六花亭のマルセイバターサンド
私はもともと出不精だが、最近はさらに拍車がかかっている。仕事以外はほとんど引きこもり状態だ。
それでも、たまに私を引っ張り出してくれる友人が数人いる。
友人はこの私を引っ張り出せるくらいだから結構アクティブだ。コロナの波の合間を縫って旅行に出かけては、お土産話とお土産をくれる。
お土産はたいてい美味しいお菓子。その土地でしか買えないものを、わざわざ私のために買ってきてくれたと思うと嬉しい。
ただ、どこにも出かけない私はお返しできるものが何もない。
友人はきっと旅行の楽しみの一環として、見返りなんて求めずに、お土産をくれるんだと思う。
でも、私は誕生日プレゼントの金額もおおよそ相手と揃えたいタイプだ。頭の中で天秤を想像して、相手の皿にだけお土産が乗って傾いていることが、借りを作っている気がして落ち着かない。
何か返せるものは無いか模索しているなかで、ついにこの前、返せるものに出会った。
その出会いは、スーパーに行った時のこと。食品売り場手前の通路に、特設コーナーが設けられていた。
何気なく覗き込むと北海道、東京、博多、沖縄などの観光地でしか普段見ることのないお土産たちが、ちょっと居心地悪そうに並んでいたのだ。
きっと旅行客が大幅に減ったことでお土産たちの消費が少なくなり、消費を増やすための苦肉の策として、各地のスーパーでも買えるようにしているのだろう。最近はコンビニなどでも目にするようになった。
それを見て単純に「お土産返しできるじゃん」と思った。私がお土産を買いに行かなくても、お土産が私のところに来てくれたのだ。
旅行好きの人から見れば、お土産だけ手に入れるのはナンセンスなことかもしれないが、私にはただただありがたい。
特設コーナーの中で、今まで自分がもらったときに嬉しかったベスト3に入る、マルセイバターサンドを選び渡すことにした。因みに、北海道に行ったことは一度もない。
クッキーがサクサクで、甘くて、中にちょっと苦いラムレーズンの味を想像したら、食べたくなってついでに自分用も買ってしまった。
北海道まで行かなくても簡単に手に入ることで、旅行先でお土産を買うことの価値は下がってしまうようにも感じる。
だが私は、傾いた天秤を平行に戻すことができたし、その美味しさは引きこもり生活の私に少しの幸せをくれた。
またスーパーに行ったら、次は東京バナナにしようか。沖縄の紅芋タルトもいいな。
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