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エヴァンゲリオン庵野監督のドキュメンタリーで救われた、CPOの苦悩と共通点

「Amazon prime のシンエヴァ観た」という友人のメッセンジャーで昨日の夜からQ~シンエヴァ~庵野監督ドキュメンタリーを観た。

私の「起業、サービスのピボット、サービスの成長、チーム作り、新規プロダクト起案/市場調査/体験設計/サービス開発、事業+チーム作りの全てを担うポジションの苦悩」と共通する点があり、日曜日の朝から感涙した。
同時にエヴァンゲリオンを作られたチームと庵野さんを心からリスペクトした。その雑記

エヴァンゲリオン作品について

エヴァンゲリオンはテレビアニメ・映画(劇場版)がある。(物凄く、雑に)

興行収入
序:20億円
破:40億円
Q:52.6億円
シン:102.3億円

新型コロナ・緊急事態宣言による延長を2回経て、異例の月曜日公開となった。公開から59日間の興行収入は82億8000万円以上、観客動員数は542万3475人となり、前作の『Q』や『シン・ゴジラ』の興行収入を超え、庵野秀明総監督作品として最高記録を更新した[9][10]。
その後、公開から127日間で興行収入は100億円の大台を突破し、観客動員数も655万人を超えた[11]。多くの劇場で終映を迎えた同年7月21日時点(公開136日間)の興行収入は102.2億円[12]。

ソース:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B1%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%B2%E3%83%B3%E6%96%B0%E5%8A%87%E5%A0%B4%E7%89%88

「102.3億円」という興行収入は、日本歴代35位
ディズニー、ジブリなどと並ぶ作品である

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ソース:http://www.kogyotsushin.com/archives/alltime/

作品の感想や共感に入る前に、「なぜ共感したのか」整理するために会社の成り立ちについて自分の整理を兼ねて書いておきたい。

1 前提

私は元々ソフトウェアのデザイナー/エンジニアだ。
起業後、新規事業・プロダクトビジョンの作成からグロース・関わる組織作りまで全般を担当してきた。元々は私がCEOで「プロダクト中心の会社にしたい」という中で役割を担ってきた。
「鈴木は人数規模の多い組織を見た経験があり、私もプロダクトに集中したい」ということでCEOを鈴木に譲り、"CPO(Chief Product Officer)" を名乗ることにした。2017年頃の話なので、まだ今ほど普及してなかった(2021年現在でもそれほどでもないが)と思う。

-1 "CPO" へのこだわり

普通の会社(定義が曖昧だが)ならCEOから「COO」となりそうなところ、私ならではのこだわりがあった。「プロダクトの会社にする」ことは、ご利用いただく全ての方に愛してもらえるような「プロダクトを作る」会社であること
その中で私の役割にハマる言葉/ポジションの定義が「オペレーション」ではなかった。当たり前だが手段としてオペレーションも大切だし、プロダクトの "一部" ではある。ただ、会社/事業フェーズ/個人の役割としてハマらなかったので "CPO" と名乗ることにした。"CPO" としての具体的な役割ややったことについてはまた別のnoteで書くことにする。

-2 CPOとはなにか

最近はポジションの定義を言語化する・広める動きが始まっている。「日本CPO協会」がそのあたりの普及活動を行なっている。下記のnoteの記事が素晴らしかったので詳細はこちらを見ていただいた方が良い。

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2 庵野監督とCPOの共通点

上記のCPOの図に合わせて作品やドキュメンタリーの発言の中で少し紐づけてみる。
クリエイター出身の人が監督や経営者になると「カバー範囲が物凄く広いこと/広くなってしまいがち」で、支えるチームが必要なのだと理解できる。

-1 ① 顧客の声

→ 上記に紐づくが、庵野監督はお客さんや社内の声をしっかり聞いている方だ。お金を支払っていただく以上、「良いものを作りたい」「理解されない/伝わらないと意味がない」と述べている。
・マーケットの思考
→ 「ドキュメンタリーを受けたのは商売」といっている。
また「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなっている」と話し、既存のエヴァファンだけでなく、背景やストーリーが伝わることで新しい人/見たことがない人でも楽しめるような作品にしたかったのではと思う。(結果、シン・エヴァは100億円越えで過去最高の興行成績)

