愛するということ
「最近、乾燥しちゃって。でも私、まめじゃないじゃん。だからさ、他人に見せるのが恥ずかしい手になっちゃった」
小さく苦笑いをしながらそういう。そんな君の指先をちらりと見た。
そんな風に思ったことはなかった。日々変わりゆく君の手を、毎日見ているつもりだ。
お香に火を点ける君の指先、お気に入りのふきんで手を拭く君の手、目を覚ますと目の前にある、君の指先。
指先に触れようか迷った瞬間、お香の灰が受け皿にぽとりと落ちた。
君のその手で淹れた、この紅茶が好きだ。
これ、うまいな。俺がそういうだけで、はにかんだ笑顔を見せる君が愛おしい。古いとか老けたとか、そんなことはどうだっていい。ただ君が存在していることが愛おしい。