金子みすゞの世界『蚊帳』
金子みすゞは、100年前、童謡が大流行していた頃に活躍した詩人だ。
西條八十が選者をしていた『童話』という雑誌を、主な投稿の場としていた。
この『蚊帳』という詩は、八十が留学で渡仏した間、代理で選者をしていた吉江孤雁という仏文学者が選んでくれて『童話』に掲載された。
みすゞは、命を絶つ前に、書き溜めた詩を手帳に清書している。
その自筆遺稿と、雑誌に載ったのとでは表記が違うのだ。
雑誌の表記は、選者の手が入っていると私は観ている。
この2つの『蚊帳』、皆さんはどっちが掲載作で、どっちが遺稿だと思いますか?
そう!
上が遺稿で、下が掲載作です。
語順が違うと、こんなにも変わるのか!という感じですよね。
違うのは語順だけではないし、確かに掲載作は理路整然と整ってはいるのでしょう。
でも、蚊帳の中で寝ているワクワクが、消し飛んでしまっている。
上は子どものつぶやき、下は大人の詩、というぐらい違っています。
みすゞは、どう思っていたのでしょうね?
直されて明らかによくなっているなら、「さすが先生、勉強になりました」と有り難いですよね。
でも、「何で直されたかわかんないんですけど」だったら、理不尽な目にあったみたいな不満がくすぶります。
みすゞの最終的な思いと意思は、遺稿のはず。
だから、遺稿を写真製版した全集を出版して欲しいのです。
遺稿をスキャンしたデータはすでにあって、金子みすゞ記念館の検索室では公開しているのですから。
だって、JULA出版の全集ほんとに酷いので、みすゞの書いたままを知りたいのです。
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