中崎タツヤ著『もたない男』を読む。
私は漫画は読まない。絵よりも文字を読みたい方だ。だからブックオフでこの本を手に取った時も著者が漫画家であることは知らなかった。
ではなぜ購入したかというと、最初のページの写真に惹かれたからだ。まったく何もない部屋に四角い枕がひとつだけ置いてある。
ちょうど引っ越しを考えていて、断捨離を断行しようと決意していた時期だったので写真のような何もない空間にあこがれていたのだ。
この本の最後に「断捨離」の著者やましたひでこさんの対談が載っている。その中で山下さんは
断捨離とは無自覚、無意識、無感覚からの取り戻しです。……何も感じなくなっている状態からの脱却
なるほど、深い意味があるのだ。確かにこのような状況に麻痺してしまう感覚は怖い。
最近の政治の嘘や言い訳、マスメディアの垂れ流しは、もうどうにかしてくれと思うが、その状況にだんだんと流されていく自分をふと感じると怖い。断捨離とは物質だけでなく、データや情報に対しても必要なのである。
それにしても徹底している。読んだ文庫本は2、3ミリの厚さ分読んだらビリビリと破り捨てるのだという。表紙も破り、背表紙もどんどん薄くなっていく。その様子がイラストで描かれている。
そうであるなら、この本自体も読み進めるたびに破り捨ててみようと思ったが、そもそも本を破り捨てた経験が私の一生の中で一度もないことに気がついて、やめた。
ボールペンのインクが減ったら、その分だけノコギリで切り落として短くするという奇行も描かれている。
良いところは、そのような方法をこうあるべきと人に教えこまないことだろうか。新書や教示的な小説、それにTwitterの教え込み方に飽きた人にはとても良い清涼剤だ。
それにしても、私たちはどうしてこんなに流されてしまうのだろうか。この人の流されない生き方のその足はきっと丈夫で、しっかりと大地を踏みしめているのだろうと思うが、絶対にそういうことはなく、自分の足でさえ切り落とした人がここにいる。
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