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水滴のすべて

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一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英は趣味で小説を書いており、これまで短編集と中編集を1冊ずつ書きました。いずれも本noteに掲載しています(短編集はリアル単行本…
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#こころの湖

水滴のすべて chapter one

1.ひかる 昨夜がんばって設営したこのテントの床というか、いやテントの場合、床じゃないなあ、なんていうんだろ、こんな時ヒカリがいてくれたらすぐに答えてくれるんだけど、僕のボキャブラリーの貧困さといったら、ここフジロックの苗場でも笑うしかないよ。 2回目のフジロックも僕は旅館には泊まらずテントを選んだ。昨日僕を車で運んでくれたあの人たちのテントがどこにあるのか、もはや僕にはわからない。やっぱりヒカリとくればよかったかなあ。けど、僕の中のゴーストが、今回もひとりで行けって囁く

水滴のすべて chapter two

7.反射する衛星 祖母のアキラが住んでいたのは本当にひかるやヒカリが住む京都の白川通の、浄土寺あたりだった。近くに真如堂という地味な寺があり、 白川通りから真如堂に上がる坂の途中に、その古い古い2階建ての民家があった。 ひかるは一度自分の部屋に荷物を置きに帰ることができるほど、アキラはほんとうに近所に住んでいた。 ヒカリもひかるの近所のワンルームに住んでいたから、祖母のアキラとは歩いていける距離に我々は住んでいたのだった。 荷物を置きに自分の部屋に一度帰ったヒカリは、