タピオカ粉のドーナツ
漠然とした不安を感じ、仕事が手につかない。胸のあたりで実態を持った不安がダンスまではしていないが、その前段のストレッチをしているような、その伸ばした手足がたまに私に触るような心地がする。
仕事の納期が切羽詰まっていればその不安はあまり現れない。切羽詰まりたくないから、ゆったり過ごす時間を取りたいから頑張って前倒しで仕事を片付けたのに。逆に1日にやるべき仕事量が少ないと、その空白に不安が流れ込んでゆったりもできず、その少ない仕事すらできずに1日が終わることがある。
理由なくそういう日もあるだろうと理解している一方、納得はいかない。外に出かけてみたり、本を読んでみたりするが私の中にある不安はただ仲良く行動を共にするのみだ。結局畳まれた布団を枕にして、ごろんと寝転んでスマホで動画を観るに落ち着く。YouTubeをリロードしても同じ動画が出てくるだけで観たいものは特にない。
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だらりと時間を過ごしていると、意識が冷蔵庫の一画に飛んでいた。
わらび餅のレシピのご依頼を受けて購入したタピオカ粉。基本的にあまり変わり種の食材を使わない私はがっつり持て余していた。冷蔵庫の整理用に導入している無印のポリエチレンケースにシンデレラフィットするそれは今、明治のチョコやバターの座布団代わりに使われていたはずだ。
脈絡なくガバっと起き上がり、そのタピオカ粉でポンデリングを作り始める。レシピはこちらを参考にさせていただいた。アイシングまではできないけれど。アイシングしたいな。
タピオカ粉、薄力粉、砂糖、塩、ベーキングパウダー、はちみつ、牛乳、水、サラダ油をなめらかになるまで混ぜ合わせる。電動のホイッパーなどは持ち合わせておらず、手動の泡立て器を使う。ボウルの底に固くはりついたタピオカ粉をその安物の泡立て器をひしゃげさせながら剥がし混ぜる。泡立て器は隙間が広いところと狭いところがある歪な形状になってしまった。
鍋に移して、焦げないように弱火で加熱すると、だんだん一体化していく。大きなひとつになった生地をボウルに戻し、溶き卵を2回にわけて加え、練り込んでいく。参考サイトの写真のようななめらかさはない。粉の集合体であることを強く感じさせるマーブル模様の生地ができた。
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太い人の無益なエッセイ・日記
日常を過ごす太い人のゆるい日記、エッセイ集。がんばりすぎな人の緊張の糸を弛ませる無益な短文。
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