会えなくても、手紙を書くことで相手を近くに感じられる
のっそりと訪れた9月。
カレンダーをめくらなくても携帯が勝手にページを進めてくれるもんだから、しれっと月日が経っている。
毎朝携帯に起こされるし、スケジュール管理も全て携帯。時間を進めてくれるデジタル機器に、肝心の自分は置いて行かれていると思うことすらある。
言葉だってこうやってnoteに書けば、たくさんの人の目に触れる機会を得られるし、SNSを通じて簡単に、相手に言葉を届けられる。
インターネット、AIの発展。その恩恵はしっかりと受けているんだけど。
ネット上にありすぎる情報に振り回されて疲弊したことも、一度や二度ではない。
SNSで見かけた「特定できない誰か」の投げかけた残念な言葉たちに、あぁこんなにも言葉の価値は下がってしまったのかと、がっかりする。
インターネットやAIでコントロールできない私たちの心は、そうした言葉たちとの距離のとり方が、たまに分からなくなってしまう。
そんな思いを払拭したい気持ちもあって、久しぶりにハガキを前にボールペンを握る。
そう。どこにいる誰とでもSNSを通じて一瞬で言葉を交わせるこの時代に、私は手紙を書こうとしている。
想いを形にすること
手紙を書こうと思ったのにはあるきっかけがあった。
先日、友人から荷物が届いた。それは、私の送った結婚祝いのお返しだった。結婚して家が離れてしまった彼女に、コロナ禍で直接お祝いを渡すことができず、お互いに荷物を送り合う形になったのだ。
届いた荷物の箱を開けると、きらきらとしたゼリーたちがお行儀よく並んでいて、そこに1枚のハガキが入っていた。
ハガキには「私たち、結婚しました。」の文字。
そして、彼女と旦那さんが微笑みあっている姿が写っていた。「今度会ったときに見せてね」とお願いしていたウェディングフォトだ。
裏を見ると、ボールペンで書かれた丸っこい文字が並んでいて、私に向けた言葉を形作っていた。思わず話しかけたくなるような文字たち。
思えば彼女は、私の節目にいつもプレゼントと一緒にメッセージカードを添えてくれていた。だから、その文字には見覚えがあって、見ただけで懐かしい気持ちになる。
お祝い返しの中に、このハガキを仕込んでいる姿を想像して、なんだか彼女らしいなと思った。そして直接会えなくても、こうして想いが形になって届くことで彼女との距離を近くに感じられた。
そんな素敵な手紙をくれた彼女に、私も手紙を書いてみたくなったのだ。
普段何もない時に改まって手紙を渡すのは、ちょっと勇気がいる。そういえばもうすぐ彼女の誕生日だ。いい口実を見つけて、私も想いを形に残してみることにする。
メッセージカードを選ぶ
SNSで言葉を贈るとき、そこにあるのは携帯画面だけ。でもいざ手紙を書こうとすると、便箋、メッセージカード、ポストカード、さらに言えば鉛筆、ペン、マジックペン。いろんな道具の中から、使う物を選ぶ必要があることに改めて気がつく。
私は可愛いデザインのメッセージカードやポストカードが好きで、お店の文具コーナーには目がない。
今回、彼女に送るメッセージカードを選ぶついでに、私のお気に入りをいくつか紹介したい。
1、ミュージアムショップで出会ったポストカード
美術館に行った帰り際に、多くの人が立ち寄るミュージアムショップ。
名画が印刷されたポストカードは小さな額縁に入れて部屋に飾るだけで部屋がちょっとオシャレになるから、手紙として送っても喜ばれそうだ。
ダリ展で買ったポストカードは本の栞として使っている。本を開くたびにダリに会えるから、気に入っている。
私がよく行く美術館はインターネットでもグッズが買えるようになっていたので、ここに貼っておく。
2、旅行先で出会ったメッセージカード
何年か前にグアムで買ったクリスマスカード。海辺に雪だるまのイラストは、年中暖かいグアムならではだ。
その土地でしか買えないイラストの載ったメッセージカードは、手にとっただけで旅の思い出が蘇る。
そういえば、私が前に滞在していたフィリピンでは、9月あたりからクリスマスシーズンだった。誰もが浮かれてしまうクリスマスを口実に、遠方の友人に手紙を送るのもいいかもしれない。
3、手作りの手紙
今回色々と手にとったが、1枚だけ紛れ込んでいた白紙のハガキが目に止まった。
この際思いっきりアナログで誕生日をお祝いするのもいいかもしれない。そう思って、ネットで検索した筆記体を真似てHappy Burthdayと書いてみる。
世界にたった1枚のポストカードに、彼女への想いを綴っていこう。
ただ、他の人に見られるのが恥ずかしいくらいの熱量になりそうだから、封筒に入れようかな(笑)
ルーズリーフに手紙を書いた学生時代
そういえば学生時代。今となっては解読不能なギャル文字を駆使して、よく交換ノートや手紙を書いた。勉強用という名目で買ったルーズリーフを折って作った手紙に、筆箱に常備されている蛍光ペンで簡単なイラストを書くのが定番だった。
同級生が当たり前に携帯を持つようになって、そんな機会もなくなったけど、白紙のハガキを彩っていく工程は、昔を思い出してワクワクする。
手紙を書くことが当たり前だったあの時代があるから、私は時代に逆行してペンを手にとったのかもしれない。
形に残したい想いがある
私が書いた手紙は彼女の誕生日に合わせて送るから、届くのはまだ先になるけど、今から彼女の反応が待ち遠しい。
1人の部屋で、携帯やパソコンに溢れた無数の情報を前に息が詰まるとき、誰かと繋がることで心が救われる。
たった1人の「手」が生み出した文字の丸みや、不揃いさに。
相手を想って「紙」に載せた言葉たちに。
温かみを感じることができる「手紙」というツール。
人との繋がりの大切さに気づけた今だからこそ、そんな手紙を使って伝えられる想いがあるのかもしれない。
あなたは、手紙を渡したい相手はいますか?
その相手に、どんな想いを綴りたいですか?