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うるせえよ放っておけ

BESSの展示場に行ってきた。BESSとはログハウスを扱う住宅メーカーで、関東圏にも9箇所の展示場がある。といっても、大学生の僕が家を買えるわけがないので、社会見学のつもりで訪れた。

その展示場には敷地内に5棟くらいのログハウスがあって、全て自由に見学することができた。最初に最低限の個人情報は記入しないといけないが、その後は特に営業されることもなく放っておいてくれたので、のんびり家々を巡ることができた。

同じメーカーのログハウスだから、基本的なつくりや内装の雰囲気はどれも似ているのだが、なんとなく落ち着く家とそうでない家があるからおもしろい。




何気なくインスタで「マイホーム」と調べてみると、大量の動画やら投稿やらが出てくる。「神リビング」「褒められ玄関」「これだけはやっとけ」などなど。いつまで経っても、情報は我々を離してくれないみたいだ。

人生の全イベントにいちいち情報が溢れかえっていて、「これに従ったらうまくいく」みたいな道筋が提示されることも多い。妊活や受験、子育て、さらには終活にまで。そして、うまくいかなかった人には「ちゃんと道筋が示されていたのに失敗するなんてお前が悪い」みたいな自己責任論が振りかざされる。

妊活や受験は、「子を授かること」や「合格」といった同じ目標に全員が向かう側面が強いからまだいいにせよ、マイホームは成功の基準が人によって大きく違う。こだわりを詰め込んだ家を建てたけど、満足できずに売却して賃貸に戻った人も僕は知っている。綺麗事かもしれないけど、どれだけ住みやすくて愛着を持てるか、その2点に尽きるのではないか。




ちなみに、僕が住み心地が良い家を思い浮かべる時、それは実家だった。エアコンはついていないし、冬は毎朝雪かきしないと道路まで出られないような家だが、それでも住みやすさと愛着ではどんな豪邸も敵わない。

同じ理由で、東京と地元以外の第3の街に住むイメージが湧かない。他の街を訪れてみても、東京や地元と比べてしまう。その東京すら今後何年も住み続けられる気がしないから、結局のところ僕は生まれ育った土地でしか満足できないのだろう。

でもそれは幸運なことだと思う。理想の家として実家を挙げられること、理想の街として地元を挙げられることは、周りの人たちを見ている限りそれほど一般的ではない。不便すぎる地元が嫌いだったり、親や人間関係が嫌いだったりする人はけっこう多い。




こんな調子だから、僕は海外で暮らすことにまったく憧れがない。もちろん海外に興味を持つも持たないも自由だけど、留学から帰ってきた人が語る海外のキラキラ感もわからないし、日本がオワコンだから海外を見たいという気持ちも湧かない。僕は根っからの農耕民族のようだ。

「海外暮らしに興味がない」と口にすることは、なんとなくタブー視されている気がする。「海外大に進学したい」「海外で仕事をしたい」みたいなことは意欲的とか視野が広いなどとポジティブに受け取られがちだけど、「海外に興味がない」というと知的好奇心がないとか向上心がないなんて言われてしまう。

でも僕はエドシーランが好きだし、アメリカの映画も好きだし、韓国の文学も好きだ。溢れんばかりの知的好奇心もある。ただ、ひとたび何かに愛着を持ってしまうとなかなかしぶとい。もっと歳を取ったら、若者たちからいろいろな話を聞いてニコニコする、そんな古老的ポジションを確立したい。


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