状況で立身出世に投資しようという発想は正気の沙汰ではないという公算が成り立つ。欲しくもないものを長時間の努力で手にいれるほど馬鹿らしいことはない。
懐古主義的な老人世代として、頑張ることを信奉しコンサバティブな立身出世を追うのも一つの価値観として否定しないが、急激に少子高齢化している日本ではすでに大多数のプレイヤーは新しいゲームを始めている。
*1 エリートではないと思ったかもしれないが、データ上この考え方はエリートのものだ。地方出身者が大企業正社員になるためのハードルがとても高くなっている。
*2 キャリアを持っているだけで価値があるのは友達がキャリアを重視している世代だけだ。社会保険料が増加し大学→会社員→キャッシュの投資効率が落ちると、一部の人間を除いて、このキャリアというルートは羨望の対象から外れる。コンサバティブな結婚がマイルストーンにない世界ではキャリアの終端資産としての資産性は限りなく低い。
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