不快指数は高ければ高いほど解放された時にスカッとする『ソフト/クワイエット』
ネタバレ感想
初っ端から鉤十字はやばすぎる。ネオナチ婦人会によるアジアンヘイトはかなり胸糞だった。彼女らのヘイトクライムは調子に乗れば乗るほど、
事態の収拾がつかなくなったときの慌て様が痛快である。
オチの殺したと思ってたアジア人が実は生きてました、というのは少し控えめな気がした。密告、組織の解体、連行の辺りまでコテンパンにやってもらってもよかった気もする。
ワンカット長回しというだけあって序盤はウトウトしてしまったが実際の現場にいる様な臨場感を感じた。コンプラ的にも大分アウトで、予算が降りなかったのか、見た限りにもいかにもな低予算映画ではあるがよく出来ていると感じた。
怒りの矛先
婦人会の発起人であるエミリーは不妊治療を受けているが思うような結果が出ないことに対して怒りを抱いている。他の参加者も移民へのヘイト、学校教育へ懐疑心、前科持ちなどと自らの内に溜まったフラストレーションの発散を求めている人物が目立ち、その先にあるのがネオナチ的な思想である。彼女らは会合では白人至上主義を唱え、白人以外の人種は全て卑下した。そこには黒人もアジア人も関係なかった。ある種の被害妄想が彼女らに過剰な選民思想を産み、怒りの矛先を探させた。
そこで偶然居合わせたアジア人とトラブルになったため本編の様なヘイトクライムに及んでしまう。つまりは誰でもよかったのかもしれない。しかし一方で、黒人には勝てないがアジア人には腕っぷしでは勝てるという無自覚な差別意識もあるかもしれない。
無自覚の怖さ
彼女らの無自覚さは差別意識だけではなく、殺人を犯してしまい事態の収拾がつかなくなってしまっても自身には非が無いと思い込んでいる点に現れている。あくまで相手側の自業自得だと本気で思っているのが恐ろしく感じてしまう。
口を開けば自らの保身を第一に発する彼女らに、ざまあみろと思う自分がいる一方でその感情は本質的には彼女らと変わらないのかもしれない。