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【新規事業担当者がすぐ使える】気になるスタートアップ企業の「キモ」解説:IVRy(クラウド型電話自動応答‐IVR‐SaaS)

こんにちは!NEWhで新規事業の伴走支援をしている谷口です。
今回も気になるスタートアップ企業について、掘り下げてみたいと思います。

新規事業創出にまつわるステージで、個人的に興味深いのが「アイデアの着想とそのきっかけ」と「シードからどう芽吹かせるか」、「それをどう判断するか」という3つです。

今回はそのヒントがたくさん詰まった、1日100円から利用できる電話自動応答サービス(IVRシステム)を手掛けるIVRy(アイブリー)に注目してみました。新規事業のフレームワーク「バリューデザイン・シンタックス」を使いながら、どこに強みや特徴があるのかを見ていきながら、最後に日々取り組んでいる新規事業を確度高く進めていくために、真似して役立てられるポイントを抽出してみたいと思います。


今回のサマリー

IVRyはどんな会社?

企業に電話を掛けるとよく耳にする「XXの方はX番を押してください」という自動音声案内あのサービス(IVR)を、町の飲食店やクリニックなどの中小企業経営者の方でも使えるように安価に、そして誰でもカンタンに自分で設定できる電話自動応答サービスをSaaSで提供されています。

違和感なく普段耳にしている自動音声案内ですが、実は汎用的なサービスやプロダクトではなく、主流はシステム会社がひとつひとつカスタムで開発していて、1本開発するのに数百万もかかるという代物なんです。

必然的にこれを導入できるのは大企業が中心になっていて、これを使いたくても使えなかった、個人事業主や中小企業に対して1日100円で提供し、大きな反響を呼んでいます。

どうやってこのサービスを着想した?

代表の奥西亮賀さんはリクルート出身。学生時代から起業を考えていたそうで、リクルートで起業にまつわるノウハウと経験を積み、会社員4年目に奥西さん個人あてに外部から届いたシステム開発依頼をきっかけに、2019年に前身となる株式会社Peoplyticsを起業します。

当初はシステム開発が中心だったそうですが、すぐに自社プロダクト開発にも取り組み始め「毎月1つの新サービス立ち上げ」を繰り返して、7番目にできたのがこのIVRyだったそう。

着想は奥西さん個人の原体験で、法人登記していた個人の携帯電話に日々かかってくる営業電話に辟易して、すべての電話に出ずにスルーしていたところ、そのなかに銀行からの融資に必要な本人確認の電話が含まれており、審査に落ちてしまった経験から

抱えている課題は「必要ない電話だけに出たいが、それをカンタンにできる手段がない」ということでした。

どうやって芽吹かせた?

この課題に直面して改めてIVRのサービスについて調べたところ、先のようなカスタマイズ開発でしか提供されていないことがわかり、なぜ安価で提供できるサービスがないのかその理由は「中小の幅広いニーズにすべて応えるプロダクトづくりが難しい」ことと突き止めた奥西さんは、早速スクリプトを書いてMVPを作り、プレスリリースとリスティング広告をかけて、CPFとPSFを実地で試します。

ここですぐに反響があり、「すぐに使いたい」と問い合わせが入ったことで、確信の度合いを高めたそうです。念入りに調査して、MVPの要件を定義してプロトタイプを作り、テストして…とやるのではなく、いきなり世に問うた格好ですね。

どうやってPMFとGo to Marketを判断した?

