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全サイクリスト夢の舞台『ツールドフランス』1日体験『L'Etape du Tour de France 2023』後編
みなさんこんにちは。
もうすぐ7月が終わり夏の終わりを感じているKです。
前回に引き続き7月に参加したL'Etape du Tour de France 2023(エタップ)の話を書きます。
それと文だけにはなってしまいますがイベント後の話も少しだけ書きます。
今回も好き放題書くのでお時間あればぜひ最後までご覧ください。
いつもお世話になっているKEIMASA CYCLEのリンクはこちら
前回のあらすじ
中盤の1級山岳2つとほぼ超級山岳の1級山岳をなんとか上り切り、残すは最後の超級山岳だけになった私はかなり消耗させられた脚を気にしながら次の休憩時エリアまで向かいました。
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中編は🟨
後編は🟦
それとイベント終了後の話も書く
最後の平坦区間
ほぼ超級山岳である1級の山岳を終わった私はその麓であるタナンジュから最後の休憩エリアが設定されているサモエンヌまでの約11kmの道のりを順調に走行していきました。
(この時サモエンヌに休憩エリアがあるのは知らなかった)
先程の山頂と違って下界はやはり蒸し暑いですね。
平坦区間なので他の参加者達も集まってきて隊列を組みます。
10人程の集団になりましたが一向に速度が上がりません。
この時の走行速度は時速27kmでした。
『なんでこんなに遅いんだ?風もないし道が悪いわけでもない?』
どうやらこれから対峙する最後の山岳に向けて脚を休めたい参加者達だけで集まってしまったので誰も先頭を引きたがらない状態になってしまったそうです。
先頭の人も「変われよ!」って怒っていますが誰も前に行こうとはしませんでした。
私も同じ事を思っていたので『そりゃそうだよな』って思いながら走っていました。
追いついて来た他の参加者もなんとかしてこの集団に合流したそうでしたが誰も入れる気がありません。
入れたら後ろに付かれるのはわかっていますから。
私は間に入ってくれるのであれば誰が来ても歓迎状態なのでバンバン前に入れます。
あっという間に20人の大所帯になり私は後方でのんびり走っていました。
最後の平坦区間が終わりサモエンヌへ到着します。
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最後の休憩
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私は1つ前の休憩所が最後だと思っていたので「助かった…」と呟きつつ最後の山に備えて休憩を少しだけ長めに取ることにしました。
自転車を置いた隣にはその日に開催されていたツールドフランスのプロ部門の実況を見ている参加者がいましたが『あんた、この状況でもそれ見んのかよ(笑)』と笑ってしまいました。
やっぱりプロのレースも気になるんですね。
水もボトル2本分入れたい気持ちもありましたが重りになるので1本だけを入れ2本目は空にしました。
ふと後ろを見たらこれから上る山岳を楽しそうに撮影している笹井さんがいました。
15分ほど休憩した私は立ち上がり一言気合を入れます。
「よし、必ず(超級山岳に)勝つ」
上っている際に無理だと判断したらすぐに歩くつもりではいました。
しかしここまで来れたのであればやっぱり欲が出ます。
無理なら無理、でもできるなら走破したい。
自分の気持ちに正直に、けど難しいなら降りるのも手段。
完走こそが全てですから
休憩所前にスタッフの人達が準備してくれたホースで思いっきり水をぶっかけてもらってから走り出しました。
超級山岳一発勝負
休憩エリアを出発して数m、左に曲がるとすぐに最後の山岳ゲートが現れます。
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距離は11.6km、平均勾配は8.5%。
最大勾配は約13%です。
獲得標高はイベント最大の1691mです。
ここの山岳コースの悪意に満ちたところは平均勾配は8.5%ですが、瞬間的に斜度が上がる箇所はあっても下がる箇所がほぼないところです。
なのでほぼ8.5%の坂道を走ることになります。
『入り口からこれは悪意があり過ぎんだろ!』
