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シラスを踏みつけて走る、南九州の旅

2024年11月6日。
私は鹿児島中央駅のホームに立っていた。

この旅の目的は、この週末に熊本県五木村で開催される秋祭りに出店することなのだが、仲間たちとは鹿児島空港で待ち合わせてレンタカー相乗りで向かう予定になっている。せっかくの機会なので、早めに鹿児島に乗り込み観光をしようという算段だ。

本来なら今頃、宮崎県都城市にある『霧の蔵ミュージアム』で、かの有名な芋焼酎『黒霧島』の工場見学と試飲をしているはずだった。なにしろ私、家ではほぼ黒霧島しか飲まないほどのヘビーユーザーなのだ。しかし、今日の日中にかぎって鹿児島中央⇔宮崎間が運休だったのだ。なんたる不覚……

仕方がないので、明日巡る予定だった場所を先に回ることにした。

まずは指宿枕崎線に1時間15分ほど揺られ、指宿駅に到着。

移動中にスマホで予約しておいたカーシェアに乗り込み、最初の目的地へ急ぐ。

1時間ほどで、『知覧特攻平和会館』に到着した。

“ 知覧特攻平和会館は、第二次世界大戦末期の沖縄戦において特攻という人類史上類のない作戦で、爆装した飛行機もろとも敵艦に体当たり攻撃をした陸軍特別攻撃隊員の遺品や関係資料を展示しています。(中略)この地が出撃基地であったことから、特攻戦死された隊員の当時の真の姿、遺品、記録を後世に残し、恒久の平和を祈念することが基地住民の責務であろうと信じ、ここに知覧特攻平和会館を建設した次第であります "

『知覧特攻平和会館』ホームページ

最近では、パリオリンピックのメダリスト早田ひな線選手が記者会見で「行ってみたい」と発言したことで、一躍脚光を浴びている場所だ。

タイムリープした女の子が特攻隊員と恋に落ちるような映画が公開されて有識者からは非難轟々だったが、それをきっかけに興味を持つ若者が増えるのならば、悪いことばかりではないのではないか。

実際に使われていた飛行機をはじめ様々な展示があったが、最も心を打たれたのは特攻前夜に書かれたとおぼしき手紙群だった。自分は明日死んでしまうのに、残される家族や恋人に対しての気遣いの言葉に終始しているのだ。ほとんどが20歳前後の若者なのに。

車を返却する時間が迫ってきたので、指宿駅前へ戻る指宿といえば有名なのは砂むし風呂。せっかく近くまできたので体験していこうではないか。

駐車場に車を返し、15分ほど歩いていく。

『砂むし会館 砂楽』。ここで体験できるのだ。

2階の券売機でチケットを購入し、受付で浴衣やタオルなどを受け取る。砂むしは浴衣を着用した状態でおこなうとのこと。そこから階段で1階に下りると、脱衣場がある。浴衣に着替えて屋外に出ると、そこからさらに下って海岸へと進んでいく。

大きいテント状のものに覆われた一角が、砂むし体験の会場だ。入口に立っているおっさんに指示され、⑥と書かれた奥の方にあるスペースに移動する。スコップで軽めに掘られた穴に横たわるように指示され、仰向けに寝転ぶ。身体の上にスコップでどんどんと砂が掛けられていく。「のぼせるので15分くらいで上がるように」と声を掛けられた。

徐々に身体全体が熱を帯び、汗が浮き出てきた。しかし体は温まるが退屈を覚えてくる。なにしろ海も空も見えないと、海岸で砂むしをやっているという風情に欠けてしまうのだ。

15分きっかりで砂むしから上がって、大浴場で汗を流し、鹿児島中央駅まで戻った。

宿にチェックインした後、せっかく鹿児島まで来たのだから焼酎に鶏たたきを合わせたディナーを摂った。



翌朝、特急霧島に乗って鹿児島中央駅を早々に発ち、都城駅に急いだ。昨日のリベンジを果たすのだ。

都城駅には10:08 に到着した。荷物をコインロッカーに預け、タクシーで異動することにした。タクシーの運ちゃんは福島県の郡山市から移住してきたばかりだという。遠距離恋愛の相手が都城市民なので、思い切って都城のタクシー会社に転職したという次第。

そんな会話をしているうちに、霧の蔵ミュージアムに到着した。

工場見学の予約は11:00 に取っておいたので、まだ時間に余裕がある。先に買い物を済ませておこう。

ここでしか買えないようなレアな商品をはじめ、土産物の品ぞろえは抜群だ。結局、黒霧島入りのチョコレートや霧島原酒・霧島クラフトビールなどを買い込み、そのほとんどをクール宅急便で自宅に送った。大満足。

いよいよ11:00。工場見学のスタートだ。平日の午前中にも関わらず、20名ほどの大所帯で動いていく。

ミュージアムを出て道を渡ると、工場棟がある。二階に上がると、窓越しに霧島連山がそびえ立っている。

階下を見下ろすと、白い砂にまみれた一角が目に入った。まさかあそこで砂むし風呂でもするのか?