初手で好感触を得てから、PMFと本格的な資金調達と投資をどう判断したのか、という点はとても興味深いところですが、ひと言でいうと「事前に定量で決めていた」ということでした。

どのKPIがPMFやGTMのレバーで、どの基準を超えたらOKと判断するのか、事前に考えられていたとのこと。なかなかスタートアップの段階にある組織で、かつ良くも悪くも創業者や起案者の強烈な「認知バイアス」がかかりがちなところを、迷いなく良し悪しを判断できるように準備できるスタンスに違いを感じます。

バリューデザイン・シンタックス(VDS)でみてみると

コンセプト

コンセプト

ミクロなシーンとして想像しやすいのが、自身が手を動かしている個人経営のお店やクリニックかと思います。ラーメン店や個人医院や歯科医院、美容室などもこれにあたるかもしれません。

この1分、この数秒の時間の手を止めて電話に出ないといけない。でも出たら長々しい営業電話だった…、その徒労感は推して知るべしでしょう。

これに自動で対応してもらえる、必要な電話だけをすぐに通知してくれて、後で聞きたいものだけを録音しておいてくれる、そのありがたみは相当なもの。

戦略

戦略

どこに差別化のポイントがあるのかと調べてみるとやはり「安価な料金」にあるようです。

B2B SaaSというと「オンボーディングが命」というイメージが強い方も多いところですし、実際その通りかと思うのですが、きめ細かい人員を契約直後に数か月充てて…とやっていると、1日100円は到底実現できません。

これまでベンダー諦めてきた多種多様な利用シーンとニーズ、個人個人のわがままな条件に応えつつ、「自分で誰の助けもなく10分と掛からず設定できてしまう」UXが大きな強みではないかと思います。

もう一つはAIの活用ではないでしょうか。
文字起こしの機能など、これまでは難しかったことが汎用AIによって容易に実現できるようになりましたが、この現在進行中のAIテクノロジーをキャッチアップして、プロダクトに活用しているところも違いを生む要因と考えています。

テクノロジーxマーケティングxクリエイティブを3つ揃えたスタートアップに、顧客の課題への理解や要望が集まっている、この状況はなかなか簡単に再現ができない障壁になっていると思います。

収支

収支

1日100円~という敷居の低さと10分と掛からない設定で、すぐに効果を実感できる体験設計から、周辺にある電話にまつわるアップセル機能の利用で客単価を引き上げていくモデルです。

同類のサービスは日本以外にもないようで、今後は海外展開も視野に入れているとのこと。

さいごに‐真似したい5つのポイントは?

IVRyに学べる、新規事業担当者が明日から真似できる要素としては次の5つが挙げられると思います。

・違和感を感じたら「問いを立ててみる」
先の通りサービスのきっかけは営業電話にまつわる面倒さ、不便さ。この違和感を当たり前のものとして受け入れずに、どうしたら解消できるか?なぜできないのか?という問いを立てられるかどうかが分かれ道ですよね。

・「新規事業はうまくいかなくて当たり前」のマインド
奥西さん自身あちこちで言われているのがこれです。
練りに練った構想を慎重に進めていくことも大切ですが、早く目に見えるカタチにしてしまうマインドも必要な要素かもしれません。

・市場に直接問うスタンス
スタートアップの起業家によく見かけるのが「まずプレスリリースを打ってしまう」というやり方。本当の意味でのMVPができたら、早々に世に問うてみて反響を見てから本開発に進む方法です。大企業にはなかなか真似しづらく感じられる部分ですが、参考にしたいところです。

・強みからの逆算設計
市場からの反響を分析してその強みが料金にあると踏んだ後は、「セルフオンボーディング」をどう実現するかにフォーカスしている点も見逃せません。ゴールとそこに到達するKSFを明確化して、実現方法にシンプルに集中することが確度をより高められる要因と感じました。

・ドライバーKPIと基準の明確化
経営目線から行くと、この部分がとても重要な点ではないでしょうか。
自分で自分を疑いながら、サービスを始める前に初動のKPIはどれで、その基準がどこで、超えたら次に何をするのかを準備しておく。判断に迷いなく、客観的に実行ができるシナリオを予め描いておくことはとても参考になるところです。

5つのポイント、どれもシンプルなことばかりですが、やり切れていないことも多いのではないでしょうか。成功の確度を少しでも高めるために積極的に真似をしてトライをしていきたいですね!

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