精神科入院中のご褒美「三ツ矢ヲレンジ」
精神科に7度の入院経験があるのだが、
急性期病棟にはアサヒの自動販売機がある。
前書きをしないといけないのが、精神科入院でよくあるタイプが、病棟にカギがかかっている「閉鎖病棟」というやつだ。
看護師さんなどのスタッフに、許可を得てカギを開けてもらい、出入りがようやくできる。
その許可を得ること自体、病状によっては許可が出ない。
「院内単独不可」というやつで、医師により患者は制限を受ける。
その場合、看護師さんと一緒になら売店や散歩に行くことができる。
とはいっても、長くて30分程度、看護師さんが忙しい時は予約をとっていてもキャンセルになりがちである。
するとずっと、カギのかかった空間にいることになる。
気が滅入る。
新しい空気を吸いたい。
どうしても流れを変えたい。
そんな時、ホールにある自動販売機を眺める。
どうしよっかなー。
買おうかなぁ。やめとこうかなぁ。
時間はいくらでもあるので、ひたすら悩む。
悩むわけは2種類ある。
ひとつは、自動販売機の中から、どの飲み物を選ぼうか、悩み中。
コーヒーにしようか、ジュースにしようか、炭酸入りにするか、どうしよう。
もうひとつは、お金との相談。
お金もプリペイドカード式で、現金の入った財布は原則禁止されている。
つまり、家族など外部の人がお金を入れてくれない限り、使えば減る一方の仕組み。
「ご利用は計画的に」というやつだ。
そうしょっちゅうは、自動販売機で買えない。
なにしろ定価なので、スーパーでの値段を知っている者には高価に見える。
だから、悩みまくる。
今日は買うか、やめとこうか。
買いたいものは、決めてある。
新しく入った、オレンジ色の「ヲレンジ」。
なんじゃこれ、復刻版って書いてあるぞ。
絶対飲もう。
今日こそ飲む。15時に、おやつ代わりに。
だって、作業療法も参加したし、午後一番で入浴、その後のジュースって最高じゃん?
今日飲んだら今週は我慢するから、ね?、今日飲もう?
自分との闘い。
よっしゃ、わかった。今日の15時、飲もう。
こうやって1日、1週間を、着実にこなしていくのが精神科入院中あるある。
楽しみができた、やったぁー!
入浴も済ませて、ようやく15時。
「ICカード貸してください」
そうやって預けてあるプリペイドカードをナースステーションにもらいに行く。
自動販売機までそのまま行く。
ピッ
ピッ
ガタン。
冷た〜い。
はやる気持ちを抑えて、
「カードありがとうございました」
とナースステーションに返しに行く。
冷静を装って、ホールのいつもの定位置に座る。
ククク、プシュッ。
冷たさといい音を感じ取る。
わくわく。
グビッ。
炭酸強〜い! あ、オレンジの味する〜
誰にも言っていないけど、そうやって顔に書いてあるのがバレバレだと、自分でも思う。
病院の食事は栄養バランス最高、逆に言えば贅沢は稀。
「ヲレンジ」が毒とは言わないけど、超贅沢!
買ってよかった〜
次の家族と面会の時。
「炭酸のヲレンジ、飲んだ」と報告すると、
「なにそれ!」
へへーん。自慢できちゃった笑
近所にはなかなかアサヒの自動販売機がない分、入院中の方が最先端を走れる。
買ってよかった。
飲んでよかった。
もしかしたら普通くらいの炭酸具合なのかもしれないけど、
私には強烈に感じたなぁ。
入院したい、とか、そういうわけじゃなくて、急性期病棟にいけば「ヲレンジ」が買えるかも。という期待がどこかにある。
たぶんこれは、流れる時間がゆっくりで、些細なことも大事にとらえている心境からの錯覚だろう。
だから、炭酸もオレンジの味も強く感じた。
きっと今入院している人たちも、アサヒの自動販売機とにらめっこして、炭酸の爽快感に癒されているんだろうなあ、と想像している。
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