声は出ませんが心の声は大騒ぎしていました。
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前の山岳エリアでも同様にここも道がかなり狭いです。
更に気温がピークを迎える時間帯でもあったので暑さにやられた参加者達がバタバタと倒れていきます。
体力も気力も限界状態。
最も軽いギアにしてもペダルが回らず、かと言って回しやすくする為に姿勢を起こすと体重がサドルに乗ってお尻が痛い。
解消する為に立ち漕ぎをすると脚の体力が削れていく。
かなり最悪な負の連鎖です。
それでも自転車から降りると言う選択肢は全くありませんでした。
ひたすら前の走者の後輪に注意を配り、サイコンに表記されているクライムプロの勾配表記と睨めっこをしていました。
自転車に乗り続けていて辛さで頭が上がらなくなったのは初めてです。
それでも脚はなんとか動いていてくれました。
『頼むから脚止まんな…絶対止まんなよ…』
もう祈りに近いです。
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計画して降りない限り1度脚をついたらもう走り出す事はできない
時折観客の方々がかけてくれる水が命綱です。
ボトルに水はありますが飲むための腕が動かないのです。
立ち漕ぎをする際に全力でハンドルを引っ張り、その勢いでペダルを回すと言う動作を繰り返していたので上腕部にも限界が来ていたのです。
なんとか走っていましたがやはり自分より遅く蛇行しながら走行して道を塞ぐ参加者が現れます。
蛇行するなら降りた方が安全ですが降りたくないのはあちらも一緒です。
「左から…」と声をかけたくても声が出ません。
転倒を避ける為にもなんとか抜かさなければなりません。
幸か不幸か、U字カーブが現れると皆勾配が低い外側を走るのでその際に抜きにかかります。
当たり前ですがU字の内側は勾配がキツくなります。
しかし前に出る機会はここにしかないので歯を食いしばりながら一気に追い抜くというのを何度も繰り返しました。
観客の方々は大盛り上がりです。
正直、この歓声がなければ内側を攻めるなんて馬鹿な事は絶対にしません。
最初から最後まで応援してくれた方々には本当に感謝しております。
限界を超えた先に見えたもの
どれくらい進み、何時間が経過したのでしょうか。
サイコンを見ればあと何mで頂上かを見ることができます。
しかしその数値が見えても脳まで情報が届かないのです。
ですからほぼ感覚で走り続けました。
何かに対して文句を言いたくても口が動きません。
『次はあのカーブまで頑張ろう』
『次はあの観客の場所まで頑張ろう』
『大丈夫、まだ動く、まだ走れる』
ひたすら心の中でこう思いながらペダルを回していました。
脚先の感覚はほぼありません。
でも精神だけは最後まで折れずに身体を動かし続けてくれました。
『戦いに来たわけじゃない、けど絶対に負けられん』
意地との戦いとはまさにこのような事を言うのでしょう。
遂に見えた勝ち確のゲート
おそらく2時間は上っていたと思います。
遂にサイコンに表記される残り標高が100mを切りました。
顔を上げると遥か遠くには白と赤の模様が入ったゲートが見えます。
『ようやく見えてくれたか…あと少し、あと少しだ』
山頂ゲートは見えていますが中々辿り着きません。
他の参加者も本当に辛そうな顔をしながら上っていました。
このゲートが見えても辿り着くまでには5分近くかかるんですよ。
少しづつ大きくなっていくゲートをしっかりと見据えながら着実に進んで行きました。
そしてとうとうゲートを通り抜けます。
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ゲートを通り過ぎて10m程進みペダルを外します。
脚の感覚がほぼ無かったので膝から崩れ落ちてしまいました。
他の参加者もそうだったようで何を言っているのかは分かりませんでしたが何人かの方が笑いかけてくれました。
「う、うちの勝ちだ…」
声も絶え絶えです。
少し間、空を見上げながら息を整えます。
他のメンバーの状況を確認する為に携帯電話を見るとグループメールにKEIMASAとこの日会う事が出来なかったふじさんから無事に完走したと連絡が入っていました。
ゴールしました!!ちょっと足がヤバいんですが、ホテルまで50キロ自走です。笑 pic.twitter.com/2YwZlzeXHB
— KEIMASA CYCLE (@keimasacycle) July 9, 2023
