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ひらかわ ひろこさんの場合

『乳』

一緒に暮らしていた父方の祖母。
思い出されるのは、お風呂の時にいつも見ていた豊かな乳。
当時としては少ない2人の子どもを育てあげた祖母の乳は、美しく温かく優しかった。
幼いながらも、祖母そのもののように感じていた。

今、私自身が子に乳をあげる立場にいて、母とは、祖母とは、育むとは、なんと幸せなことか。乳があって、よかった。
祖母は、亡くなる数年前から認知症により、赤ちゃんのように無邪気になった。
あぁ育んできた乳も育まれる赤ちゃんに還ったんだなぁ。
祖母の歯の抜けた無邪気な笑顔を思い出す度、安心のような後悔のようなザラリとした気持ちが湧き上がる。

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