2021/1/24 植あきこ先生ご講演 『鬼滅の刃』における神話的構造--『鬼滅の刃』は現代の「神話」になりうるのか
こんにちは〜、筑波医学類6年の上ちゃんことウエハラです。
今回は1/24日(日)に行われた、植あきこ先生の講演会で感じたことをつらつら書いていこうと思います〜🐎
植先生は神話学や民間伝承について研究されている方で、最近ではAERA.dotで書かれたコラムが100万Viewを超えるなど、鬼滅の刃についての考察でも話題になっている先生です。
今回は楽し樹内にあるブッククラブのメンバーが、今回の企画に参加して書いてくれた感想を紹介していこうと思います〜🐎
作品を正しく読む
今日の植先生の講座では,「正しく作品として読む」ということについて考えさせられた。 神話という言葉一つとっても,人それぞれ受け取り方が違い,学問によっても考え方が異なるということを知った。 今回取り上げていただいた作品「鬼滅の刃」では多くの神話的モチーフが用いられていることが分かった。神話的モチーフとして挙げられたのは,まず人物についての特徴。①英雄譚②能力の過剰と欠損③マジカルアイテム。 この一つ一つのモチーフを丁寧にたどりながら「鬼滅の刃」を読むと,丹念にそれらが描かれていることに感心する。 2つ目の神話的要素①神・人・魔の関係②呪い・前世からの因縁③死後の世界・成仏・輪廻転生・子孫への継承。 これらも丁寧に描かれている。(鬼であるものにも救済があることは個人的に作品として好ましい。) 「鬼滅の刃」は現代の「神話」になりうる可能性があると私は思う。ただし,正しくテクストはテクストとして保存され,間違った活用がなされないことが大切だと考える。 さて,これらの神話的要素を聞いた時,私は一つのマンガを思い出した。そうアニメにもアニメ映画にも実写映画にもなった「鋼の錬金術師」だ。 ①の「英雄譚」の戦う子どもであり,兄弟。②の身体の欠損と過剰。③マジカルアイテム 2つ目の神話的要素にも全て当てはまる。神話的モチーフという視点を持つと意外に多くのヒット作品にそのモチーフが使われていることに気づく。 次回機会があれば植先生に他の作品についてもお聞きしてみたい。
鬼滅の刃と神話的要素
「鬼滅の刃」 この作品の名を聞いたことがない人はいないと思う。ただし、それがどうしてこんなにもウケたのか、やこの作品に含まれる神話的要素など今まで考えたこともなかった。 植先生のご講演を聞いて鬼滅の刃の新たな一面を見ることができた。正直、この作品からこれほど話が広がるとは思ってもみなかった。また、それと同時に植先生が今回紹介してくださった神話的要素をほかの物語を読む際にも気を付けてみると面白いだろうと思った。 また、今回の公演を聞いて「作品」が与える力の大きさを知った。私たちが生きている次元とはとは違う次元にある作品の世界。(伝承や神話など事実であるとされているものもあるが。)実際に、戦時中は戦意高揚のために作品が利用されたり、ある土地で脈々と受け継がれる物語がその土地の人々の行動を変えたりするなど社会に与える影響は決して小さくない。エンターテイメントととして生み出された「鬼滅の刃」は世代を超えて広く社会全体に浸透し、その解釈は多様である。また、研究者でない人でも、自分なりに解釈を考えてみるのは楽しいと思う。物語は現実世界に豊かさをもたらす。ただ、その解釈次第では物語の世界と現実の世界の境界を踏み間違えた愚かな行動につながってしまうこともある。それをいかに防ぎ、物語の良い可能性を引き出すにはどうすればよいか。簡単な問いではないがそもそもこのような問いが提起されること自体、まれであると思う。私は、今回この問いに出会えて本当に良かったと思う。
先天的能力の持つ神話性
・鬼滅の刃神話的要素その1にて、英雄譚であることに触れました。その中にうるさい男が必要だという項目があり、非常に興味深かったのです。うるさい男が必要となる背景には、過去の作家たちの苦難があるのではないかと思います。恋愛ストーリーなどでも、うるさい男を使ってヒロインや主人公の立ち位置を確立しますし、戦闘アクションでは、戦闘におけるスペックの確立に使われているように思います。その意味では、うるさい男は物語解説者としての意味を担っており、うるさい男の発言こそが、その物語の真理にたどり着く重要なカギになるのだなと考えました。
・神話的要素として、生まれつきの傷や、兄弟などの血筋について取り上げてくださいました。先天的な要素が大切になるような、こういう側面は、物語にかなり重要だと感じています。物語の基礎構成として、主人公は血筋にとらわれず先天的な能力を有しておらず、周りや敵は先天的に超越した力を持っているというのが、昔から日本に根付くオーソドックスなパターンだと思います。外国は例外なので、これが日本人の面白いと感じる要素なのかもしれません。
しかし鬼滅の刃は初めから鼻が利くなど、従来のパターンを裏切る展開が多いように感じます。おそらくこれから先、日本でブームを起こす作品は先天的能力を有した主人公がおおくなるのではないかと思いました。気づけば転生ものブームも訪れており、転生ものというのは要するに異世界に記憶を持ったまま転生するため、先天的に常人よりもリードしていることになります。
日本のこれまでの、先天的能力者に後天的努力で打ち勝つという構図はだんだん廃れていき、逆に先天的能力者による苦悩や無双ストーリーが日本の物語界を支配していくのだなと考えました。
さてさて、実はここにもかけなかった濃い〜内容がたくさんあります笑。
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それではまた次の企画で!
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