『2人とも無事に終わってくれたか。うちもあと少しだ。頑張ろう』
少し長めに休もうと思いましたが標高が高いからか気温がかなり低く『今までの暑さはどこへいったのか?』と思うくらい寒かったのでとっととゴールまで下山することにしました。
この時の獲得標高が約3900m程でした。
最後の最後でもやってくれやがった
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しかし頂上はかなり寒かった
坂道を下り、左に曲がって…なぜか上っていました。
山岳終了のゲートからなんとなくは見えてはいましたが『あそこの坂、自転車が走っている気がするけど気のせいだよな?』なんて思っていました。
今回のイベントの合計獲得標高は約4000mです。
先ほど書きましたが超級山岳を上り切った際の獲得標高は約3900mでした。
なんと運営は残りの100mを超級山岳を終わらせた後に補填することにしたのです。
「おい!なんで上ってんだよ!!」
これにはさすがに私も怒ります。
先程の『走り切った…』の感動はどこへ行ったのでしょう。
他の参加者達も考えている事は同じようでめっちゃ怒っていました。
さっきまで声が出せないほど疲弊していたのが嘘のようです。
少しだけ上らされた後、ようやく下山する事ができました。
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ラスト最悪の下り坂
ここからゴールまで約10kmは下り坂です。
坂が終わればそのままゴールできるようでした。
後はのんびり下れば良いので楽できるな…と思っていました。
坂が急すぎます。
今までの下り坂の比ではないくらい急降下です。
更に道が超ボコボコしていました。
あまりの道の悪さに私の目の前を走っていた女性は体重が軽いからかぽんぽん跳ねていました。
後ろから見ていて超怖かったです。
気を抜かず残り数kmをしっかりと走りあっという間にゴール地点のモルジヌの町中へ入ります。
多くの観客の方々がゴールする我々を祝福してくれている気がしました。
『長かった…本当に長かった…本当に、よく頑張った』
走行時間8:12:39、経過時間は9:44:36
合計獲得標高は3957m(ガーミンの最高表記により誤差あり)
サイクリスト達の夢の舞台、L'Etape du Tour de France2023を無事に走り切ることができました。
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危険回避の為に喜びも控えめ
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ゴールの喜び
ゴールした参加者は本当に嬉しそうです。
抱き合って喜ぶ人達もいれば1人で泣いている人もいました。
『みんな本当に辛かったんだね…』
その光景を見ていた私も泣きそうでした。
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お待ちかねのメダルをもらう瞬間です。
イベントを走り切った際にはメダルをかけてもらう
私にとってはこれがイベントをやり遂げたという証でもあります。
メダルをかけてもらった時、本当に辛かった事を思い出して私も泣き出してしまいました。
隣にいた参加者もそれを見てか泣き出してしまい一緒に喜んでいました。
『ようやく終わってくれた。ちょっとだけ休むか』
本当はすぐに動き出したいところでしたが身体はとっくに限界を迎えていたようです。
その場に座り込んで動けなくなってしまいました。
「こりゃダメだわ、しばらく動けんの」
チームのグループメールに完走したと連絡をしてしばらく座り込むことにしました。
しばらくは完走した参加者達が喜び合っているのを眺めていました。
「人が喜んでいるのを見るってのも悪くないの」
休息も束の間
30分ほど休んだでしょうか。
そろそろ帰らねばなりません。
メンバーの方達は車での帰宅ですが私とKEIMASAは車両の台数の関係上自走で帰る必要がありました。
時刻は19時過ぎ。
陽が沈むまでは後3時間ほどありますが宿舎までは約50km程の距離なのでもしもの事を想定して少し早めに出発することにしました。
もしかしたらチームの方々が来るじゃないかと待っていましたが一向に現れないので無事を祈りつつ重い腰を上げました。
しかし両足大腿部にかなりの痛みがありました。
