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スタッフ全員が半分教育×半分ナリワイの複業型。いろんな大人が関わり、地方の子ども達の世界を広げる。

山梨県韮崎市を拠点として、「暮らし」や「仕事」をつくってきた西田遙さん。現在はプロジェクトデザインを生業として、NPO法人河原部社と合同会社Hudanを経営されています。

NPO法人河原部社の事業の一つとして取り組んでいるのは、中高生の居場所であり進化の起点となる拠点「青少年育成プラザ Miacis(ミアキス)」の運営。そこで働いているスタッフは、それぞれがフリーランスや経営者としての顔を持っていると言います。

事業立ち上げまでの経緯やミアキスを通じて実現したいこと、西田さんが思い描くキャリアについて伺いました。

旅をしながら多くの人や地域に触れた経験が、自分の価値観を知るきっかけに

——  どのような大学時代を過ごされたのでしょうか。

大学3年生頃から「学生時代にできることは何だろう」と考え、起業したり団体を立ち上げている人に会いにいくようになりました。国内外を旅する中で、300人くらいの方に出会ったと思います。

ヒッチハイクをして車に乗せてくれた方に話を聞いていく中で、「ローカルで暮らしを大切にしながら、自然の中でストレスなく仕事をしている人ってかっこいい」と思うようになったんです。

旅を終えてからは地元の山梨で学生団体を立ち上げました。活動する中でいろんな世代の方と関わりましたが、特に関心が強かったのは若者との関わりです。

—— 大学を卒業してからは、どんなキャリアを歩まれたんですか?

大学卒業後にやりたいことが明確にあったわけではありませんでした。どの企業で働くかや誰と働くかよりも、僕にとってはどこで暮らすかが大切だったんです。世界や全国を回って住む場所を決めてから、その地で仕事をしようと思いました。

人って、働くために生きているわけではないですよね。人間以外の生き物も、自分の住処を探すところから始めます。いいなと思うところに住んで、そこで営みを起こすことが自然だろうなと思っていました。

住む場所探しをして辿り着いたのが、山梨県北杜市にあるラジウム温泉郷という場所でした。自分より先に移住していた30代の方がいたんですが、その方とは時々一緒にご飯を食べながらやりたいことを語り合っていて。

その中で話が盛り上がって、一緒に会社をつくることになりました。プロジェクトデザインを生業にして、空き家を使って居酒屋併設の釣り堀をつくったりしたこともあり、半分遊びのような感じでいろんな事業を立ち上げました。

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地元の新プロジェクトに参画。中高生のための拠点づくりへ

——  そこから、どのような経緯で「青少年育成プラザMiacis(ミアキス)」の立ち上げに至ったのでしょうか。

当時住んでいたところは地元cの韮崎市まで30kmくらいの距離で、なんとなく地元でも何かやりたいなと思っていました。その中で、中高生のための拠点をつくろうとしている人がいると知ったんです。面白そうだと思って、「自分もやります」と手を挙げました。

あるとき立ち上げメンバーの方から「市長さんへのプレゼンの練習をしているから見に来て欲しい」と言われて見に行きました。そのプレゼンを聞いた瞬間に「あ、これは面白そうだな」と思うと同時に「もっとよくできる!」と直感し、気になるところを手直しして、翌日自分も一緒に市長さんへプレゼンをしに行きました。

そこで事業の話をしたら市長さんがやる気になってくれて。韮崎市からの委託を受けて、本格的にNPO法人河原部社としてミアキスを立ち上げていくことになりました。

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ミアキスは、地域の大人と子どもの「つなぎ役」。

—— ミアキスでは、具体的に、どのようなことをされているのでしょうか。

最初の1年で中高生との関係をつくり、2年目以降に企業や学校、地域との関係をつくっていきました。韮崎市には中高生が約3000人いるんですが、多い年では延べ人数で約2000人の生徒が登録をしミアキスを利用しています。

