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アベ社長日記#18:退任まであと16日

このシリーズは第1次安倍内閣当時の「首相動静」を基にしたフィクションです。

アベ社長日記#18:退任まであと16日

口は災いの元(2007年9月10日・月)

 正直、眠い。しんどい。
 日曜日(9月9日)、最終便のフライトぎりぎりまでオーストラリアで遊んでいた。日本に帰ってきたのは月曜朝の6時過ぎ。7時に社宅にたどり着いて、とりあえず仮眠・・したと思ったら、叩き起こされた。あわててシャワーを浴びて、スーツに着替える。今日のネクタイはストライプ柄にしてみた。

 11時から取締役会。その前に秘書室長のヨサコイさんに留守中の社内の様子を聞く。実はちょっとした騒ぎが起こっている。

 原因は、・・・僕だ。

 わが社では、インド洋で海上ガソリンスタンドを経営している。ところがこれが、ほとんど利益が出ない。というよりはっきり言って大赤字。周りからは「もう社長、いい加減にしてくださいよ」と文句が出ている。
 しかし、この案件は先代社長からの引継ぎ業務である。得意先とお付き合いの道楽仕事だともわかっているが、そう簡単に手を引くわけにもいかないのだ。
 たまたまオーストラリアの研修セミナーで、この案件の話が出て、つい「対外的な公約であり、それだけ私の責任は重い。約束を果たすためすべての力を出し切らなければならない」だの、「国際社会におけるわが社の責任」だの、威勢のいいことを言ってしまった。
 おまけに「私は職責にしがみつくということはありません」と大見得を切った。これが業界紙で「職を賭す」とトップ記事になって、ガソリンスタンドが続けられなければ、僕は社長を辞める、と書かれてしまった。

 実は少しワインを飲まされて(妻に付き合わされた)、そんなこと言ったかどうかも覚えてない・・とは、とてもいまさら、言い出せそうにない雰囲気で・・。しょうがないから突っ張ることにした。

 今日から全国販社代理店総会が始まる。業界全体の代表として、僕が開会のあいさつをする。ガソリンスタンドの件についても触れ、「国際社会における責任を放棄して本当にいいのか」と啖呵を切った。
 興奮していたので、あいさつ原稿を少し読み飛ばした。「引き続きリーダーシップを発揮していく」というくだり、一番肝心なところが抜けた。あららら・・である。
 後から「社長もお疲れで・・」と、社員から慰められる。6:53帰宅。疲れた。

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注:
2001年の米国同時多発テロを契機に「テロ対策特措法」が成立した。この法律に基づき日本は、「テロとの闘い」は国際社会の最重要課題であるとして海上自衛隊を出動させ、インド洋に展開している各国艦船への燃料補給などを行った。補給は2001年12月から始まり2007年10月末に特措法の期限が切れるまで、回数は700回以上、約46万㎘に及んだ。
※『アベ社長日記#18』は、ブログ『tanpopost』に2007年9月11日 付けで掲載したものです。


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