「これ、帰れるかな…」
ボソッと呟きますが口が動くのでなんとかなると判断して歩き出しました。
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見たい気持ちもあったがこれ以上疲れるわけにはいかないので帰ることにした
帰りのルートは笹井さんが設定してくれた道を走って帰ります。
前日のコースの説明の際に何かを言っていた気がしましたが頭が完全に疲れていたので考えるのを放棄して近場の階段を上ることにしました。
その階段が大変で大変で…
自転車を担いだまま思った以上に急勾配の階段を上りますが自転車用の靴を履いているのでバランスが取れません。
万が一倒れてしまったら後ろの人を巻き込むことになるので全く気が抜けませんでした。
ようやく上り終えてフロントライト、リアライトを点灯させて出発しました(前編にも載せましたが再度載せておきます)
フロントライトに関しては人の好みにもよります。
しかしヨーロッパで走行する場合、リアライトの選択ミスは単純に生死を分けます。
と言うのもヨーロッパの運転はかなり荒いので相手に気づいてもらうより先に自分が気づいて回避する必要があるからです。
以上の点から後方センサー付きのリアライトを用意しました。
このリアライトは後方140mから接近してくる自分より早い物体に反応してサイコンに通知をしてくれます。
自分より速ければ何にでも反応するので鳩や鹿にも反応します。
6月に帰国した際に富士山を1人で走りましたが後方に何もいないのにバンバン反応してとても怖かったです。
笑いとツッコミが止まらない限界を超えた自走タイム
出発してからの約25km地点まではずっと下り坂です。
直前まで一歩間違えたら空を飛んでそのまま帰ってこれないようなコースを走っていたので道が広くカーブが少ない下り坂なんてお茶の子さいさいです。
「ぃやほーーーーい!」なんて叫びながら爆走で下っていました。
しかし後ろからは時折車が来るのでサイコンに通知が来たらすぐに道の端へより後方確認をします。
車が追いついてきて抜けるか抜けないかを悩んでいるそぶりを見せたらすぐに左手をあげて『どうぞー!』と先を譲り続けました。
ほとんどの車が参加者です。
私も背中にゼッケンをつけたまま走行していたので抜かされる際に助手席から超楽しそうに声をかけられます。
本当に何台もの車の助手席から声をかけてもらいました。
静かな景色に爆音で響く後輪のラチェット音。
単純に騒音で迷惑ですね(笑)
25kmがあっという間に終わり街中へ入っていきます。
街中では信号があるのでしっかり守ります。
ヨーロッパの人って結構守らないんですよ。
それと車の横が空いていれば赤信号で停車している際にバンバン前に出て行く人を多々見かけますが私は『どうせ抜かれんだし後ろで待てばええやん』の考えなので1度抜かれた車には信号で追いついても追い抜く動作は起こしません。
その後も街中で参加者達の車にバンバン抜かれて行きますが皆超ハイテンションでクラクションを鳴らしながら私を応援してくれました。
日本はどうでしょうね?
ヨーロッパのイベントでは参加者は皆戦友の様な感覚なのでイベント終了後は超仲良くなります。
身体はとうに限界を迎えていましたがイベントを走り切った喜びと多くの参加者からの声援、そしてフランスという地を走っている事に興奮してか疲れを全く感じていませんでした。
〇〇はみんなで走れば怖くない
順調に走行していた35km地点でしょうか。
あることに気が付きます。
それは速度標識の数字が90kmだったことです。
ドイツで走行しているときは自転車道だけど速度標識が70kmなんていう道は多々ありました。
だからフランスでも70kmの速度標識なら気にせず走っていました。
しかし90kmはいくらなんでも速すぎます。
おかしいなと思い1度立ち止まる事にしました。
『何か見落としていないか…』
しばらく考えた後、ある事を思い出しました。
前日に宿舎にて笹井さんが「帰りのルートだけど、1箇所走れない道があるかもしれない」と言っていたことを思い出したのです。
「もしかして…ここじゃね?」
試しにグーグルマップにて経路を検索しましたが全く同じルートを表示されてしまいました。
ガーミンのアプリでも再検索しましたがやはりこの道だそうです。
私は慌てて笹井さんに電話をしました。
しかし繋がりません。
KEIMASAがすでに宿舎に帰っているだろうと予想した私はどのルートを通ったのか聞くために連絡をしましたが繋がりませんでした。
