はしゃぎ過ぎた炎節
年に一度だけ、泊りがけで芝居を見に行く
たいていはミュージカルか歌舞伎で
その年は炎節に公演されるエリザベートを選んだ
最高のおしゃれをしたくて
綿麻の着物に博多織の帯を締めて出かけ
見せびらかしたい気持ちもあって
早めに劇場に到着して開演時間まで街の散策を楽しんだ
この日は特に暑かった
劇場内はエアコンが効いているのに異様に身体が熱い
おまけに、集中できなくてセリフがちっとも耳に入って来ない
まさか熱中症…?
そのうち椅子に座っていられないほどめまいがひどくなり
観念して席を立った
通路に出たとたんに緊張の糸が切れてソファに倒れ込むと
傍目も気にせず帯をゆるめてミネラルウォーターをがぶがぶと飲み
まだ歩けるうちに泣く泣く劇場を出た
芝居の内容はほとんど覚えていない
幕が上がる前からぜんぜん無理な状態だったんだな
それでも、最初に思い出すのは残念な気持ちじゃなく
幕が上がる直前までの高揚感
早くまた行きたい
次はもう少しだけ慎重に