じつは、この一帯の地盤はシラス(火砕流堆積物)で構成されており、白砂に見える物は粉砕された軽石でできているそうだ。ここでは庭の一角にシラスを敷きつめて、たまにビーチバレーの大会を開催しているとのこと。

いよいよ工場の見学コースに入っていく。

まずは減量となるサツマイモの模型から。

その先を進むにつれ、工場の作業工程ごとにわかりやすい解説が加えられている。

そして、次第に芋の香りが強くなってくる。

大量のサツマイモを洗浄し、加熱してから潰し、麹などと合わせて、蒸留し熟成する。

工程はどの焼酎でもほぼ変わらないが、これだけの規模で作っている場所は他には存在しない。圧巻だ。

工場見学の締めとして、試飲タイムが用意されていた。元々これを楽しみにしていたのだが、じつはこの後運転しなければならない。後ろ髪を引かれる思いで、会場を後にした。

さあ、用事は済んだ。
都城駅には13:12に発車する特急霧島に間に合うように戻ればいい。せっかくだから、最近おろそかになっている「旅先で走る」趣味に興じてみようか。

こんなこともあろうかと、ランニングシューズを履いてきたのだ。いざ、都城ラン。スタート!

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Googleからは、朝入ってきた正面入り口とは真逆の方向に案内される。こんな方に道はつながっているのだろうかと訝りながらも進んでいく。

左手には山、正面には畑が現れた。ここを右に折れると。電車のガード下をくぐって行けるようだ。

ガード下を抜けると住宅の姿も増えてきたが、それでもまだ畑は点在している。

サツマイモ畑なのだろうか? すでに収穫された後なので、詳細は確認できなかった。

大通りに出て、しばらく緩やかな上り坂を進んでいくと大淀川が現れた。

橋を渡ると、その先にはお店が突然増えていく。この先が市内の中心市街なのだろうか?

とはいえ、怪しいたこ焼き屋とか、

営業しているか定かではない「メナード」とか、

そんな店もチラホラ。

などと沿道の店に突っ込みを入れている間に、本当に中心市街に突入していたようだ。道路沿いの歩道に、縦横無尽にアーケードが張り巡らされている。

「都城に行くなら図書館を見ておいた方がいいですよ」と聞いていたので、寄り道していくことにする。

撤退した百貨店の跡地に作られたとのことで、二階建てだがかなり広い。
(内部の写真を撮っていなかったので、興味のある方は ↓ コチラから)

" Mallmall(都城市立図書館) スタイリッシュで広々した空間が魅力の中心市街地にある人気の図書館 "

「みやざき観光ナビ」より

では、本来のゴール地点へ急ごう。

ゴールに設定しているのは南日本銀行都城支店だ。ここで100円玉を1本両替してくるミッションを、五木村で待ち構えている元締めから与えられているのだ。なにしろ五木村から一番近い金融機関は人吉市で、片道が小一時間かかるのだ。

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両替を終えると、西都城駅(都城駅よりもこちらの駅の方が栄えている)まで歩き、駅前からバスに乗って都城駅に戻った。

都城駅からは特急で隼人駅まで移動し、駅前で路線バスに乗り換えて鹿児島空港に到着した。

待ち合わせまで少し時間があるので、鹿児島黒豚ラーメンのランチを摂る。

さあ、旅はこれからが本番だ。


【追記】

無事に仲間と合流し、私の運転で五木村までひたすら山を上っていった。宿は『端海野キャンプ場』だ。

ひとまず、飲む。霧の蔵ミュージアムで試飲できなかった心残りを吹き飛ばすがごとく。

翌日は村内で行われた『小さな村g7サミット』に参加し、

懇親会では馬刺しを切ったり、

盛り付けや配膳のお手伝いをした。

そして、その翌日からはいよいよ待ちに待った秋祭りだ。

鶏の唐揚げを32kgほど揚げ続け、

見事完売した!


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蒲公英
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