中高生を見ていると、親と先生以外の大人と関わる機会が圧倒的に少ないと感じています。中高生が地域の大人と繋がって、通学の途中で会ったら会話するような関係性がつくれるといい。ミアキスでは地域の大人との関わりを増やせるような、「つなぎ役」ができればいいなと思っています。

特に力を入れてきたのは、中学校で実施するキャリア教育の授業をコーディネートすることです。学校のキャリア教育の一環として、中学2年生の夏に2日間の職場体験をするんですが、それまでは生徒と企業のマッチングが上手くできていませんでした。

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体験先の企業は生徒が自分で見つけることになっているけれど、企業との繋がりがなく、希望とは関係なく保護者の知り合いの企業に体験にいくケースも少なくありませんでした。企業としても、「受け入れてもいいけど、何をさせていいかわからない」という悩みを抱えていました。学校の先生も生徒一人ひとりの話を聞いてマッチングするのは大変です。

三者みんなの満足度が低かったので、「じゃあ代わりに自分たちが」と言って始まりました。まずは市内にある約1400社の企業に連絡して、キャリア教育の趣旨を伝えて協力をお願いするところから始めました。その後、学校の先生や生徒、企業や地域の方を集めて、「韮崎の理想的な職場体験」について考えるワークショップを開催しました。そこで意見交換をしながら方向性を固めていきました。

今年は生徒たちに行きたい職場についてのアンケートに答えてもらい、それを元に生徒一人ひとりと25分間の面談をしました。例えば、「カフェで職場体験がしたい」と書いてあっても、カフェのどんなところに興味を持っているのかはわかりません。人と接するのが好きなのか、インテリアに興味があるからなのか、料理に興味があるからなのか。そこを面談で聞いていきます。

将来なりたいものと今体験したいことが同じじゃなくてもいいと思っているので、「将来のために今見ておきたいことはある?」と聞いたりすることもあります。

そして、「こういうことを体験したい生徒が入るんですけど、協力してくれませんか?」と企業に営業していきます。今年は300〜400社に営業して100社くらいの企業が受け入れを了承してくれました。そうやって、生徒と企業をマッチングしていきます。

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今は韮崎市の職場体験ハンドブックを作ろうとしています。企業も一緒になって職場体験のあり方を考えていけるようなプログラムにしていけると良いなと思っています。

—— 働くイメージが具体的にわくことは、とても大事ですね。職場体験のコーディネートをする中で、印象的だったことはありますか?

旅館に職場体験に行った生徒が、「職場体験が終わった後もお手伝いで仕事をやらせてもらってもいいですか?」と聞いてきたことがありました。話を聞くと、旅館の女将さんが妊娠していて大変そうだったから、と。女将さんも喜んでくれて、学校にも確認して夏休み期間中にお手伝いすることが決まりました。

職場体験をきっかけに、ミアキスに来てくれるようになった中学生もたくさんいます。職場体験が終わった後もコミュニケーションを取り続け、必要に応じてキャリアづくりに関われるのは、ここの良さだと思います。

教育と自分のナリワイ、半々ずつの働き方を増やしたい

—— ミアキスで大切にしている考えを教えてください。

「子どもを育てよう」という認識はあまりありません。町に住んでいる大人が自分のやりたいことやっている姿をそのまま見せることで、子どもは勝手に真似をしながら学んでいくと思っています。

ミアキスの運営を担う河原部社で掲げているコンセプト「やって、みせる。」にはそんな思いが込められています。年齢が若いほど、人は何者にでも変化し得る可能性を秘めていると思ってるので、その変化のきっかけを提供するのがミアキスでやりたいことです。

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子ども達のきっかけを増やすために、正社員のスタッフでも、週3日だけミアキスで働いています。フリーランスか自分で会社経営をしている人が多く、桃農家の人もいるし、デザイナーもいるし、宿泊業をやっている人もいます。

