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百人一首16番/僕と君の旅の話

旅に出る。
私はここから旅に出る。

これは主語が「私」の場合の話。
私が旅に出た後の「君」も、私がいない場所で新たな旅が始まる。

全てのことに対してそうだけど、自分の世界なのだから、自分目線で物事や事柄を捉える。至極当然のことだと思う。
だけど、それと同時に相手もまた相手の目線でその事柄の物語が発生する。

手紙を書くから寂しがらないでよ、なんて、旅に出る側の気持ちで、留まった「君」も旅に出ている。

もはやどちらが旅に出ているのか分からない。
でもお互いに相手を想っている歌だなぁと感じた。

16番.歌の意味と解釈

No.16
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む

(中納言行平 ちゅうなごんゆきひら )

▼歌意
別れに際して名残を惜しむ人への挨拶。
あなたとお別れして、因幡の国へ行きますが、その地にあるいなばの山の峰に生える松のようにあなたが待っていると聞いたなら、今すぐにでも帰って来ましょう。

嵯峨嵐山文華館より

16番.狸オリジナルの解釈とことば

▼狸/オリジナル解釈

僕は旅に出るけれど、
君がいない世界の僕はどんな感じだろうか。
時おり手紙を書くよ。

僕がいない世界こそ
君にとっては旅の始まりになるのだろうか。

君と僕、どっちが壮大な旅に出ているのか
もはや分からないけれど。


これは鳥取の松の事を言っているそうで、
「待つ」と「松」を掛け合わせている。

一千年前からとっくに韻を踏む、という文化があったことにちょっとびっくりした。

松の元で待つ「君」と、松から旅に出た「僕」の物語。

狸(TANUKI POJRCT・Orie Tamura)


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