希望を描いてくれる人たち
図書館で借りてきた『人生の道しるべ』という本を読んでいます。
宮本輝さんと吉本ばななさんの対談です。お二人とも素晴らしい作家の方でどちらの方の小説も夢中になって読んできました。
この本の中で宮本さんは、ご自身が小説家になられたきっかけは仕事のストレスからパニック障害になったことだと語っておられます。
今まで宮本さんの書かれた小説に勇気をたくさんいただいてきたので間違っているのかもしれないのですがそのことに感謝してしまいました。
あまりにも好き過ぎて子どもにも宮本さんの小説を勧めてみたのですが、作品が合わなかったようで気に入ってもらえませんでした。
それでも私は自分が読んだ宮本さんの小説は全部素晴らしいと思っていて、大好きな作家さんです。
この本の中で宮本さんは、『赤毛のアン』全巻を何回も読んでいるとおっしゃっていました。その中に幸福があるとおっしゃっていました。
宮本さんが『赤毛のアン』のシリーズを大切に読まれているということに対して意外な気持ちと嬉しさの両方がありました。
私が読ませていただいた宮本さんの小説はどれもみんな誰かの希望というものを書いておられたような気がしていてそのことが読む人の心を引きつけて感動させてくれているのだと思います。
そのことは『赤毛のアン』を読んだ時にも感じていました。
アンは孤児です。
そしてやせっぽちで赤毛。
頭もいいし、カンもいいけど、空想好きでかたくなで、一般的にいったら物語の主人公にはなりにくいような少女です。
そのアンがマシュウとマリラという兄妹の元にやってくることによってこのお話は始まりますがマシュウとマリラだってどちらも結婚せず子どもも持たずに年を重ねていて農作業を手伝ってもらうために男の子を養子に迎えようとしていたのですから華々しさとは無縁の生活だったのだと思います。
アンが性別を間違われて二人の住むグリーンゲイブルスにやってきた時マリラはすぐに男の子と取り換えてもらおうと言ったのだけれど、アンが気に入ってしまっていたマシュウはアンをうちにおいてやりたいと言います。
マシュウはそれからもずっとアンを温かく見守り続け、アンはグリーンゲイブルスで成長してしあわせな大人になっていきます。
私が『赤毛のアン』の中でとても好きなエピソードの中に、節約家のマリラがアンにドレスを作ってあげないのを気にしたマシュウが、雑貨屋さんに何回も足を運んでパフスリーブのドレスを作るための布地を買おうとするのだけれど、シャイだから恥ずかしくて言えなくて必要のない荒い塩をものすごく沢山買ってきてマリラに叱られてしまってでもまた買いに行ってということを何回も繰り返して、結局最後にはお店の人とマリラの友達のレイチェルリンドさんに助けられてアンにドレスをプレゼントできたというものがあります。
そのマシュウの不器用で一生懸命な姿にとても感動しました。
そういう愛情に包まれていたからこそアンは元々持っていたいい性質を大きく開花させることができました。
素敵な女性に成長してしあわせな人生を送ることができました。
そう思うと無口で恥ずかしがり屋のマシュウという人がアンにどれほど喜びをもらっていたのか、気難しくてかたくなだったマリラがアンにどれだけ明るい心をもらっていたのか、二人の愛情にこたえようとしてアンがどれだけ努力したのか。
そのことを考えると胸が熱くなってしまって『赤毛のアン』がこれほど長く沢山の人たちに愛されて読み続けられている理由はそこにあるのではないかと感じてしまうのです。
『赤毛のアン』の物語の中には希望というものがいくつも描かれています。
やせっぽちで、なにも持っていない、ただ目をキラキラとさせて自分の思いを明るく語って見せることしかできないアンが自分の周りの人たちをしあわせに変えていく。そして自分もしあわせになる。このアンの物語に勇気と希望をもらった人はきっとたくさんいたはずです。
そして宮本輝さんの小説のヒロインも宮本さんの小説の中でいろんな経験をして成長し、変わっていきます。
思いつくだけでも、『ここに地終わり海始まる』『花の降る午後』『睡蓮の青いまどろみ』『森のなかの海』『水のかたち』等、どの作品のヒロインもみんな自分の運命を受け入れながら戦って成長していきます。
その物語を読むことで自分自身の悩みや思いを受け入れたり変えたりして乗り越えた人もきっといるはずです。
そこには希望が描かれていて、それを読んだ人たちに勇気を与えてくれているのではないかと思うのです。
それは吉本ばななさんの小説もおんなじで、ここにでてくる人やお話はみんな、人に希望と勇気を取り戻させてくれるために存在しています。
noteで読めるエッセイや小説も沢山の人に希望と喜びを分けてくれます。
少なくとも私はそうです。
だからもっともっと読みたいです。
沢山の素晴しい文章がキラキラと存在している、そういうnoteが大好きです。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
画像はちえむさんにお借りしました。ありがとうございます♡