こども主体の学びの場をどうつくる?体験ワークショップ&トークライブ 開催レポート
2月9日、「子ども主体の学びの場をどうつくる?」体験ワークショップ&トークライブを開催しました。あっという間に満席になり、多数のキャンセル待ちが出るなど大人気だった本イベント。当日45名の参加者のうち9割が教育関係者で、特に小中学校の先生が多く参加してくださいました。
ナビゲーションの3つのステップを体感する
第1部は、Q責任編集者でもあり、ラーンネット・グローバルスクールで探究型の教育を20年以上実践してきた炭谷俊樹による「探究ナビ講座」の体験ワークショップ。
炭谷は、子ども一人ひとりが本来もっている好奇心・探究心を引き出す教育を「第3の教育」と名付け、子どもの主体的な学びを促す役割を担う人を「ナビゲータ」と呼んでいます。「探究ナビ講座」とは、そんなナビゲータの考えを学び、実践できるようになるための講座です。
最初に第3の教育、ナビゲーションの3つのステップについて学んだ後、グループに分かれて「知る・感じる」のワーク。互いのいいところを知り、場の雰囲気が明るくなります。その後、講座でも好評の大人役や子ども役になりきるロールプレイを体験しました。
子どもの気持ち、大人の気持ち、そしてナビゲーションの3つのステップを活用するとどう子どものやる気が変化するかを体感した参加者からは、「親の態度によって、子どもの気持ちが大きく変わることがわかった」という感想が。
子どものやる気を引き出す、それぞれの工夫
第2部は、新渡戸文化小中学校・高校の山本崇雄さん、立命館小学校の正頭英和さん、炭谷によるトークライブ。
それぞれの自己紹介を行った後、炭谷からの「学校で新しい取組みを始めるのは、とても大変だという声をよく聞きます。2人が新しい取組みを進める上で、工夫したことや大事にしたことは?」という問いから、ディスカッションがスタート。
「生徒が学校を楽しいと思えること、そしてその生徒の変化を見て保護者が変わってくることで、新しい取組みを進めることができる」と山本さん。正頭さんは、それに加え同僚の先生との信頼を築くことを大事にしてきたと言います。
「最近やりたいことがないという子どもが多いと聞きますが、子ども達のやる気を引き出すうえで、工夫していることは?」という問いに対しては、2人それぞれの興味深い回答が。
山本:日本の制度に問題があると思っています。子ども達が「やりたい」を見つけられる機会が本当に少ないです。学校の朝の過ごし方、時間割り、放課後の過ごし方も、全部決められている。選択する自由と、自分で決める意志を持たせることが必要だと思います。自分の生活は自分で選択できること、その選択の結果には自分で責任をもつこと、その選択の連続で自分の人生が作られていくことを教えることが大人の役割かな。
正頭:日本人は「やり始めたらやめるな」とよく言いますが、それがチャレンジを阻んでいる現状があります。子どもはすでにたくさんやらされている中で、やり続けることを求められたら新しいことを始められない。日本人に必要なのはやめる勇気。そして何を与えるかではなく、何を与えないか。授業も「今の内容から、何をやめられるか」を考える。「やめられることたくさんあるよ」と思えたら、そこから変われる。
教員、保護者、塾講師。ごちゃ混ぜのグループディスカッション
最後は、山本さん・正頭さん・教育ジャーナリストの中曽根陽子さん・炭谷の4つのグループに分かれてディスカッションを行いました。それぞれのテーマは「子ども主体の学び」「ICT教育」「受験と入学後の探究的な学びの接続」「子どもの探究心の引き出し方」。
教員と保護者がごちゃ混ぜになってディスカッションできる、貴重な場。「学校のリアルな姿を知りたいがなかなか見えない」という保護者と「保護者が学校のどこを見ているかが気になる」という先生が意見を交わすグループもありました。
また、「学校と保護者がいかに信頼関係をもって連携していけるか」に話題が広がるグループも。学校が社会に開かれた場になる第1歩として、保護者と教員が一緒に探究する場が求められているのかもしれません。ディスカッションは盛り上がり、各グループで時間を越えて話し合う姿が見られました。
参加者からは「教員と保護者がお互いをけん制し合って、偏差値教育から抜け出せない現状がある。そこから一歩踏み出して、みんなで価値観を変えていく必要がある」「教員、保護者、塾講師など、様々な立場のメンバーで話し合えた。それぞれが自分の立場から自分の考えを話して理解を深め合うことができて、探究的な学びの場だった」という感想が。
探究メディアQは、参加者それぞれが自身の「教育探究」を深めていける場になるイベントを、今後も開催していきます。今回参加できなかった方も、ぜひまた機会を見つけてご参加いただければと思います。
(※当初パネリストとして参加予定だったカタリバの今村久美さんは体調不良で不参加となったため、一部プログラムを変更して開催いたしました)
(文:齊藤 香恵子、写真:玉利康延、編集:田村真菜)