おそらく疲れ果てていて寝ているのでしょう。
しばらくすると笹井さんから連絡がきます。
笹「どうされました?」
K「今なんですけど、どうやら自転車が走行できない区間に突入した可能性がありまして…」
笹「もしかしてバイパス区間ですかね。やっぱり通れませんでしたか」
K「通れなくはないのかもしれませんけど…流石に危ないですね」
笹「今はどのあたりでしょうか?バイパスの前にロータリーがあってそこを曲がると遠回りになりますが自転車が走行できる区間に戻れます」
K「結構進んでしまいましたけどなんとか歩いて戻ってみます」
その場に立ち続けていても埒があきません。
電話をしながら1番近場にあるであろうロータリーへ向けて歩き出しました。
その時です。
なんと対面から物凄い勢いで走って来るお兄さんがいるではありませんか。
イベント参加者がもらえるリュックを背負っているので参加者なのはすぐにわかりました。
K「笹井さん、対面から人が来ました!ちょっと聞いてみます!」
本当に物凄い勢いで走ってきたので話しかける時間がないと判断した私はジェスチャーで『ここの道は行けるのか?』と問いかけました。
そしたらどうでしょう。
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アメリカのホームドラマでしかお目にかかった事がない、絵に描いたような『わかんない』というジェスチャーをしながら私の前を走り抜けて行きました。
K「笹井さん!わからないそうです!!」
笹「えぇ!?」
K「けどあの人そのまま走って行ったのでうちもそのまま付いて行きます!」
笹「わかりました!この後はアップダウンが激しい道が続きますがお気をつけて!」
K「ありがとうございます!また後で!」
そう言って電話を切った私は慌てて先ほどのお兄さんを追尾しました。
さすがフランス、自由の国だぜ
全力で走り続けて数分後、なんとか先程私の前を通り過ぎたお兄さんに追いつきました。
フランス人なのはゼッケンの国旗を見て分かったので英語が通じる事を祈ってなんとか話しかけます。
(フランス人は英語が話せない人が思ったより多い)
K「この道は走っても良いのですか!?」
お兄さん「わからん!けどエタップの参加者だから良いんじゃない!」
K「一緒に走っても良いですか!」
お兄さん「もちろん!」
という事でしばらくの間お兄さんと一緒にどうみても走ってはいけないバイパスを爆速で走行する事になりました。
ペダルを踏む勢いは完全にレースです。
自由の国とは聞いていましたがもう何でもありです。
この時点でこの日の走行距離は200kmを超えていました。
恥ずかしながらロードバイクを初めてはや7年、200kmの走行をしたのはKEIMASAと走った1回だけでした。
それがなんという事でしょう。
こんな形で200kmを突破する事になるとは思ってもいませんでした。
しかもかなりの強度です。
5km程走った頃でしょうか。
ロータリーを走行した際にお兄さんの自転車の前輪が豪快にパンクします。
K「大丈夫ですか!?」
お兄さん「大丈夫!俺のはチューブレス(タイヤの内側にチューブが入っていないタイプのタイヤ)だからさ!空気入れればすぐに走れるよ!」
K「手伝いは!」
お兄さん「大丈夫!それよりも疲れただろ!お前もとっとと家に帰りな!」
K「良いんですか!」
お兄さん「今日は最高に楽しかったな!気をつけて帰れよ!」
K「ありがとうございます!お気をつけて!」
(会話の語尾に全て『!』が付いているのは2人共興奮状態で話していたから)
お兄さんに別れを告げた私は残りの12kmを一気に走る事にしました。
残りの道は全て一直線で迷いようがありません。
しかしバイパス区間ではなくなったとはいえ車がすごい勢いでバンバン私の横を通り抜けていきます。
更に先程、笹井さんが言っていたアップダウンが激しい道に突入します。
「これじゃあ完全に追い込みじゃねぇか!!なんだよこのアップダウン!アホか!!」
もはや別の戦いが繰り広げられていました。
それでも「後少しだ!やるしかねぇ!!」と喚きながら全力でペダルを回し続けました。
エタップの終わり
陽が沈みかけた22時頃でしょうか。
ようやく見覚えのあるホテルが見えてきました。
『着いた…ようやく着いてくれた…』
私達が宿泊しているホテルへ到着しました。
「終わったー!!帰ったぞー!!」
あまりの嬉しさに叫んでいました。