-2 ②④⑤ ビジョン & 戦略作り・チーム組織づくり・文化づくり

庵野監督は株式会社カラーという製作会社を自身で作っている。

・ビジョナリーであること
・チームや組織にプロダクトが好きな人がいること
・ものづくりにこだわる人が多い文化づくり→他よりもいい意味でも悪い意味でも自由。だからこそやりがいがあると社員が述べている
→ クリエイター出身監督であり、ものづくりに対しての情熱が物凄い方。ドキュメンタリーを見ると伝わるので詳細は映像を見ていただきたい。笑

-3 ③ 実行

→ 庵野監督は最終的に自分が物足りないと思った場合に自らカメラを持って様々なアングルからの写真を撮ったり、作画したりしていた。「最終的にケツを拭くのは自分だという覚悟とクリエイターとしての意地」からだと思う。

-4 プロダクトマインドセット

・情熱があること
→ シン・エヴァまで8年を費やしており、異常なこだわりがある。
・自分に正直でオープン
→ 庵野さんは「鬱っぽくなった」「2度自殺しようとした」と告白している。テレビ版のエヴァンゲリオンが終わり、その後に庵野監督を殺すという内容が掲示板に書かれていたことも。
自分よりもこの作品(エヴァンゲリオン)の最後を作れる人がいるのではないか」と語っていた。
また、ドキュメンタリーの中で「わからないことをわからない」と何度も話ていて「自分に正直でオープンで謙虚である」のが印象的だった。
・謙虚さ
→ 庵野監督は全てにおいて自分が正しいとは思っていない。NHKのディレクターに一部制作に悩んでいたシーンについて「これをどう思うか」と聞き、まだ作品を知らない社内メンバーからの声を吸い上げて大きく変更した。

3 庵野監督の言葉で共感したもの

庵野監督はドキュメンタリーの中で「子供だ」と言われていたが、庵野監督に共感する部分があり「救われた」気もした。共感したことと思ったことを整理しておく。

-1 良い作品(プロダクト)を作りたい

→ 全てはお金を支払って見ていただくお客様のため。
ソフトウェアもお金をいただくお客様のため。私は「良いプロダクト」を作りたい。良いプロダクトの結果、事業があり、会社がある。
「プロダクトで世の中を変えること、何かを感じてもらうこと、便利な世の中にすること、非効率を連続的に解決し(弊社のミッション)時間をふやすこと(弊社のビジョン)」に人生を賭けている。
ものづくりがなければ自分の存在意義はないと思う。

-2 普通じゃ面白くない

→ 人と同じことをする場合それがすでに理解されたものであれば、同じようにいいなと思ってもらえる可能性は高い。
しかし、それだけだと模倣の域を超えないし「この作品・プロダクトでなければならない理由」がない。「何度も楽しめる作品、未来も使えるプロダクト」にはならない。
ただ、機能(シーン)単位であれば一周して普通に着地することもある。(ドキュメンタリーの中では「1周して普通に着地すること」を現場のメンバーも理解している)
作る・考える時点で見えてない模索を繰り返す中で事業・企業・ドメインへの解像度が高まって見えることがある。プロダクトを0から作った人にしか見えない世界がある。同じドメインでも全く同じプロダクトはない。設計思想が異なるからだ。
「思想なきプロダクトに、いいプロダクトはない
「思想なき人に、いいプロダクトは作れない」
と思う。
これは会社をプロダクトと見立てた場合も同じだ。

-3 ルーティンをやってて新しいものが生まれる可能性は低い

→ 私も定期的に旅行ややったことがないこと(最近はエグゼクティブコーチング、パーソナルトレーニング、SUP)にチャレンジしている。仕事においてもマーケ、CS、プロダクトを管轄しており、さらに新規サービスのリリースを予定している。チャレンジすると新しい世界や景色が見えて、最終的に「これとこれが繋がっているんだ」となることが多い。
人生に多くの点を作り、経験と共に線に繋がる。最初から線を見据えて点を打つ人は少ないだろう。また、点を多く残さなければ線が広がっていくことはない。ルーティンは「どんどん仕組みを作って手放し」、新しいことにチャレンジしていくことが大事だと思う。「また新しいことを始めたのか」そう思われてもいいし、そういう自分を認めていくことで新しいコト/価値を自信を持って生み出せるのではないだろうか。

