![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157864913/rectangle_large_type_2_6ce4700d789a4330ba9f678f2ce2c73f.png?width=1200)
親にも教員にももっておいてほしい5つのカウンセリングマインド
私は,中学校教員を24年間務めたのち,スクールカウンセラーに転身して3年目の「元中学校教員で現役スクールカウンセラー」です。
教員時代は,まだまだ未熟な子どもたちを教え導くことが務めであるとの信念から,ついつい「ああしなさい」,「こうしなさい」「こうするべきだ」と言ってきました。
その後,カウンセリングについて学びカウンセラーとして務めるうちに,”あぁ,教員時代からカウンセリングマインドをもって子どもたちに関わっていれば,もっと多くの子どもの成長を支えることができたのに”と感じるようになりました。
そこで今回は,そんな私が,教員にも,そして親にもぜひもっていてほしいと思っているカウンセリングマインドを5つ紹介することにします。
傾聴的態度
親も教員も,子どもが何か問題を起こしたり悩みを相談してきたときに,「そんなことしたらダメでしょ!もっとこうしなさい」とか,「そんなことでくよくよしないで,気にせずこうすればいいでしょ」なんて言い方をしていませんか?
例えば,友達と遊んでいてケンカになり泣いている子がいたとします。そんな時,あなたは親もしくは教員として,その子どもとどんなふうに関わりますか??
「そんなに嫌な思いをするなら,もうその子と遊ぶのはやめて他の子と遊びなさい」とか,「相手の子とちゃんと話し合って仲直りしなさい」みたいなことを言っていませんか?
はい,かつての私は言ってました。特に,「もうその子と遊ぶのはやめて…」と,ひとまず遠ざけるみたいな指導はよくしていたと思います。
「傾聴的態度」とは,まずは判断を保留して相手の言葉を受け入れ(受容),相手の思いを理解(共感)しようとする態度のことです。
「いったい何があったの?」
「友達とケンカして嫌なことをいっぱい言われた」
「そう,それで悲しい気持ちになったんだね」
「もう,あんなやつ大嫌い!」
「そっか,もうその友達のことは嫌いになっちゃったんだね」
「うん…でも,やっぱりあいつとサッカーして遊びたい…」
「なるほど,嫌な思いはしたけど,やっぱり遊びたいんだね」
「だけど,今日のことは許せない!ちゃんと謝ってほしい」
「謝ってもらいたいんだね。じゃあ,そのためにどうすればいいかな?」
「もう一回,あいつと話してみる」
「うん,それがいいかもね」
こんなふうに,まずは相手の思いをしっかりと聴くことで,子どもが自分で考え自分で解決策を導き出すことができるかもしれません。
尊敬的態度
大人はついつい,「子どもだから自分では解決できない」とか,「大人が教えて正しい方向へ導いてやらないといけない」などと考えがちです。
本当にそうでしょうか?
忘れ物をしてしまった!どうしよう??
家のカギをなくしておうちに入れない!どうしよう??
友達が怒ってしまった!どうしよう??
友達に借りたおもちゃを壊してしまった!どうしよう?
友達から仲間外れにされてるみたい…どうしよう?
子どもたちは日々いろんな問題に遭遇します。中には大人がサポートする必要のあるものもあるでしょう?
ただ,あまり先回りして,助言を与えたり代わりに解決してしまったりしていいのでしょうか?それで子どもは,もう一度似たような問題に遭遇した時に自分で解決できるのでしょうか??
まずは,子どもの力を信じて期待して任せてみる「尊敬的態度」が大切です。
非言語メッセージを大切にすること
子どもが話す言葉には,気持ちとはうらはらな言葉がたくさんあります。
「あの子たちといるといつもケンカばっかり!一人でいる方がマシだし」と話す子どもの本当の気持ちはどのようなものでしょうか?
俯いて,涙を流しながら,暗い部屋で一人,弱々しい声で,この言葉を言ったならどうでしょう??
少し吹っ切れたような様子で,力強い大きな声で,一人教室で勉強道具を
出しながら言ったとしたらどうでしょう??
非言語メッセージとは,「態度」「表情」「声」「様子」などからキャッチできます。
非言語メッセージから,発した言葉の裏にある本当の気持ちを予想し,言葉かけを工夫することが大切です。
理解を伝えること
「今回の数学のテスト,何点だったの?」
「40点…」
「40点か…まだまだだね。間違ったところをしっかりやり直ししようね。」
「そんなの無理だよ!あんなに勉強したのに!!」
「それはやり方がよくなかったのかもね。」
「だってやり方なんてわからない!もう嫌!!」
「今回の数学のテスト,何点だったの?」
「40点…」
「そっか,それは悔しいね」
「うん…もう無理…頑張ったってムダだよ」
「たしかに,今回はいつも以上に頑張ってたもんね」
「うん,今回は50点は取ろうと思ってたのに…」
「そっか,今回は目標を決めてそれに向けて努力したんだね,すごいよ」
「でも,あと10点足りなかった…」
「うん,そこが悔しいよね。でも,この努力をムダにはしたくないよね」
「うん…だから間違い直ししてみようかな」
「いいね,ここでもう一踏ん張りできるなんて,頑張る力がついてきたね」
子どもの前向きによくなろうとする力を引き出すには,「感情」「ふんばり」「努力」などについての理解を言語化して伝えること,よくなるための力があなたにはあるというポジティブなメッセージを送ることが重要です。
”頑張ったけど,もっと頑張れ”という叱咤激励も悪くはないかもしれませんが,”よく頑張ったね,本当にすごいよ”という労いの言葉の方が,もう一息頑張ろうという気になるのではないでしょうか?
アイメッセージ(I message)
「子どもの言葉に耳を傾け,受容し共感して,頑張りを労って」は,たしかに大切だと思うけど,やっぱり足りないところは指摘して修正しないとダメなんじゃないか?
それは確かにその通りです!
何もカウンセリングでは全てを受け入れ,言うべきことも何も言わないというわけではありません。
ただ,「もっとこうすればいいんじゃないか」ということをどう伝えるかが肝心です。例えば…
「(あなたは)もっとやり方を見直して工夫すべきでしょ」
「(あなたは)友達とちゃんと話し合って解決すべきでしょ」
「(あなたは)まず部屋の整理整頓をしっかりしなさい」
これらは,相手が主語のユーメッセージ(You message)です。
「(私は)もう少しやり方を見直してみたらいいと思うけど,どう思う?」
「(私は)友達とちゃんと話し合ってみるのがいいと思うけど,どう思う?」
「(私は)まずは部屋を整理整頓すれば勉強もはかどると思うけど,どう思う?」
言っている内容は同じかもしれませんが,主語をあなたから私にし,「どう思う?」と相手に判断を委ねることで,自己決定や自己責任を促すのです。
これがアイメッセージ(I message)です。
ユーメッセージには,「だって…」がつきものですが,アイメッセージでは,子どもが自分ごととして考える余白ができます。
この考える余白が,子どもが本来もつ前向きによくなろうとする力を引き出すのです。
さて,今回は少し長くなってしまいましたが,最後までお付き合いいただきありがとうございました。
カウンセリングマインドを意識して,子ども(だけでなく大人も)のよくなりたい気持ちを引き出し,成長を支えられるといいなと思いますが,あなたはどう思いますか??