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旅は埋もれた恋草に日を当てる
2月に初めて北海道へ旅をした。
北海道は長年のあこがれの地で、
仕事の旅だったけれどワクワクした。
仕事の空き時間は長くはない。
足を伸ばせる場所は宿の近くに限られている。
せめて一箇所ぐらいは念願の観光地に行けないかしらと
出発の直前までガイド本を毎日めくった。
旅に出るひと月ほど前に短い恋が終わった。
相手は仕事仲間で家庭があった。
無邪気な少年のように私に恋をした彼は
ほどなく涙顔で別れを告げた。
その彼もまた旅の同行者。
まだ消化できていない感情がもやもやと騒ぐ。
日常からしばし離れる「旅」は
刈り取ったはずの恋心に水を与えてしまう。
バス停で待ち合わせて一緒に空港に向かった。
雪まつりが終わった北海道に向かう機内は空いていて
窓際に隣り合わせの席が取れた。
まるでなにごともなかったかのように
私たちは自然に会話を楽しんだ。
そして飛行機が着陸するころには
お互いの中に北の大地を覆い尽くすほどの恋草が
茂っているのを感じた。