「私立小学校とオルタナティブスクールはどう違う?」「うちの子に合うスクールの選び方は?」Q&Aに探究メディアQ編集スタッフが答えます。
「オルタナティブスクールって最近増えてきているみたいだけど、新設校と老舗、どっちがおすすめ?」「うちの子は発達特性があるけど、おすすめのスクールってある?」「自由や探究をアピールしている私立小もあるけど、オルタナティブスクールとどう違うの…?」
探究メディアQをお読みいただく保護者の方から、ここ数年、そんな質問をいただくことが増えてきたように思います。この記事では、ひとりの保護者としても公立小・私立小・オルタナティブスクールを子どもと一緒に複数見学してきたという、探究メディアQ編集チーフの田村が、よくある保護者の質問について考えてみました。
●老舗スクールと新設スクール、どっちがおすすめ?
老舗のオルタナティブスクールは、カリキュラムが長年の実践や見直しを経てこなれていたり先生たちが運営に慣れていたりと、安定感があります。私立小学校では創立100年超という学校もありますが、オルタナティブスクールは新しい形態でもあり、だいたい設立15〜20年超のところは「老舗」にあたる印象です。スクールの卒業生がどこに進学して、社会人としてどんな進路を歩んでいるかをスクールのスタッフや先輩保護者に聞けたり、卒業後の道筋にイメージがつきやすいのも魅力の1つです。
一方で、老舗であるからこそ創業から年月がたち、創業者が代替わりするなどのタイミングにさしかかり、学校の雰囲気が途中で変わることもあります。また都市部では入学希望者も増えてきており、知名度の高いスクールは私立小学校のように入学選抜の倍率が高いこともあります。「希望したけど入れなかった」というケースも家庭で想定し、どうするか考えておくとよいでしょう。
新設のオルタナティブスクールは、子ども・保護者含めて自分たちが1期性や初期メンバーとして、「一緒につくりあげていく」体験ができるのが魅力だと思います。老舗のスクールは定員が埋まってしまっており、小学校で不登校になった子どもの途中入学は難しかったりしますが、新設スクールだと途中入学がしやすいというメリットもあります。
一方で、立ち上げたものの集客や資金繰りがうまくいかず運営が立ち行かなくなってしまったというスクールも、残念ながらゼロではありません。子どもや保護者にとって、せっかく馴染んだスクールが途中でなくなってしまい、別の通い先を探さねばならなくなるのは大変なことです。経営状況なども、ぜひ説明会等で尋ねてみてください。
●うちの子に合うスクールは、どう判断したらいい?
オルタナティブスクールへの進学を検討する家庭には、大きく分けて2つのタイプがあるように思います。1つは、「子ども自身は一条校でも楽しめそうだけど、子どもにとってよりよい教育を探したい」という家庭。もう1つは、「子ども自身の特性や好みにより一条校では馴染めなさそうである(または馴染めなかった)ため、子どもに合う教育を探したい」という家庭です。
どちらのタイプのご家庭が多いか・どういう子どもを積極的に受け入れているかは、スクールによってそれぞれの傾向があります。活発でまわりとワイワイ楽しみたい子向きのスクールもあれば、じっくり一人で考えたい子をゆっくり見守ってくれるスクールも。ある子にとっては最高なスクールでも、ある子にとってはそうじゃないことも、たくさんあります。
説明会や現地見学などで、「どんな理由で通うことを決めたご家庭が多いですか?」「うちの子はこういう特性なのですが、そういった子も在籍していますか?」などをしっかり確認することをおすすめします。基本的には、多くのオルタナティブスクールではスタッフの加配や特別な個別支援はできないことが多いです。ただ、ルールがゆるやかだったり自分の進度で学習を進められたりするスクールが多く、大人数の集団教育にはうまく馴染めなかった子が楽しく通えるケースもあります。
「こんなことを聞いたら面倒な親に思われるかな?」と思うようなことでも、事前に聞いておきましょう。入学後に「やっぱりちょっと違うかも…」となるよりも、事前に「合わない」と分かることが家庭にとっても大事ですし、スクールにとってもありがたいと思います。
また、スクールの見学は基本的に平日なため、働かれている保護者にはちょっと大変かもしれませんが、可能な範囲でお子さんと一緒に見学に行ってみるのがおすすめです。一般的に私立小受験などは親が学校を選ぶことが多いですし、「幼児が、自分でスクールを選べるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、幼児であっても自分が楽しめる環境はわかると思います。複数スクールを見学する中で、子どもの好みや譲れない条件なども見えてくると思うので、子どもと一緒に表にまとめるなどして比較するのもいいですね。
また、子どもにとっていいかだけでなく、保護者にとっての負担やカルチャーが合うかもチェックしてほしい点です。子どもにとってはすごくいいスクールだけど、引越しが必要で保護者にとっては負担が大きかったりすることもあります。保護者が自身を犠牲にしすぎると後々辛くなってしまいます。環境変化も含めて、保護者も一緒に楽しめそうかも大切にしてほしい点です。
●自由や探究をアピールしている私立小学校もあるけど、オルタナティブスクールとどう違うの…?
