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小川糸好きが語る、小説「食堂かたつむり」について

今回は小川糸さんのデビュー作について語っていきます。
小川糸さんのホームページのあとがきで、この小説の出版に対する思いが綴られています。そちらもぜひ見てみてください。

「食堂かたつむり」

同棲していた恋人に全てを持ち去られた倫子は、そのショックから声が出なくなります。お金も仕事も失い、仕方なく戻った片田舎の実家で小さな食堂を始めます。苦手だった母親との同居や、食堂を営むことで倫子が成長していく様子を描いています。

デビュー作から小川糸さんのポカポカな表現は炸裂していて、小説の中から特に私の好きな表現をご紹介します。

如雨露で水をこぼす様にぽかぽかと秋の日差しが降り注いでいる。
この夕暮れは大自然が力瘤を作って見せているみたいだった。

目を瞑ると暖かい情景が目に浮かびますよね。まるで倫子のことを、大自然が優しく見守ってくれているようです。

倫子のつくった食堂では特定のメニューを設けずに、お客さんの要望やエピソードから料理をつくるんです。その料理がどれもこれも手が混んでいて、優しい味付けで、美味しいんですよ。食べてないけど……。読むだけで味覚が刺激されて、よだれが出てきます。

私は小説を通して小川糸さんの感性に触れると、食べ物や自然への感度が上がるのを感じます。

仕事や生活って毎日繰り返されるものじゃないですか。こなしていくと自然と効率化されて、ただの作業になってしまう。そうすると途端につまらなくなってしまうんですよね。
倫子は、料理を考える手間や時間を惜しまないことで、「ただの作業」ではなくて、「特別な工程」にしてしまうんです。

毎日当たり前に食べていたご飯も、「あぁ、食べるって本来こんなにも幸せなんだ」と感じることができます。この小説でぜひ「生活の感度を上げる」を実感してみてくださいね。


以前小川糸さんについて紹介した記事たち


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