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夏の約束 第二章 カフェ=リベルテ


春の日差しが柔らかく降り注ぐテラス席で、僕と友人たちは「リベルテ」のコーヒーを味わっていた。テーブルには数冊のノートと教科書が広げられ、談笑の中に時折、学業の話題が挟まれる。

「昨日の授業、難しかったなぁ」と田中がぼやいた。彼は文学部の友人で、僕と同じく言語学に興味を持っていた。

「特にあのアラビア語の発音!」と僕も同意する。「でも、頑張ればなんとかなるさ。」

「そうそう、諦めずに続ければいいんだよ」ともう一人の友人、鈴木が笑顔で答えた。彼はいつも前向きな性格で、皆のムードメーカーだった。

しばらくアラビア語の勉強について話した後、自然と話題は日常のことへと移っていった。

「そういえば、えりちゃんって知ってる?」と田中がふと尋ねた。

「えりちゃん?」僕は首をかしげた。「誰それ?」

「えー、知らないの? 結構有名だよ」と鈴木が驚いた様子で言った。「うちの学科の榊えりちゃんさ。うちの学科じゃあ一番だと思うけどなあ、美人で頭も良くて、男子の間では話題になってるんだ。」

「へぇーそうなんだ。そんなに可愛らしいんだぁ、でも僕は見たこともないし、あんまり興味無いなあ」と僕は肩をすくめた。

「おいおい、そう言うなよ」と一人黙っていた山田が口を開いた。

「えりちゃんはすごくいい子だよ。もっと知ってみる価値はあると思うけど。」

彼はえりにひそかに思いを寄せているようだった。

「いや、俺は別にそういうのは興味ないんだ」と僕は言った。

「でも、実はえりちゃん、君に興味があるかもしれないって噂もあるんだよ」と鈴木がニヤリと笑って言った。

「なんでも、君のことをよく話題にしているらしい。」

「本当かよ?」と僕は驚きつつも半信半疑だった。

「本当だって。僕も彼女とは結構親しいから、そんな話もちらほら聞くんだ」と鈴木が肩をすくめた。

「えりが悠真に?」山田が少し動揺した様子で聞き返した。「そんな話、聞いたことないけど。」

「まぁ、そんなに気にすることでもないけどな」と僕は無関心を装って答えた。

「でも、何かが始まる予感がする春って感じだな」と田中が微笑みながら言った。「俺たちの学生生活も、これからどんどん面白くなるに違いない。」

その時、僕はふとえりのノートを拾ったことを思い出した。あの日、彼女が授業後に教室を出て行ったとき、床に落ちていたノートを拾い上げて渡しただけだった。彼女の「ありがとう」という一言と、恥ずかしそうな笑顔が、なぜか心に残っている。だが、それ以上のことはなかったし、深く考えることもなかった。

その日の「リベルテ」での会話は、これからの学生生活に少しの期待と興奮をもたらしてくれた。春の柔らかな日差しの中で、僕たちは新たな一歩を踏み出していたのだ。学生たちの笑い声と、カフェのざわめきが、僕たちの新しい日常の幕開けを告げていた。





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TANOTIN
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