-4 謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなっている
=ビジョンとプロセスへの共感

→ どの領域でも「何をやって行きたいのか」未来/ビジョンがあり、それに共感するからこそ、そのプロセスも一緒に楽しめる。
何がどうなるかわからない、理解できないものへの共感を示すことは難しいし、共感できる人はかなり減ってしまう。
これだけ情報やものに溢れた世界になったからこそ、
ビジョンを掲げていく覚悟、それに向き合う勇気、命を削ってでも実現しようとする気概、それらを説教くさくなく伝える努力」が経営者には必要になっていると思う。

-5 ここで無理したら体が壊れるとか心が壊れるとかは一旦無視。面白いものを作るのが最優先

→ 「お金をいただいてお客様に楽しんでもらう、ご利用いただく、価値を感じていただく」のはそういうこと。些細なことでもプロであること。全員に求めることではないが、少なくとも自分自身に対してはそう考えている。
起業から4年経ったが、いまだに土日もなんらかプロダクトを作るし、プロダクト/事業/会社のことを考えている。
プロダクト・作品に対して情熱がなくなったら終わりだし、何かやっていてもプロダクトや事業に繋げてしまう。
細かいことが脳から離れなくて辛いこともあるが、その苦悩を含めて「ものづくりは楽しい」のだと思う。

庵野監督と比較すると小さいが、私も Offers をリリースする前に「見た目健康ぽいのにどうしても起きられない」ことがあった。「良いサービスとは何か、マーケットはどうか、自分の人生かけて作りたいものは何か、CEOとは何か、起業したのに世の中に何も価値を生んでない」毎日悩んだが、答えはなかった。毎日お酒を飲まないと寝られず不眠症になったこともあった。
自分自身の原体験からこれだ!」と決めて作り始めたOffers。Offersの方向性が決まり、開発が進むと悩んでもいられない。なので、どんどん集中して落ち着いた。2021年でプロダクトリリースして2年経過、約300社ほどの企業・ユーザーの皆様にご利用いただいている。本当にありがたいし、もっと頑張らないといけないなと改めて思う。

-6 もうこれで決まったからここまでっていうふうにしたくない

→ これも非常に共感した。ビジネスには期限があってそこまでにアウトプットを出さないといけない。しかし、人の目に触れる時にどこまで細部にこだわれるか。
本当に使いやすい/見やすい/面白いものになっているか、誰もが説明なしにわかる・動けるか、そのためにあらゆる角度から物事を見たか。
誰かに意見をもらったか、自分の思い込みだけで進めていないか、何を元に使いやすいとしているか。
期限がある中で、「自分の時間がないから・今できることをやっている」と言い訳してないか。それでアウトプットの質を下げていないか。プロダクトのクオリティをあげるため、最後の最後までこだわりたい。

-7 エヴァ作品スタッフの言葉「最初から言ってよ」は難しい

→ 戦略を描き、プロダクトロードマップを具体的にまとめていてもメンバーに、このような思いをさせることはゼロではないと思う。
上記した通り、未来を読んでいても状況は変わる。ごめんなさいとしか言えないが、最初から全ての未来がクリアに見えている人はいないと思う。
大事なことは「ある領域/ドメインに対して当事者のビジョンがある」か。

4 おわり

朝から良い作品をみて本当にやる気が出た。

エヴァンゲリオンは「庵野さんの成長とそれを共にした監督やクリエイターの成長や共創の物語でもある」のだと思う。「企業は経営者の器以上に大きくならない。」と言われるが、作品は「監督の器」だなと。
これだけの人に愛される作品になったエヴァンゲリオン、作品に関わった皆様お疲れ様でした。ありがとう。

まだ見たことがない方はぜひ見ていただきたい。




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