【イオン】第4回不動産デベロッパー事業がイオンの利益を支えている
イオンの第4回は、利益の柱でもあるデベロッパー事業を紹介していきます。イオンのデベロッパー事業は、ほぼイオンモール1社が担っています。このため、イオンモールのアニュアルレポートを見ながらその事業内容を見ていきましょう。
1.イオンモールって何をしている会社?
ショッピングセンターの開発と管理運営をしている
イオンモールは不動産ディベロッパーと呼ばれる業種であり、ショッピングセンター(以下SC)の開発と管理運営を行い、テナントから家賃収入と管理手数料をもらうことを仕事としています。
具体的には、SCを企画・開発し、テナントを選び(リーシング)、SCオープン後の、管理と集客支援も行います。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
SCを150億円で建設し、20年間、毎年20億円の収益を稼ぐビジネス
不動産ディベロッパー事業は、とても大きな金額を投資し、長い期間で利益を得るビジネスです。イメージのため例を挙げると、150億円でショッピングモールを建て、毎年20億円の賃料を20年間稼ぐ、そんな規模と期間といえるでしょう。
家賃収入は固定家賃と歩合家賃の組み合わせ
上の図にあるように、イオンモールの家賃は固定家賃と歩合家賃で構成されています。歩合家賃は、「テナントの売上高のXX%」といった変動制の家賃のことです。テナントの売上高が大きくなるほど、イオンモールの収入も増えるので、イオンモールにも積極的に集客を支援するインセンティブが働きます。
日本とアジアに180店舗を展開
イオンモールは、日本とアジアに合計180の店舗を運営しています。アジアは中国に19店舗、アセアンに8店舗持っています。
モールは、商業施設から社会インフラへ
イオンモールの仕事を語る上でもう一つ重要なのは、ショッピングセンター作りが、まちづくり、社会インフラづくりへ変化している点です。イオンモールは、すでに地域社会の公共インフラであり、防災拠点でもあります。単なる商業施設でなく、地域社会の住民の生活を支える施設を、自治体や地域住民と作り上げる事が、今のイオンモールの仕事とも言えます。
2.イオンモールってどのくらい大きいの?
営業収益は3241億円、国内最大のSCディベロッパー
イオンモールの2020年2月期の営業収益は3241億円です。ショッピングセンターの不動産ディベロッパーとしては、国内最大の事業者です。
不動産ディベロッパーの営業収益(*1)は家賃収入です。お店で物を売買する金額(売上高)に比べると小さく見えますが、3000億円の家賃収入とは、どんな規模なのでしょうか?
*1 売上高と営業収益
日本の会計基準では、ものを売ったときの売り上げを売上高、サービス料や手数料等の売り上げを営業収益と表現します。どちらも、本業からもらうお金と言う点では共通します。
国内150店舗で、年間12億人の人が訪れる
イオンモールのSCには、国内150店舗で年間12億人の人が訪れます。SCでの総販売金額は公表されていないので、イメージのために例を挙げると、1人3000円使ったとして年間3兆6000億円の販売金額となります。そのうちの大体8-10%くらいがイオンモールの家賃収入になっている、と考えればよいでしょうか。
イオンモールのSCは150店舗のみですが、数兆円規模の販売高を生み出している、巨大な事業といえます。
厳しい環境の中、営業収益は着実に成長している
(グラフ:イオンモールHPより)
イオンモールの営業収益は、劇的ではありませんが着実に成長しています。グラフを見ると分かるように、この5年間で2300億円から3200億円へ41%の増加をしています。
日本のSCは1990年代に全国に大量に出店され、すでに飽和状態になったといわれています。実際、新規着工数は減少をつづけていますが、イオンモールは国内、海外共に毎年5店舗前後の新規開店を継続しています。大きな成長は見込めないものの、高い競争力を背景に着実な成長を続けています。
3.イオンモールってどのくらい儲かっているの?
営業利益は607億円、利益率は18.8%
イオンモールの2020年2月期の営業利益は607億円、営業利益率は18.8%です。イオングループ全体の約3分の1の利益を稼いでおり、利益面での基幹事業となっています。
さて、この営業利益率18.8%は、GMS事業(0.23%)やスーパーマーケット事業(0.7%)に比べると、とても高く見えます。しかし、不動産デベロッパーのようなサービス料収入の事業は、一般的に利益率が高くなるため、単純に比べることはできません。
この利益率の良し悪しについて、もう少し見ていきたいと思います。
過去と比べると、利益率は減少している
グラフ:イオンモールの営業利益と営業利益率推移
(有価証券報告書より作成)
イオンモールの営業利益は2008年からずっと増益を続けています。しかし、グラフをみると営業利益率は徐々に低下しているのが分かります。
海外事業はまだ利益体質を確立できていない
営業利益率が低下した原因としては、まだ利益体質の確立できない海外事業への挑戦が挙げられます。下の図をみると、中国・アセアンの事業は営業収益が2018年度に合計445億円にまで成長した一方で、営業利益は5億円に留まっています。
図:海外事業の店舗数と営業収益、営業利益推移
(図:イオンモール2018年度統合レポート)
このように、海外事業は成長要因である一方で、利益体質の確立はまだ道半ばのようです。一方で、国内事業だけをみれば利益率は20%を超えることになり、大きな成長性こそないものの、安定した利益率を有しているといえます。
4.イオンのデベロッパー事業のまとめとこれから
イオンのデベロッパー事業を担うイオンモールは、国内では高い競争力を持ち海外にも展開しながら継続して成長し続けています。このディベロッパー事業は、イオングループの競争力を支える上で重要な役割を有しています。
集客力のあるショッピングセンターが、他の事業を支えている
集客力のあるショッピングセンターは、イオングループの各事業によい効果をもたらします。GMSと専門店は、テナントとしてSCに入るため、高い集客力は当然売上高の増加をもたらします。また、巨大なSCが生み出す大きな販売額は、クレジットカード事業の手数料収入も増やしてくれます。
このように考えると、ディベロッパー事業はイオングループの競争力を支える最も重要な事業といえるのではないでしょうか。
営業利益1000億円、世界のプレイヤーに肩を並べる事業を目指す
イオンモールは、2025年までに営業利益1000億円を目指しています。これは、グローバル商業ディベロッパーに匹敵する水準です。この中心となる成長ファクターは海外事業の店舗開発の加速と利益率確保と言えます。
2019年までの実績を見ると、規模、利益率共に改善しているものの、改善スピードは十分とは言えず、目標達成は簡単でないのかもしれません。
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