AirPods Proは引き算のAR
「AirPods Proを耳栓にしてるんですよ」
と言うと大抵の人に驚かれる。
音楽は全く聞かない。おでかけ中は常に装着、ひたすらノイズキャンセル。
雑音がないだけでこんなにストレスが減るのか、と最初は驚いた。
「雑音をなかったことにする」というのは、ある意味で現実を書き換えるということだ。一種の拡張現実と言えるよな......と思っていた。*
THE GUILDの安藤さんは、AR, VR, 身体拡張というワードでAirPodsを表現していた。
「AR」と聞くと、まっさきに視覚的なARを思い浮かべる人が多いと思う。
4年前に話題になったムービー「HYPER-REALITY」は、視覚的なARにまみれた日常を描いている。
ムービーでは、たくさんの視覚情報がオーバーラップしている。説得力を感じる一方で、個人的には、「引き算のAR」もあるんじゃないかと思う。
AirPods Proが聞きたくない音を消すように、見たくないものを消すARだ。
これを表す言葉はすでにあって、Diminished Reality(DR)というらしい。
どれだけ市民権を得ている言葉か分からないが、google scholarで見るといろいろな研究がヒットする。
Photoshopの「コンテンツに応じる」を、リアルタイムで現実世界にかける感じである。
企業サイドからすると、「路上にもARで広告を出したい、目立たせたい」という足し算のニーズはすごくよく分かる。
一方で、ユーザー側からすると、「臭い物に蓋をしたい」欲求も割とあるのではないかなあと思う。AdBlock系のChrome拡張があれだけ流行していたくらいだ。
広告に限らず、街を歩いていて不快なものが消せると、視覚的なノイズが減ってQOLが上がる気がする。
たとえば壁のグラフィティを消したり、朝の渋谷に落ちてる吐瀉物を消したりだとか(踏んじゃうから見えてた方がいいか)。
見たくないものの上に画像をかぶせる、という方法もあると思うけど、単なる置き換えだと視界に入る情報量は変わらない。
イメージとしては、嫌な匂いを芳香剤でマスキングするというより、小取材で臭い自体をなくしてくれるのがいい、という感じ。
視界から情報が消えるというのはとてもうれしいので、そういうテクノロジーが増えてくれるといいな。
* AirPods Proじゃなくても、ノイズキャンセリングできるイヤホン全般に言えることじゃない......?というのは本当にその通りです...