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「自分探し?」そもそも自己は多面的である
「自分探し」という言葉をよく耳にしますが、実際に「本当の自分」とは何なのでしょうか。
多くの人が自分らしさを求めて試行錯誤しますが、私は「本当の自分」を探すのではなく、新しい自分を見つけることがより現実的で、自己理解を深めるためには有益だと考えています。
自己は多面的である
自己は一つのものではなく、多面的な存在です(多重人格という意味ではありません)。
私自身を振り返ると、「父としての自分」「夫としての自分」「息子としての自分」「カウンセラーとしての自分」「ビデオグラファーとしての自分」「友人の前での自分」など、さまざまな側面を持っています。これらの異なる側面は、状況や相手によって変化し、それぞれの役割に適応するために柔軟に対応しています。
「本当の自分」とは何か?
「本当の自分を探す」と言うと、まるで一つの決まった根幹となる自己が存在し、それを見つけなければならないかのように感じます。しかし、自己は固定されたものではなく、状況によって変化し、新しい経験を通じて形成されていくものです。
例えば、ある人が「自分は内向的な性格だ」と思っていたとしても、新しい環境で社交的な役割を与えられたとき、意外にも社交的に振る舞う自分に気づくことがあるかもしれません。このように、新しい自分を発見することで、自己の可能性は広がります。
そのため、「自分探し」とは、新しい自分を見つけることだと思います。今の自分にとって、生き生きとしていられる新たな自己と言えるかもしれません。過去の経験や価値観に縛られず、未知の自分を探索することで、新たな視点や価値を見つけることができるのではないでしょうか。
多面的自己とメンタルヘルス
一方で、複数の異なる自己同士の考え方やスタンスにギャップが大きくなると、精神的な負担を感じることがあります。
例えば、「仕事では厳格なリーダーとして振る舞うが、家庭では優しく穏やかな父親でありたい」と思っている場合、仕事のストレスが家庭に影響し、理想とは異なる自分を感じてしまうことがあります。このギャップが大きくなると、自己否定に繋がり、メンタルヘルスに悪影響を与えることがあります。
このような場合、自分の多面的な側面を理解し、それぞれの役割を統合することが大切です。「仕事の自分」と「家庭の自分」はまったく別の存在ではなく、どちらも自分の一部であると認めることで、自己矛盾を感じにくくなります。
まとめ
「自分探し」は、決して一つの「本当の自分」を探すことではありません。むしろ、新しい自分を発見し、自己の多様性を受け入れることが重要です。自己は多面的であり、それぞれの側面を理解し、受け入れることで、より充実した日々を送ることができるのではないでしょうか。
私たちは、「父や母としての自分」「誰かの子どもとしての自分」「友人としての自分」「仕事人としての自分」など、さまざまな顔を持ちながら生きています。それらの自己を統合し、バランスを取ることで、より柔軟に生きることができるはずです。
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臨床心理士・公認心理師をしながら、ビデオグラファーとしてインタビューを軸としたドキュメンタリー映像を制作をしています。WEBサイトにて、これまでの作品集を掲載しています。是非、ご覧ください。
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