私立小学校は、法律で認められている「学校教育法第一条で規定されている学校(通称:一条校)」です。学校によって弾力的な運用をしており自由度が高いところもありますが、一条校のカリキュラムは、基本的に文部科学省の学習指導要領に従っています。教員も、特別非常勤講師等をのぞき、全員が教員免許を取得しています。
オルタナティブスクールは学習指導要領に準拠する必要がなく、カリキュラムの自由度や学びのスタイルがもっと多様です。子どもに教えるスタッフも、教員免許を持っていない場合も多くあります。「自由」や「学び」の考え方もそれぞれのスクールによって違い、「型を学ぶ」ことを大切にするスクールや、自らやりたくなるまで科目の勉強を強制しないスクールも。自由度が高いからこそ、保護者も子どもも、自分たちに合うスクールを見極める必要があります。
またオルタナティブスクールに通う子どもは、基本的には自分の居住地域の小学校に籍を置きます。オルタナティブスクールへの出席が在籍校の出席扱いとなるかは、在籍校の校長先生が判断します。出席扱いの要件は文部科学省が定めており、多くの地域で出席が認められるようになってきていますが、なかにはまだオルタナティブスクールに懸念を持っている校長先生もいらっしゃるかもしれません。欠席日数の規定があるような中学の受験などを考えているという場合は、出席の扱いがどうなるか自分の地域の学校の校長先生や教育委員会と話し合っておくことをおすすめします。
また、最近では地方で学校法人をつくり、探究型の私立小学校を新設で立ち上げる動きも見られます。現在はオルタナティブスクールだけれど、ゆくゆくは学校法人を目指しているというスクールもあります。また私立でなければ面白い教育ができないということではなく、筆者が見学した地方の公立小でも、人口減少を逆手にとって少人数学級で体験重視の教育を行っている学校もありました。
一条校とオルタナティブスクールの垣根は今後少しずつ下がっていくと思いますので、法人の種別や公立私立にとらわれず、教育内容をしっかり確認していくことをおすすめします。
●スクールの情報収集は、どのようにすればいいの…?
手軽なのはオンラインです。スクールのウェブサイトを見るだけでなく、スクールの代表の方のSNSをチェックしてオンライン講演情報などがあれば参加してみたり、インタビュー記事を読んでみたりして(探究メディアQでもいろんなスクールの紹介記事や探究型の学びの場で働く人たちのインタビュー記事をまとめています)、どんなスクールかリサーチしていきます。スクールや代表者が書籍を出している場合もあるので、目を通してみるとよいでしょう。
いくつか興味のあるスクールが見つかってきたら、スクールの発表会・見学会・サマースクールなどで現地を訪れてみて、候補スクールを絞り込むのがいいと思います。スケジュールとしては、選考が早めのスクールでは年長の8〜9月頃から出願時期となりますので、年中からリサーチや子どもとの見学などを少しずつ進め、ご家庭で条件などを整理し、年長の夏頃までには候補スクールを固めていくというのが一般的な流れです。
保護者はもっと早い時期から情報収集をしておく形でもいいかもしれませんが、「こういう学びがいい」という子ども自身の希望や特性がはっきりしてきたり、スクールを比較したりできるようになるのは、年中以降かなと思います。「子ども自身が行きたいと思っているか」という点を選考時に大切にするスクールも多いので、保護者が「このスクールに行きなさい」と無理に押し付けないで、子どもの意思を見守ってあげたいですね。
上記のスケジュール以外でも、キャンセルが出て冬ごろに2次募集をしたり、年度途中からの入学を受け付けているスクールもあります。スクールのSNSをこまめにチェックしたり、スクールに問い合わせて空き枠が出たら連絡をいただけるようにしておくといいかもしれません。
また、ご家庭で住みたいエリアが決まっている場合は「地名 オルタナティブスクール」「近隣駅名 オルタナティブスクール」などで検索すると、新設スクールの情報が出てくる場合があります。すでに1校目を運営しているスクールが、2校目・3校目を新しく展開するケースもあるので、周囲のオルタナティブスクール保護者等との情報交換も大切にしてほしい点です。
「行きたいスクールが希望エリアにない…」という場合は、自分でスクールを立ち上げてしまうツワモノ保護者の方もおられます。資金繰り・スタッフの採用など難しいこともたくさんありますが、クラウドファンディングで初期費用を集めて立ち上げにのぞむスクールなどもあるので、本気でやりたい方はぜひチャレンジしてほしいと思います(探究コネクトではそういった方のサポートも行っていますので、ぜひご相談ください!)。
●11/15に、オルタナティブスクール11校が集まるフェスを開催します!
現状、日本ではまだまだオルタナティブスクールという選択肢を知る機会が多くはありません。「子どもが不登校になってから別の選択肢を探す中ではじめて知ったが、もっと早く知っていたら」という保護者も多い状況です。
探究メディアQでは今回、オルタナティブスクール・ジャパンと連携して、オルタナティブスクールフェス2024を保護者向けに開催します。首都圏はもちろん、北海道から九州の老舗から新設校までさまざまなスクールが一同に揃い、まとめて話を聞けるチャンスです。
「こういうタイプのスクールがうちの子にはいいのかな?」「この学校、はじめて知ったけど意外とおもしろそう!」という新たな選択肢を考えるきっかけになれば嬉しいです。どのスクールも保護者・子どもの見学なども受け付けていますので、ぜひ気になるスクールをここで見つけてみてください。