ホテルへ到着し部屋へ戻ります。
しかし限界をとうに超えた私にとっては扉が重過ぎて開けられません。
他の宿泊客に助けられながらなんとか自室へ戻る事ができました。
部屋に戻ると気絶しているようにソファに倒れていたKEIMASAが出迎えてくれました。
K「帰ったわ…」
KEIMASA「おかえり…お疲れさん」
再会のグータッチです。
K「マジで疲れたわ…」
KEIMASA「思ったより元気そうじゃん…俺なんか帰ってきたら玄関で倒れてたで」
K「うちももう無理、風呂入る」
KEIMASA「あぁ、そうしな。俺もみんなが帰って来るまで寝るから」
K「風呂入って30分経っても出てこなかったら沈んだと思って声かけてね」
KEIMASA「はいよ」
そんなやりとりをしながら互いの無事を喜びつつ他のメンバーが帰って来るまでのんびり(気絶)する事にしました。
後々聞きましたがどうやらKEIMASAもあのバイパスを走ったそうです。
その際には他の参加者と隊列を組んで一気に走ったとのこと。
やっぱりあそこは追い込む場所だったんですね。
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夜のお話
この後、何時間後かは覚えていませんが笹井さん、エッティさん、金子さんも無事に完走し宿舎へ帰って来ました。
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3人とも無事に走り切る事ができて本当に良かった
疲れ過ぎてパスタを食べるのも声を出すのも大変な状態ではありましたが不思議なことに身体は動いてくれました。
3人が宿舎に帰ってきた後は朝に私達を見送ってくれた浅野さん親子も合流して笹井さんの部屋でのお疲れさん会です。
途中自室に戻った後に再び笹井さんの部屋を訪れたもののドアが開かず『開けて』とメールを送った後に膝から崩れ落ちていたKEIMASAを見た時は不謹慎ながら笑ってしまいました。
何はともあれ全員が無事に完走です。
初めてのエタップ、そして最高のイベント、これにて無事終了です。
最後に
エタップというイベントには前々から興味はありました。
しかしまさかそのイベントに参加できる日が来るとは思いもしませんでした。
ツールドフランスのコースがどれ程厳しいものなのかというのもテレビでは何度も見てはいましたが実際ここまで厳しく大変で、そして辛いイベントだとは思ってもいませんでした。
KEIMASA曰く『昨年の方がキツい山は多々あったけど今回のイベントの方が大変だった』とのこと。
特に超級山岳前のほぼ超級1級山岳は本当にキツかったと皆口を揃えて言っていました。
本当にとんでもないイベントだったんだなと書いている今も常々思います。
楽しさよりも辛さの方が上回ったこのイベントでの経験は何物にも変え難いものがあります。
来年、また参加できるならぜひ参加したいです。
それと今回のイベントで1つ実感した事があります。
それは5月から始めたサプリメントの効果が確実に出ているという事です。
と言うのも今までは70kmを超えたあたりで脚が動かなくなったり脚が攣ったりと散々な目に遭ってきました。
しかし今回は休憩を挟んでいたとはいえ1度も脚が攣る事なく、痛みはあっても脚が最後まで動いてくれました。
自走で帰る事ができたのもおそらくこれのおかげでしょう。
まだ効果を実感するのは時期早々でもしかしたら気のせいかもしれません。
ですが今まで超える事ができなかった200kmも思いの外簡単に突破する事ができたのであながち気のせいではないと思っています。
これからも続けていくとしましょう。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
私は大陸続きのドイツに住んでいますが他の国を走る機会はそうそうありません。
ましてや自転車大国フランスを走る機会なんて年に1回あるかないかです。
しかし得ることのできたチャンスをしっかり掴んで今回のイベントに参加する事ができました。
また来年、この地を踏めるのを楽しみにしています。
それではみなさん、また次回👋
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この後自走で大変な思いをするのはまた後の話
追伸
今回のイベントにあたって助けていただいだ全ての方々、そしてTeam639のメンバーの皆さん。
本当にありがとうございました。
そして本当にお疲れ様でした。