『星を詠む人 ~梅雨の蟹の日~ (蟹座)6/22-7/22)』
こんな季節はなんだか憂鬱になる。
通勤中なんかは特にそう思うのだ。
シトシト雨降り、じとじとジメジメ・・・・
こうも簡単に人は環境で心が揺れ動くから不思議だ。
きっと今日が、空の果てまで見えるほどの青空だったのなら、
きっと私はそうは思うまい。
まったく梅雨ってやつは、なんて野郎だ。
だからと言って私はそんな事を口には出さない。
もし平気で口に出せるのなら、随分と生きるのが楽になるのは分かっているのだけど・・・
赤く分厚い蟹の甲羅のようなそれは、感情までも包み隠してしまうのだ。
人が殻に籠るのは生きる上で大切な事。
でもいつからかその殻を脱ぐ事が難しくなる。
分厚い殻で自分の身を守りながら、
目をぎゅっと突き出して辺りを注意深く眺める。
私だってそうだ。
でも其奴が私と違うのは、時折その両方の大きなハサミで自分の身を守るという事。
チョキチョキ・・・チョキチョキ・・・
自分自身を、自分が大切に想う人を、自慢のハサミと、その内側に隠された、普段は見せない激しい感情で。
なんともやるではないか、蟹さんは。
ふむふむ。今夜は星は見えそうにもないな。
私は分厚い空の向こうにある星を眺めてそう想う。
だけども私は星を詠む。
星を詠んで人を想うのだ。
【星を詠む人】
読み手:深文
脚本・演出;tanakan
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