「モノゴトをシンプルにする技術」とは?-プログラミング的思考で仕事の生産性UP!#02-
この連載では、プログラミングの考え方を応用した「モノゴトをシンプルにする技術」を、仕事や家事に応用する方法を紹介していきます。
今回も少し前置き的な内容になってしまいますが、もうしばらくお付き合いください。
どんな人に読んでほしいのか?
「プログラミング」という言葉を見て、この連載がIT業界にいる人向けで自分には関係ないと思われているのだとしたら、いますぐ改めてほしい。
私は、こんな人たちに読んでほしいと思っています。
自分なりに頑張っているつもりなのに、なかなか評価されない
残業もせずさっさと帰宅する同期の方がどんどん昇進していくのは納得いかない
パフォーマンスの良くない部下には時間をかけたいのに、働き方改革に阻まれて一向に成長させられない
部下に指示を出しても、なかなか伝わらない。むしろ現場が混乱している気がする
などなど。
頑張っているわりに報われないと感じている人、たくさんいると思います。
この連載はそんな
労力をかけるわりに期待する効果が得られない
ことに困っている全ての人に、読んでほしいと思っています。
この連載では「プログラミング的思考」をテーマに書いていきますが、「プログラミング的思考」という言葉が世の中に認知され始めたのは、2019年あたりでしょうか。
公立の小学校でプログラミング教育が始まることが話題となり、子どもたちはこれから「プログラミング的思考」を身につけるべき!という話をあちこちで聞くようになりました。
なので、いまの大学生や社会人にとっては馴染みの薄い言葉でしょうし、IT系の仕事に携わっている人以外は、自分とは無関係なこと、と考えているかもしれません。
でもそれ、間違っています。
プログラミング的思考というものが何か?それがどう役立つのか?ということについては、今後少しずつ説明していきますが、その前に。
この連載で扱うテーマは「生産性」です。
問題は、生産性
生産性とは?何でしょうか?
労働、設備、原材料などの投入量とこれによって作り出される生産物の産出量との比率(広辞苑)
要は、使った労力やコストに対して得られる成果や利益、のことです。
コスパという言葉で表現することもありますね。
最近だと、タイパとも言うようです。
一般的に生産性というと、労働生産性のことを指します。
労働者の視点からみると
どれだけ働いて、どれだけ稼げたか
経営者の視点からみると
(給与や経費の支払い、あるいは投資に)どれだけのコストをかけて、どれだけ利益を出せたか
という違いがありますが、ここでは労働者の視点に注目します。
この生産性は、成長を前提とする世界では増やすことを期待されます。
生産性を計算する式はシンプルにこんな感じです。
生産性=成果 / 時間
では、生産性を増やすためには、どうしたら良いでしょう?
手段は大きく2つあります。
単純な算数です。
1つは、分母を減らすこと。
そしてもう1つは、分子を増やすこと、です。
なぜ生産性を気にしないといけないのか?
ところで私たちは、会社や組織からだけでなく、国からも生産性を上げろ!と言われていることに気づいているでしょうか?
働き方改革やリスキリングという言葉を毎日のように目にしますよね。
日本の生産性は、昔に比べて下がっているとか、他国とくらべて低い、と言われます。
本当にそうなのでしょうか?
日本生産性本部という団体が、OECDの調査結果にもとづいて毎年公表しているレポートによると、2021年の結果はこのようになっていました。
1970年の調査以来、ずっと下降傾向です。この10年の下がり幅がすごいですね・・
ちなみに、時間あたりのOECD加盟国ランキングはこんな感じです。
国の規模(土地の広さ、人口の多さ)を軸に考えると、日本のポテンシャルはもっとあるよね?と考えるのはおかしくない気がしますね。
こうした相対評価でも十分に危機感をおぼえますが、もう1つ、日本が生産性を問題視している要因があります。
それは、少子化です。
働き手が減れば、シンプルに分母が減ります。でもこれは止めることができない。だから、国がとろうとしている施策が2つあります。
1つは、分母を減らすための「働き方改革」。
一人一人が効率的に(かつ健康的に)働くことで、分母として投入される労働時間を減らしていく。
そうすれば、結果的に一人あたりの生産性が上がっていくはず、です。
もう一つは、分子を増やすための「リスキリング」。
盛んに学び直しが叫ばれ、国が1兆円の予算をつぎこむというニュースが話題になりました。
こうやって、国をあげて日本の生産性を上げる流れ、というのがまず大前提としてあります。
生産性の正しい高め方
私たち個人個人に目を向けると、生産性を上げたいと考える背景には、もっと楽に稼ぎたい、もっとプライベートの時間を増やしたい、といった欲望があるのだと思います。
そして、そんな欲望に応えるたくさんの情報があります。
ざっくり分けると、これも分母を減らすHowと、分子を増やすHowの2種類に分かれます。
分母を減らすHowでいうと、ハック系、タイムマネジメント系の本がありますね。
分子を増やすHowだと、スキルUP系、人脈をつくろう系の本でしょうか。
こうした本は昔から今でも、ずーっと、たくさん出ているのですが、ここ数年、少し違った動きが出てきました。
それは、
そうやって生産性を追求するのが本当に正しいのだろうか?
生産性UPは、本当に人生の豊かさに繋がるのだろうか?
