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フィリピンの狂犬病
東南アジアをはじめ、世界中でいまだにヒトの狂犬病の発生が続いています。
狂犬病は狂犬病ウイルスによる感染症で、世界中で年間数万人が死亡する人獣共通感染症です。発症するとほぼ100%死亡します。狂犬病はほとんど全ての哺乳動物から感染する可能性があります。日本の感染症法では4類感染症に分類されています。(厚生労働省検疫所)
2013年のデータですが、アジアとアフリカは狂犬病感染のリスクが非常に高い地域です。WHOは狂犬病を忘れられた熱帯病(Neglected Tropical Disease)のひとつとしています。
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フィリピンでも毎年狂犬病患者の発生が報告されていて、最近のLancetの論文によると年間300〜400人前後の発生があり、その多くが命を落としていると思われます。この論文はフィリピンの13歳の女の子が犬に噛まれたことを家族に言わずに、2か月後に狂犬病を発症して亡くなってしまったケースが報告されています。
現在でもマニラのサンラザロ病院の動物咬傷治療センター(Animal Bite Treatment Center)には1日に3000件の動物咬傷の相談があるとのこと。
Smith C et al., Rabies in the Philippines: a call to action (2024), The Lancet Regional Health
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フィリピンのマニラでは野良犬がそのあたりをうろうろしています。普通に歩いている程度では噛まれることないし、明らかに狂犬病の犬は見かけたことはないけれども、それなりにリスクの高い地域です。
もちろん野良犬に狂犬病ワクチンは打たれていません。できるだけ外を歩きたくないけど、仕方がない。犬を刺激しないようにして短パンやサンダルで歩かないようにしています。
また最近のフィリピンにおける狂犬病の研究によると、狂犬病になるケースの多くが子犬に噛まれて発症することがわかっています。この研究は、3年間で151例の狂犬病患者を登録し、調査したという非常に大規模な研究です。
さらにこの研究では、動物咬傷後に発症予防を受けない最も一般的な理由として、軽度の咬傷であるために自己判断で治療の必要がないと考えてしまうケースが多く、それが狂犬病による死亡につながることが多いことが明らかになりました。
狂犬病は適切な予防がなされないと、発症したらほぼ100%死亡します。噛まれた後に予防したとしても助からないケースもありますが、それでも予防するに越したことはありません。
フィリピン滞在の際、動物に触れるようなことがある場合は、事前に予防接種を検討しましょう。また可愛くてもむやみに野良動物(イヌ、ネコ)には触らないようにしましょう。