昧爽の贈りもの
同じ日に仕事を休むのが難しい彼と、
ようやく取れたふたりの休日。
年にいちにどしかない、
一泊二日の二人きりの貴重な時間。
星に手が届きそうだと言われている
山あいの村へ出かけて宿をとった。
念願だった。
当日はあいにくの雪で、
空には厚い雲がかかっていたけれど、
私たちは幸せだった。
「雲が晴れるといいね」
そんな会話を楽しみながら
0時を回ったころ、あきらめて眠った。
昧爽に突然目が覚めた。
眠りが浅い私にはよくあることだが、
何かしらの予兆のような気がして落ち着かないから
起き上がって何とはなしに外に出ると、
圧倒されそうな星空が広がっていた。
「起きて、ねえ起きて、早く起きて」
大いびきをかいて眠っている彼を起こしに
急いで部屋にもどった。
寝ぼけ顔で外に出た彼がぽかんと口を開けていると、
それから5分と経たず、
雲が流れてきてふたたび星空をふさいだ。
私たちは唖然として、笑って、また眠った。