という疑問を投げかける本です。
有名なのがこちらですね。
もう一つ、ベストセラーになったエッセンシャル思考の続編として出されたエフォートレス思考も同じ思想で書かれた本です。
(エッセンシャル思考をかいた著者自身が躓いたのが、この思考を生み出したきっかけ、というのがすごく良い)
2つの本に共通しているのは、分母を減らし、分子を増やすために頑張って頑張って頑張り続けても
生産性を上げるには限界がある
ということです。
ここに気付かないと、疲弊して身体を壊したり家庭を失ったり、自分にとって大切なものを手放すことになりかねないのです。
私はよく、生産性の話を仕事の現場などでもするのですが、ときどき懐疑的に受け止める人がいます。
その答えとしては、生産性を上げるために努力することは間違っていない。
ただし「頑張り方」を間違うのはNG
だと思っています。
私のように面倒くさがりな人にとっては、いろんなハックを試したり、毎日一生懸命に努力してコツコツ積み上げる、ということがどうしても出来ません・・
でも、楽をしたい、という欲望なら人一倍あります!
だから、いかに楽をして成果を上げるか?
ということにはとても興味があって、実現するための努力は惜しみませんでした。
そのノウハウを、これからお伝えしてきたいと思っています。
要は、考え方次第。
だから、「思考」を取り上げています。
一つ、簡単な例を使って説明します。
目の前に少し複雑な算数の計算があるとします。
33 + 78 + 45 + 22
この問題を、できるだけ速く計算してください、と言われたら、あなたならどうしますか?
即座に計算に取り掛かる
この手の問題の解き方のパターンを調べる
計算機やPCを使って自動計算させる
「簡単」に解く方法を考える
全て同じ結果が出るとして、生産性、という観点からみると、どれが一番優れていると言えるでしょうか?
私は、4だと考えています。
1は、かつての自分がそうでしたが、公文教室に通ったり、計算ドリルを一生懸命やりこなす人たちが選びがちです。
正しく計算する力はとても重要。
でも、あることに気づけば3秒で解ける問題を、頑張って30秒かけて解いている可能性がある、ということにも気付かないといけません。
2は、一見良さそうに思えるのですが、解き方のパターンを無限に覚えられる人でない限り、使わないと忘れて毎回調べる、という非効率を生みます。
でも、受験生は一生懸命やりがちです。
3はどうでしょう。
プログラミング的思考って、そのためにあるんじゃないの?
と思われる方もいるかもしれません。
プログラミング的思考=パソコンでプログラミングをするための技術
と解釈する人が陥りがちです。
ある意味では正しいのですが、実は落とし穴があります。
それは
コンピュータは決められたことしか実行できない
ということ。
決められたことを毎回繰り返すことには非常に長けていますが、パターンが変わると解けなくなります。
(それを解決しようとしているのがAIだけど、結局は覚えさせることに変わりないので時間はかかる)
プログラミング的思考は、プログラミングをするときにも役立つものですが、実はもっともっと応用の効く技術として使うことができます。
ということを、今後少しずつ説明していきます。
そして、4です。
良い本があるのでご紹介します。
算数が苦手な娘のために買ったこちらの本。
手計算、電卓よりも速い、計算スピードを上げるための技、が紹介されています。
これは、計算のパターンを紹介する本なので、先ほどの分類でいうと2のための本なのですが、ここで伝えたいのはパターンを覚えることではなく、どうすれば速く解けるかを考えることの重要さ、です。
先ほどの計算式ですが、速く解くためのヒントは、100、です。
そこに気づいた人は、解き方を知らなくても1,2秒で答えを出せたと思います。
パターンを覚えるのも良いですが、見た瞬間に
簡単に解くにはどうするか?
まず問題をシンプルにしてみよう
と考える癖をつけること。
それが、問題発見や問題解決をする上で、一番重要なことだと思います。
なぜならそれが
"効率よく" 分母を減らすことと、分子を増やすこと
につながるからです。
複雑なものは、まずシンプルに、簡単にするところから。
それが、モノゴトの本質を見極める、ということそのものです。
シンプルな状態とは?
では、シンプルな状態というのはどういった状態のことでしょうか?
それを説明するのに一番分かりやすいと思うのが、ピクトグラムです。
東京2020オリンピックでも話題になりましたね。
誰でも知っているピクトグラムといえばこれ。
見慣れたこのアイコンも、最近ではジェンダー問題から見直されたり、世界共通でもっと分かりやすい形になったりと、まだまだ進化を続けています。
ピクトグラムの本質といえば、絵(形と色)だけで、文字を使わずに意味合いを示すこと、です。
(これに動きを加えた東京2020オリンピックのパフォーマンスは本当に斬新だった)
そこで重要になるのが
その意味を示すために最も重要なこと(それがないと意味が通じないこと)は何か?
を抑えること、です。
いわゆる、本質を理解する、ということです。
逆に言えば、なくても意味が通じるのであれば、それは不必要(余計)な情報だといえます。
トイレのピクトグラムは、ジェンダー問題や、世界共通という観点から色の区別をなくしたり、形を変えたデザインを作ったりすることもありますが、単純に色をなくす、変える、だけではいろいろと混乱がおきます。
たかがトイレ、されどトイレ、トイレのピクトグラムについてのみを扱っているこちらのサイトの考察が面白いので、どんな混乱があるのか気になる方はぜひ。
どうやってシンプル化するのか?
ここまでで、問題はまずシンプルにすること、それが生産性を効率よく上げることに繋がる、という話をしてきました。
次回は、問題をシンプルにするための手段として、プログラミング的思考(プログラミングの考え方)がなぜ使えるのか?
詳しく説明します。