ミアキスのスタッフは基本的に受付にいるのですが、それぞれが自分の仕事を持っていて、いろんな言葉を持っています。子どもたちにとっては、さまざまな生き方や働き方、考え方に触れるきっかけにもなると思っています。

「教育がしたいからミアキスに来た」という人はあまりいません。みんな「子どもと関わりたい」という気持ちはもちろんあるけれど、それ以外にもやりたいことや興味のあることがあるんです。河原部社ではミアキスの他に、ローカルメディアの運営や地域で新しい教育を構想していくプロジェクトに取り組んでいるので、スタッフにとってもいろんな機会を提供することができます。

週3日で正社員として働けるようにしているのは、他にも理由があります。ミアキスは、基本的には子どもたちとも親しみやすい20,30代の若い世代で運営していきたいと思っていますが、その世代は結婚したり子どもが生まれたりする人が多く、お金がかかる時期です。

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多くのNPO法人は、給料が一般的な企業より低くなっているところが課題だなと思っていて、事業に興味があっても金銭面でその選択ができないのはもったいないなと。スキルがあったり優秀な人に入ってもらうためにも、河原部社では給料や福利厚生は普通の企業よりも良くしたいと思っています。

実力のある人に入ってもらうことで一緒に事業をつくって利益を出し、稼いだお金を中高生に還元したいです。

—— ご自身の今後のキャリアについては、どのように考えていますか?

ミアキスは若い世代の子がスタッフとして関わっている状態をつくりたい。自分がずっとそこにいるのではなくて、これから数年間は徐々に下の世代に引き継いでいきたいと思っています。ミアキスには今とは違う立場として関わりつつ、自分は自分の事業をやっていきます。

暮らしに興味があるので、同じ哲学を持った人同士が集まって暮らしをつくっていくようなコミュニティをつくりたいと思っています。その地域で協働しながら子育てができるような暮らしを実践したいです。

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—— 「学びを変える」を仕事にしたい方へ、メッセージをお願いします。

住んでいる地域や生まれ育った家庭の状況を見ると、子どもたちが育つ環境は平等ではないなと思います。それに対して、できることはたくさんあります。自分たちの場合はたまたま行政から委託を受けて公的なサービスとして地域の教育に関わっているけれど、手段はそれだけではありません。

企業や学校現場などでも、教育を変えていくことはできると思っています。大人たちが自分に何が向いているのかを考えて選択していくことで、子どもたちはその姿を見て学んでいく。頑張りすぎず、自然と周囲に良い影響を与えられる大人が増えていくといいなと思っています。

——  西田さん、ありがとうございました!

西田遙(にしだ・はるか)
山梨県韮崎市出身。山梨大にて野外教育を学ぶ傍ら、国内外ヒッチハイクの旅や学生活動に注力していた。現在は韮崎で中高生と社会との交差を生み出すNPO法人河原部社と、全員複業型で仕事を通して暮らしを作っていく合同会社Hudanを運営している。NPO法人河原部社では「やって、みせる。」をポリシーに掲げ、「NPO×自分の生業」という複業スタイルの働き方が特徴的。主な事業は、公共事業への若者参画(行政との協働)を始め、中高生支援、若者支援、ローカルメディア運営、キャリア教育プログラム開発、クリエイティブデザイン。ミアキス元施設長。プロフィール詳細はこちら

西田さんより・スタッフ募集についてのご案内

河原部社では「地域おこし協力隊」として韮崎に移住して一緒に活動してくださる方を2名募集しています。「教育がしたい!」という方よりは、自分たちと同じく、この場所に暮らしながら若い世代と関わり、「教育×自分の生業」を実現していくことに意欲がある方に向いているかもしれません。ミアキスでは随時見学も受け付けているのでふらっと遊びにいらしてくださってもOKです!求人について詳しく知りたい方は、直接の連絡も受け付けています。メールアドレスはこちらから。

参考:昨年の募集時の記事はこちら。協力隊メンバーの声が掲載されています。



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