見出し画像

まっちゃん、今年は甲子園無いんだってよ。

私は高校野球を見に行くことが多いのだけれど、それは簡単に言うと、高校野球が大好きだった友達を自死で亡くしていることと無関係ではない。

 もう、15年くらい前になるのだろうか。私が京都でうだうだしていた時に、Aは友達になってくれて、彼も(多分)アスペルガーで友達も少なく、とても頭が良くて、協調性や社会性が無くて、高校野球と取手二高と相撲と稀勢の里と取手競輪が好きで、一緒にいくらでも野球や相撲の話をしていた。Aは大学を卒業して、東京の有名新聞社の記者になったんだけど、激務からなのか、人間関係なのか、おそらく休職をして、田舎で静養していた。

 ある時、共通の友人Bが鹿児島に来て一緒に遊んでいると、AとBが仲たがいをしているというので、私からAに電話をしてしばらく(取手競輪の)話をした後、Bに電話を代わった。Aは「今、話もしたくない」Bが突然電話に出たので、激怒し、すぐに電話を切った。

 それからしばらくして、Aが(おそらく)自死したことを聞いた。Bの話によると、長いこと連絡が無かったので、実家まで電話をして聞いたところ、お母様もはっきりとは言わなかったけれど、おそらく自死で間違いないであろうということだった(後にBがお墓参りをしています)。

 おそらくは、Aと最後に電話をした、友人と呼べるような相手は私とBなのだと思う。あの時電話を代わったのは間違いだったのだろうか(すぐに仲直りすると思っていた)。他に何かできることはなかっただろうか。後悔というのではない。起きてしまったことはもう起きてしまったことなのだ。

 私にできるのは、Aの分まで高校野球や相撲を見て、そうして、たくさんたくさん、現世で楽しんで生きる、ことなのだと勝手に思っている。

 まっちゃん、今年は甲子園無いんだってよ。


いいなと思ったら応援しよう!

谷川勝彦(たにかつ)
お読みくださりありがとうございます。 いただいたサポートは、NPO法人ルネスかごしまが行う「生活困窮家庭・ひとり親家庭支援」に全額使わせていただきます。