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北アルプスの絶景を眺めながら、安曇野でハーフマラソンを走る " 旅先で『日常』を走る ~spin-of⑰~ "

2023年6月4日。時刻は午前7:30。
長野県安曇野市、豊科南部総合公園に私は立っていた。

これから『第9回信州安曇野ハーフマラソン』に参加するのだ。

8:30に迫ったスタートに備え、すでに1,000人は軽く超えるだろう参加者たちによって、メイン会場であるこの公園内は早朝とは思えないほどの賑わいを見せていた。

これから安曇野から望む雄大な景色を楽しみながら走れることに、すでに軽い興奮を覚えている。それほどに、私は安曇野に魅せられてしまったのだ。


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2021年8月、長野旅行での行程のひとつとして私ははじめて安曇野に訪れた。まだお盆なのに気温は20℃を切り、連日の大雨に祟られて散々な旅であった。天候が悪くなると四方が靄に包まれてしまい、せっかくの風景もまったく楽しめなかった。
しかし、せっかくの旅が台無しになってしまった後悔の念と手元に残っていた青春18きっぷの存在が私を後押しして、翌週末に再度安曇野を訪れることになった。今度は天候もなんとか崩れずにすみ、レンタサイクルを借りて大王わさび農場などを経由してサイクリングを楽しんだ。

その翌年の2022年、ひょんなきっかけから私は長野で暮らすことになった
長野市で仕事をしながら毎週金曜日には信州大学松本キャンパスに通っていた私は、安曇野を通るように長野まで帰るルートを取り、その道すがら車窓に広がる冠雪が立派な北アルプスの風景を堪能しながら、ドライブを楽しんだ。3月末で長野の住居を引き払い東京に戻ったが、今でも安曇野には特別な愛着を感じている。

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という経緯でここに至った。
我がランニング部からはあと2名が参加予定であるが、それぞれ別々にエントリーを済ませていたため、今日は特に待ち合わせなどはしていない。

していないのだが、参加者のひとりT倉さんより「ここに集合しましょうよ
」とメッセージが来た。添付の会場マップを参照しながら向かう。

しかし、指定されたポイントの範囲がなかなか広く、人並みをかき分けながら姿を探すも見つけることができない。しかも電波の状況が悪く、接続がブチブチ切れてしまう。スタート時刻が近づいてきたので、合流はあきらめて指定されたスタート地点に移動した。

8:30。号砲が鳴り響き、いよいよレースがスタートした! ゲストとして招聘されて有森裕子さんのテンションが高い。スタート地点に設えられたステージに乗って、大きな声でランナーたちを鼓舞し続けている。

しばらくはまっすぐに平坦な道を進んでいく。人混みでなかなかスピードが出せない。どのみちオーバーペースは禁物だ。着実に進んでいこう。

右手に北アルプスの山々が現れた。冠雪はほぼなくなってしまったが、稜線が延々と続いていく景色は変わらずきれいだ。

しばらく進んだ後、左に折れて農道に入り、なおもひたすら進む。ここまでは快調だ。日差しは強いが風もあり、まだ気温もそこまで上昇していないようだ。

沿道では地元の方々からの声援や太鼓の演奏などが各所にあり、退屈する暇がない。そしてなにより、頻繁にエイドがある。水分補給に困ることはなく、これは非常に助かる。和菓子などの提供も多いが、さすがにすべては食べきれない。贅沢な悩み。

中間地点を過ぎ、ペースダウンしている人たちを追い抜いていく。スマホでタイムを確認する。1前半のタイムは1時間1分強。やや前半のペースを抑えすぎたか? せっかく調子がよいのだから、ここは2時間を切りたいところだ。さらにペースを上げていく。

なおも進んでいくと、17km地点あたりに上り坂が現れた。後半での上りは、けっこうきつい。左側の歩道にTVクルーがカメラを構えている。通り過ぎるランナーたちがカメラに向けて話しかけたりポーズを取ったりしているが、私にはハーフマラソン2時間切りというミッションがある。ここは無視していこう。ストイックな私。

坂を上り切ったら、今度は同じだけの下りがある。その先を左に折れる。後半の方がペースを上げているのでそろそろきつくなってきた。残り3kmを切ったあたりで、自主エイドとおぼしきものがいくつも現れる。小ぶりのアイスキャンディーが振舞われている。もちろん受け取って、すぐに頬張る。冷たい。甘い。救われる。アイスキャンディーとはランナーのために発明されたのではないか?(個人の感想です)
その先をUターンして、この道をまっすぐに進めばいよいよゴールにたどり着く。今度は温泉まんじゅうと麦茶が振舞われた。これが仮に温泉まんじゅうだけだとしたら口内の水分を奪われたランナーたちの屍がここに積み上げられただろうが、麦茶とのコンビネーションによってゴールを目前にしたランナーたちに最後のパワーを与えてくれる絶妙な効果をもたらしている。最高の計らいだ。

パワーを回復した私はスピードを高め進んでいくと、ついにゴールが見えてきた。ラスト100mは全力疾走しよう。ゴール地点の手前に有森裕子がいる。完走を果たそうとしているランナーたちを激励しながらハイタッチをしている。私が左の手のひらを彼女に向けると、同じく左の手のひらで受けてくれた。

ハイタッチの感触を手のひらに残しながら、無事にゴールラインを越えた!

惜しくも2時間切りは叶わなかったが、自己ベストのタイムをたたき出すことができた。

ゴールの先でいろいろなものをいただいた。景品が多い。

水をゴクゴクとラッパ飲みしながらパクつくおにぎりは最高に旨い。具は中に入れずに別に用意してある。こちらもパクつく。塩っ気が身体に染み渡る。

預けていた荷物を受け取り更衣室で着替えた後、もう一人の参加者であるクイーンと合流した。どうやらクイーンは足が攣ってしまい19㎞地点でリタイヤした模様。残念だ。温泉まんじゅうと麦茶にはありつけたのだろうか?

その後はクイーンの運転で、45分ほどドライブして大町温泉に移動した。普段話す機会がない、それぞれの私生活のことなど話す。あと、クイーンが会場に向かう途中で野生の猿を見かけたことなど。
温泉には1時間みっちりと入った。ぬるめのお湯で露天風呂も広く景色も雄大で、大満足。途中で山登りの帰りに寄ったという爺さんに話しかけられ、かなり時間を費やしてしまい、サウナと水風呂を一往復しかできなかったことが唯一の心残りだ。

汗を流しさっぱりしたところで、次は遅めのランチ会場へ移動する。

以前に安曇野に来た時にランニング部員のOろしさんに推薦された『くるまや』を利用することにした。

走った後なので大盛りを選択。

ボリュームたっぷり! ツルツルっとのど越しもよく、一気に間食した。

そしてこの後は、来月ランニング部の有志8名で走る予定の小布施見にマラソンで使う宿の下見に合流する。幹事のT倉さんが町家民宿を見つけてくれて、今日は試しに一泊してみるそうだ。


しかし、長野や安曇野と公私ともにこんなにも縁がつながるとは、ほんの一年前には思いもよらなかったのだ。一寸先は靄の中だが、そんな人生もなかなか面白いものだ。とりあえず、今年1年は、長野県内のレースに出られるだ出続けよう。






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